ohashiy060123

 

大橋友梨   「食育の必要性―栃木県の食育活動を事例に―」

 

 

私達が生きていく上で重要な「食」。この食というものを改めて考える機会というのはなかなか無いのではないか。何でも有り、どこにでも行けるようになった事でライフスタイルが多様化してきている現代は、確かに快適なものとなっている。しかし、その裏に存在するのがストレス社会や乱れた生活リズム。今は子供でさえストレスを感じていると言われている。このストレス大国日本で私達が今見直すべきものこそ、毎日自分のからだと深く関わっている「食」ではないだろうか。そしてこの食というものを個人で見直すだけでなく、地域全体で食について学び、感じることで食生活だけではなく、地域とのつながりも深めからだと心の充実を図り、発展させていくべきなのではないか。そこで私が注目したのが近年広がりつつある「食育」という取り組みである。今回はこの食育について地域との関わりにも注目しながら述べたいと思う。

 

 まず、食育とは何か。これは私達の健康の基本となる、食生活に関する様々な教育を行い、食べる物を選ぶ力、食べ方、調理法、味覚形成、食べ物の生育に関する知識や豊かな食生活の楽しみを覚えるなどの力をつけることを目指しているものと定義されている取り組みである。だが昔から様々な地域で取り組みは行われてきたが食育は今まで確立されたものではなく、全国的に広く認識されていなかった。しかし、2005年6月10日「食育基本法」が制定されたことで各地の取り組みが活発化し、地域だけではなく企業等でも食育について積極的な取り組みを行うようになるなど発展してきている。この食育基本法は、食育に関する施策の総合的かつ計画的な推進を目的とする法律であり、食育に関する基本理念を定め、国や地方公共団体に食育推進施策を義務付ける内容などを定めるために作られた。このような法律が制定される背景にはやはり国民の食生活の変化による問題の増加が顕著になったことがあるのではないかと考える。

 

 それでは、現代の食生活がどのように変化し、それが日常生活においてどう影響を及ぼし始めているのか。

 

 まずは食糧消費構造の変化が挙げられる。日本での食糧消費は経済成長に伴う所得の向上と共に、量的に拡大しているが、主食である米の消費量は減少する一方で畜産物、油脂等の消費が増加する変化がみられている。また、日本は65歳以上の高齢者世帯や独身者などの単独世帯が増加している。この単独世帯や女性雇用者の増加などの変化の中で、食に関して簡便化志向の高まりや外食志向が進展しているのだ。この食糧消費構造の変化によって栄養バランスの崩れが指摘されているのだ。

 

 次は食習慣の乱れである。現代では朝食を抜く人々が増加している。仕事をしている社会人だけではなく、子供についてもこの傾向がみられている。これは多忙な現代社会から作り出された食習慣、または女性などに多いダイエットからの欠食、放課後の塾通いやテレビの深夜番組などの影響により夜遅くまで起きているようになった子供の生活習慣が原因であると思われる。この乱れはその他の1回の食事に対する摂取量を増加させ、肥満等の生活習慣病の発症を助長させるだけでなく、エネルギー供給の欠如により体調を崩す要因になるという問題点も指摘されている。

 

 そして最後は食に関する人々の関心と知識の不足である。大変豊かであり飽食とも言われている中で、食べ残しや賞味期限切れなどでの食べ物の廃棄が食品産業や家庭で当たり前のように行われている。世界には約8億4千万人にのぼる栄養不足な人々がいる中、日本はかなりの食べ残しなどによる廃棄物を出している。近年BSE問題などによって消費者の食の安全や安心に対する関心は高まりつつあるとはいわれているが、まだ関心どまりであるのが現状ではないかと考える。このように日本人の食生活には問題が溢れているのが現状である。

 

この多くの問題を改善するために農林水産省が中心となり、全国的に様々な食育活動を展開している。主な活動として、厚生労働省と連携し、何をどれだけ食べればよいかを示した「食事バランスガイド」の普及、毎年1月を食を考える月間とし、「ニッポン食育フェア」などの全国各地の食育活動を紹介するイベントの開催、または食育推進ボランティアの方々の草の根的な食育活動を支援するなどの活動が挙げられる。

 

私達が住むここ栃木県でも食育活動が盛んであり、多くの学校や団体が食について学び、そして食育を広めようと取り組んでいる。栃木県南河内町の食生活改善推進団体連絡協議会では、平成9年より『私たちの健康は私たちの手で』をスローガンに、家族、友達、地域住民など身近なところから食生活を中心とした啓蒙活動を行っている。具体的な活動内容は、小学三年生から中学三年生を対象として、栄養など食についての学習や調理実習を行う料理教室「ジュニアクッキング」の開催、また毎年11月に行われる町民祭りで地産地消として、地元の野菜を使い作った料理の試食出品、要請のあった学校や団体への料理教室開催などの学校支援ボランティア、町内や近隣市町村を約1万歩歩きながら、適度な運動による健康なからだづくりをするとともに、かんぴょうむきの作業や朝市の見学、食生活や家庭菜園、料理などの話をし、地域の交流を深める「歩・歩の会」の開催などである。このような地域に根付いた活動を地道に行うことで、地域住民の食に対する関心が高まり、その関心を実践に移行する傾向まで発展してきているようである。

 

今回紹介した活動は栃木県内における一例であるが、他にも大変多くの人々が食育に対して関心を持ち始め、活動している。現在、内閣府を先頭に大変重要視されているこの「食育」は、まだまだ広く認識されていないものではあるが、これからより多くの食育活動が活発化されると思われるので、食への少しの関心からは入り、そこから地域住民とのつながりが生まれ、さらには消費者と生産者の直接的な関係作りが形成されていくことが期待出来ると考える。私自身、さらにこの食育への理解、知識を高めるため、活動への参加や食育に関する資格の取得など積極的に取り組んでいきたいと思う。

 

 食の安全確保、生活習慣の乱れ、地域との連携の必要性が浮き彫りとなっている現代、私達一人一人が自らの食について考える習慣を身につけ、生涯を通じて健全で安心な食生活を実現することが出来るように、全国的な情報提供活動や地域に根付いた実践活動を行う「食育」を推進していくことが重要なのである。特に子供に対する食育が急務であると考える。子供の頃から食べ物が食卓にのぼるまでにどのような過程を経ているのかを理解し、考えるようになることで、食に対しての関心が高まるだけではなく、飽食である毎日の生活が恵まれていることに気づくきっかけにもなるのだと考える。そのようなきっかけのない今、この食育こそが求められていたものであるのではないだろうか。そして、この食育による食生活の改善によって、日本全国が健康なからだと心の充実を得ることが出来る事を期待している。

                                  

 

 

<参照サイト>

食育・食生活指針の情報センター http://www.e-shokuiku.com/index.html

goo辞書【食育】 http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%BF%A9%B0%E9&kind=jn

農林水産省「食育の目的と背景の紹介」http://www.maff.go.jp/syokuiku/kikakubukai.pdf

内閣府 食育推進担当ホームページ http://www8.cao.go.jp/syokuiku/index.html

食と農の広場food&Agriculture『とちぎアグリプラザ』http://www.agriplaza.jp