Kushiday060123

 

櫛田 裕人  「東京都杉並区<すぎなみ環境目的税>とは?」

 

 現在、私達の身の回りのあらゆるところで環境問題が深刻化している。私達の身近なレベルでの環境問題には、やはりゴミ問題があげられるのではないだろうか。そのなかで私が今回興味を持ったのが、スーパー、コンビニ等で買い物客に手渡されるレジ袋である。というのも、私自身が今現在スーパーでアルバイトをしていて、レジ袋を直接人に手渡す立場にあったことがきっかけである。

レジ袋は燃やせば二酸化炭素を排出し、埋め立てても土に還元されないものであり、環境には有害ということができる。日本人は一人当たり年間約300枚のレジ袋を消費し、全体の消費量を原油に換算すると、55.8万KLにもなる。自分の体験からも感じることだが、実際には必要以上のレジ袋が消費されているのは事実である。私のバイト先の場合は、雑貨品は食品とは別の袋に入れたり、温かいものは別に入れたりしなければならないなど、レジ袋の渡し方がマニュアルで決められており、たいした量の買い物ではないのにレジ袋を二枚も三枚も渡さなくてはならないといった状況にしばしば陥り、無駄に使用されている状況が続いているといえる。スーパー、コンビニなど企業だけに問題があるわけではない。皆さんもコンビニで飲み物なりアイスなりを買い、一歩店の外にでたとたんにレジ袋だけ外のゴミ箱に捨ててしまったという経験などないだろうか。買うときに一言断れば無駄なレジ袋の消費を防げたはずである。レジ袋の問題は、企業と消費者のちょっとした気配りがそのまま解決につながる問題であるといえるだろう。

 

そうはいうものの、実際にはスーパー、コンビニ等ではレジ袋が大量に消費されている状況が続いている。そんななか、レジ袋に課税をするという案を打ち出した自治体があらわれた。東京都杉並区である。平成14年に可決された杉並区の「すぎなみ環境目的税条例」は、レジ袋を利用した買い物客が袋一枚につき五円を税として支払うというものである。さて、この「すぎなみ環境目的税」とはいったいどういったものなのか、また、未だに施行はされていないことから、施行にあたっての問題点はどのようなところにあるのか考えていきたいと思う。

 

まず、その中身をおおまかにまとめてみる。

課税の対象  :スーパー、コンビニ等で無料又は有料で配布されるプラスチック製の手提げ袋(レジ袋)。

税額算定の単位:スーパー、コンビニ当で無料又は有料で配布されたレジ袋の枚数。

税率     :レジ袋一枚につき5円

納税者    :レジ袋を受け取る消費者。買い物の際に税を支払う。袋を断れば当然払わなくてよい。

税金の使途  :廃棄物減量、リサイクル推進、屋上緑化、その他環境の保全。

環境に負担をかけるレジ袋を使用する消費者が税金を支払い、環境の保全にあてるというものである。

 

次に、すぎなみ環境目的税のねらいはいったいどんなところにあるのかみていきたい。

「すぎなみ環境目的税のねらいは、環境に負荷を与えるレジ袋の使用を抑制することにより、大量生産、大量消費、大量廃棄型の生活習慣を見直し、資源循環型の環境にやさしいシステム作りと、環境対策の一層の充実を図る」ことにあると杉並区は説明している。単純に税収のみを目的としているのではないということがわかる。

今日、様々な環境問題に対処していくためには、わたしたちの「大量生産、大量消費、大量廃棄型の生活習慣」を根本的に見直さなければならない。杉並区は、すぎなみ環境目的税によって環境への意識を高め、ひとり一人の生活習慣を見直す契機とすることをねらいとしているのである。レジ袋というものは考えてみればそもそも不要なものである。過去にさかのぼれば買い物袋を持参することなど当然だったはずである。利便性の追求が環境に害を与えるということのひとつの象徴といえるレジ袋の消費を抑えることは、私たちの生活習慣を見直すうえで実行に移すことが比較的容易であり、環境について考える機会をもたらす。レジ袋はそういったきっかけづくりの意味で格好の素材ということができるのである。

 

さて、住民の環境への意識の変化を目的としたすぎなみ環境目的税条例だが、施行あたっての問題点も考えられる。

例えば、実施する際のスーパー、コンビニ等事業者への負担が大きいことが挙げられる。条例には、「特別徴収義務者はレジ袋の譲渡枚数、すぎなみ環境目的税額その他規則で定める事項を帳簿に記載しなければならない。」とある。つまり、実際に税を徴収し、それを納入するスーパー、コンビニ等事業者は、当然といえば当然なのだが毎日レジ袋の譲渡枚数を一枚一枚数えて記載しなくてはならないのである。これを実際に行うとなるとかなりの手間がかかり、事業者としてはかなりの負担となる。事務処理の段階での負担を減らすなんらかの対策を打ち出さないことには、事業者側からの支持をえることは用意ではないだろう。また、レジ袋がなくなることによって一般買い物客と万引きの区別がつきにくくなること、税の導入によっての顧客とのトラブルなども想定できる。

区外とのギャップも問題として考えられる。税の対象となるのは当然杉並区内だけであるから、税を導入することによって区外で買い物をしようとする人が増加することが考えられる。多少とはいえ顧客の流出はスーパー、コンビニ等にしてみれば売上の減少につながる。

私が感じたのはやはり上にあげたような施行することを考えた場合の業者側の不安要素の多さだった。この不安要素を取り除くことが施行することを考えた場合の課題といえるだろう。

 

杉並区では条例の施行はとりあえず先送りにし、住民の自主的なレジ袋削減を目指している。マイバッグ持参率の具体的な数値目標を設定し、マイバッグ持参運動や、レジ袋を辞退するとシールがもらえ、25枚集めると100円分の買い物券として利用できるエコシール事業などをおこなっているが、平成17年度のバッグ持参率は35.2%と、目標の47%には届いていない状況である。

現在スーパーやコンビニでレジ袋をもらうことは今の私たちの生活習慣のなかでは当たり前のことである。しかし、そういった生活習慣を改め、環境への意識を変えなければならない状況に私たちがいることも事実である。キャンペーン等でひとり一人の自主的な行動を促すことも確かに重要なのだが、「当たり前」になってしまった習慣を変えるには、やはりこの条例のようなある程度の強制も必要だと思う。環境への意識と大量生産、大量消費、大量廃棄型の生活習慣を変えるきっかけづくりを目標とするならば、私はこの条例の施行を本気で考えるべきではないだろうかと考える。

 

 

参照Webサイト

 

杉並区役所ホームページ http://www.city.suginami.tokyo.jp/

 

EICネット http://www.eic.or.jp/index.html 

 

日本ポリオレンフィルム工業組合 http://www.pof.or.jp/index.html