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廣�P史則　「米政策改革と集落営農」

米政策に関するおおまかな流れと現状。

日本の経済社会が急速な経済成長と、国際化の著しい発展により大きな変化を遂げる中、農業と農村をとりまく環境も大きく変化してきた。需要の減少、生産調整の限界感、担い手の高齢化など多くの問題を抱えている。また米の過剰供給が継続し、在庫の増加、米価の低下などを引き起こしている中、農政改革のもと、農業、漁業、林業と食料の安定供給や食料自給率の向上、国際競争力の向上などを目標に各産業の構造の改革や政策決定の見直しなどが図られ、その一部として生産者や地方の自由な裁量というのも認められてきている。日本農業において中心的役割を果たしている稲作に関してもまた、自由化の傾向が見られる。

かつて日本では1942年に制定された食糧管理法により、米は生産者から国が直接買い上げることにより、国の管理下におかれ、価格は政府によって決められ、米の流通や管理、取り扱いは厳しく制限され、国や県の認定を受けた一部の業者しか保管や流通に関われなかった。しかし、過剰や古米の発生、財政負担による赤字の発生などから、1969年に一定量に限って自由流通を認めるようになり、1995年には食糧法へと移行した。食糧法では食管法と同じように認可を受けた特定の業者への売り渡しという縛りはあったが、国が直接に買い上げない自主流通米が中心となり、農家の自家消費分を除いた、食管法の下では闇米と呼ばれていたものが計画外流通米として公認され、事前に国に販売数量を届ければ、自由な販売が認められるようになった。米の価格も市場により決定され、政府米も自主流通価格を反映させ価格を決定するという方式になった。

また2003年には米政策改革大綱が制定され、それには、政策の意図が明確に農業者に伝わらず、生産調整目標面積の達成が至上命題化し、米の生産と減産の両方に助成を行うなど無駄があり、生産調整の配分理由やその経過が不明確であるとして、政府の米政策の抜本的、総合的見直しがなされ、水田農業、米政策に関わるものの創意と工夫が発揮できるものでなければならないとした。このことを踏まえ、農業経営者が市場を通して需要動向を敏感に感じ取り、売れる米作りを基本として、需要ごとに求められる価格条件を満たしながら、安定的供給が行われる米作りを米作りの本来あるべき姿として、実現を目指すこととなった。

このため需給、生産調整構造について農業者、農業者団体が中心となり行われていくこととなる。今までの生産調整の仕組みは、国がまず全体の減反面積を定め、それを各都道府県に配分し、そして都道府県が市町村に、市町村が各生産者にという一方通行な形で行われてきた。また面積のみを目標配分していたため、作況変動により需給見通しが狂うことが起きてしまっていた。見直し後は完全に生産者側に生産調整を任せるというのではなく、生産調整を面積という形だけでなく、需要に見合った生産量とその生産に必要な面積を配分するという形になる。また前年の需要実績、販売実績を基に需要予測をし、生産者側から生産目標数量を設定していくといった行政への働きかけも可能になった。

また別に助成制度の見直しも図られた。農業者の高齢化、農地面積の減少、農村活力の低下など農政全般に関わる総合的見直しを行うことを目的として2000年に制定された食料・農業・農村基本法を元に、2005年に新たな食糧・農業・農村基本計画が閣議決定され、従来の全国一律の要件、単価が見直され、地域の農業事情に合わせ、地域自らの発想、戦略に基づき実施される取り組みが支援され、地域の特色ある水田農業を推奨するものとなっている。これにより2007年から助成の対象が各品目から担い手となり、同時に担い手の明確化ということも図られた。米の価格の下落による影響に対する保障も都道府県に裁量をもたせ、都道府県の実情に合わせ行うことができるようになった。

しかし、生産調整に関しても、助成制度に関しても、担い手の明確化ということで認定農業者や集落営農組織しか適用はされないということになっている。しかも初めは認定農業者のみにしか適用されないこととなっていて、それによる反対があり営農組織も含まれることとなった。認定農業者制度は元々、市町村が地域の実情に即して効率的、安定的な農業経営の目標などを内容とする基本構想を定め、この目標を目指して農業者が製作した農業経営改善計画を認定する制度で、認定農業者に対して低利融資や農地流動化対策、担い手を支援するための基盤整備事業などが実施されるというもので、認定状況は2005年の9月では192941件で、認定制度が始まった1994年の4月の認定件数の123からの約10年間で約1500倍の認定件数になっている。そのうち稲作中心で認定を受けた件数は64968件で、割合は約34％となっている。認定農業者の数は着実に増えているが、その数には法人も含まれ、全国の農業者数から比べると多いともいえない。

農林水産省の集落営農の定義は、「集落など地縁的にまとまりのある農家が農業生産工程の全部又は一部を共同して行う営農活動、又はそのような営農活動を行う組織の総称。」となっているが、集落営農は地域の実情に応じて形態が変わるのでこれといった決まった形はない。集落で農業用機械を購入し集落営農に参加する農家が共同で利用したり、農地全体をひとつの農場とみなし、集落内の営農を一括管理、運営したり、それぞれの土地で共同で農作業をするなど内容は様々である。その目的としては生産の効率化、コスト削減、農地の保全などが挙げられる。

私の市や集落を例として。

　私の実家は茨城県の県西部、栃木との県境に位置する筑西市にあり、筑西市は水田面積県下一で、基幹作物の米をはじめ、麦、大豆、梨、施設園芸などの様々な農産物による複合経営がおこなわれている。今回の改革で地域や各農家の特色が出せるようになり、同時に売れるもの作りというのが求められるようになった。筑西市と県では競争力のある強い産地作り、買ってもらえる米作り産地の育成ということで、JAと田谷川土地改良区とともに稲作農家への営農指導や情報提供を行い、田谷川土地改良区の米を田谷川米ブランドとして売り出していくことの支援を行っている。まだ特色作りに関しては思索の段階であるという。

集落営農に関して、私の集落は全戸数20戸という小さな集落で、農業機械の共同購入、共同利用や乾燥施設の建設などを行ってきた。19戸が水田を持ち、そのうち13戸が米農家として耕作していて、5戸が専業農家で、残りの8戸が兼業農家という状況である。先にも書いたことだが平成19年より助成の仕組みが変わり、認定を受けた農家や認定を受けた集落営農組織のみが助成を受けられるということになってしまった。この集落内で認定農家として認定を受けたのは私の父のみで、その他の人たちは専業農家であっても認定を受けるのは難しいのが実情のようだ。またどの農家も助成無しでは稲作を続けていくのは無理があるようで、保障の確保ということで集落営農組織として認定許可申請を出すこととなった。保障の確保というほかにも、組織としての体系を明確化することにより、経営の効率化やコストダウン、売れるもの作りに向けての共同の方針づくり、農協との集落独自の契約などを目標としている。しかし集落営農に参加する人の中には積極的な人ばかりでなく、否定的な人もいるため、申請を出すまでの人集めや、組織内での意見調整など苦労が多いようだ。だが申請を出すまでには至り、県内では申請第一号となったが、結果が出るのはまだ先のことで、今のところは認可が下りるかどうかは分からない。

このように農業に関しても分権や規制緩和が進んでいるが、責任が降りてくるためそのぶんリスクというのも増加してきている。食管法のもとでは米は政府が買い上げていたために、それだけで米の価格調整が行われ、売れるという保障のようなものがあった。しかし、改革にともない、売れるもの作りや、助成、生産調整の仕組みが変わったぶん生産者側の創意工夫がより求められるようになってきた。それだけでなく、BSE問題などでも分かるように、食にたいする安全性というものがより厳しく問われるようになり、また農産物の輸入自由化も進み、海外から安い農産物が入ってくるようになり、より農業者の立場は厳しくなり、生き残りをかけた工夫が求められるようになった。食糧生産は国の基本であり、おろそかにしてはならないものであるため、国も生産者側もこれからの担い手の育成や生産性を上げることなどが重要な課題となっている。

農林水産省：http://www.maff.go.jp/

総合食料局：http://www.syokuryo.maff.go.jp/

お米データベース：http://www.gohan.ne.jp/okome-data/komedb.html