051024jichi 講義メモ (昨年の講義メモ+α)
―地方分権推進委員会の中間報告―
http://www8.cao.go.jp/bunken/bunken-iinkai/index-bu.html
以下、第1章 総論の第1節から→
はじめに
1993.6. 地方分権の推進に関する衆参両院決議
1994.12. 地方分権の推進に関する大綱方針の閣議決定
1995.5. 地方分権推進法の制定:
政府に対して地方分権推進計画の作成を義務づけ。地方分権推進計画の作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告する機関。この地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視しその結果に基づく内閣総理大臣に必要な意見を述べる機関として、総理府に地方分権推進委員会を設置。5年の時限立法。
1996.7 .
地方分権推進委員会の設置
「明治期以来の中央集権型行政システムを新しい地方分権型行政システムに変革しようとする決意を表明」「明治維新・戦後改革に次ぐ『第三の改革』」
T.何故にいまこの時点で地方分権か ― 地方分権推進の背景・理由
中央集権型行政システムの制度疲労
明治維新以来徐々に形成されてきた中央集権型行政システムは戦時体制の下で一段と強化された。戦後改革はこの戦前のシステムを大きく変革するものであったが、機関委任事務制度の踏襲と拡張にみられるように、それは中央集権型行政システムを完全に払拭するものではなかった。そしてその後の高度成長期の行政活動の発展と膨張の流れのなかで、通達行政の濃密化と補助金行政の拡大にみられるように、新しい形態の集権化が積み重ねられてきた。この明治期以来の中央集権型行政システムは、限られた資源を中央に集中し、これを部門間・地域間に重点的に配分して効率的に活用することに適合した側面をもち、これが当時はまだ後発国であったわが国の急速な近代化と経済発展に寄与し、比較的に短期間のうちに先進諸国の水準に追いつくことに大きく貢献してきた事実は、否定できないところである。
しかしながら、中央集権型行政システムにはそれなりの弊害も伴う。すなわち、国民国家の統一のために地域社会の自治を制約し、国民経済の発展のために地域経済の存立基盤を掘り崩す。権限・財源・人間、そして情報を中央に過度に集中させ、地方の資源を収奪し、その活力を奪う。全国画一の統一性と公平性を重視するあまりに、地域的な諸条件の多様性を軽視し、地域ごとの個性ある生活文化を衰微させる。それは、脳神経ばかりが異常に肥大しその他の諸器官の退化した生物にも比せられる。
このように、中央集権型行政システムには功罪両面があるのであるが、わが国の政治・行政を取り巻く国際・国内の環境はここのところ急速に大きく変貌してきている。そしてその結果として、今日では中央集権型行政システムが新たな時代の状況と課題に適合しないものとなって、その弊害面を目立たせることになったのではないか。言い換えれば、旧来のシステムは一種の制度疲労に陥り、新たな状況と課題に的確に対応する能力を失っているのではないかと考える。」
変動する国際社会への対応
「冷戦の終結に伴い、国際社会の枠組みは大きく変動した。経済活動のボーダレス化が急速に進み、政府レベルの国際交流のみならず、地域レベル・市民レベルの国境を越えた交流が活発を極め、政治・経済・社会をめぐる新たな国際秩序の模索が続いている。このような国際情勢の下で、国が担うべき国際調整課題があらゆる行政分野にわたって激増してきている。にもかかわらず、この種の国際調整課題に対する国の各省庁の対応は決して十分に迅速かつ的確であるようには見えない。
そこでこの際、国にしか担い得ない国際調整課題への国の各省庁の対応能力を高めるためにも、地方分権を推進し、国の各省庁の国内問題に対する濃密な関与に伴う負担を軽減することを通して、これを身軽にしその役割を純化し強化していくべきである。」
東京一極集中の是正
「産業の海外進出に伴う国内産業の空洞化現象」+「人口・産業・金融・情報・文化等の東京圏への過度の集中」。「東京圏における超過密の弊害は住民の生活環境のあらゆる側面に及んでいるとともに、この巨大都市圏は地震等の大規模災害に対してきわめて脆弱になってしまっている。そして地方圏では過疎化が進み、地域社会の活力が低下し、ところによっては崩壊の危機にさらされている。」
「多極分散型の国土形成」「政治・行政上の決定権限を地方に分散し、これによって東京一極集中現象に歯止めをかけ、地域の産業・行政・文化を支える人材を地方圏で育て、地域社会の活力を取り戻させる必要がある。」
個性豊かな地域社会の形成
「多くの行政分野でそのナショナル・ミニマムの目標水準を達成」。しかし、「中央集権型行政システムの下で全国画一の統一性と公平性が過度に重視され、地域社会の諸条件の多様性が軽視されてきた」。「国民の多様化した価値観に対して全国画一の統一性と公平性の価値基準を押し付けようとすることは、もはや時代錯誤」。「ナショナル・ミニマムを超える行政サービスは、地域住民のニーズを反映した地域住民の自主的な選択に委ねるべきものである。その結果として地域差が生ずるとしても、それは解消されるべき地域間格差ではなく、尊厳なる個性差と認識すべきである。」
高齢社会・少子化社会への対応
「高齢者に向けては保健・医療・福祉及び生涯学習関連のサービス相互の緊密なる連携が、幼児児童に向けては保育・教育関連のサービスの再編成が要請」。
「各種の公益法人、NPO、ボランティアなどの協力をはじめ、場合によっては民間企業の参入を得て、公私協働のサービス・ネットワークを形成する必要」。
「この種の総合行政と公私協働の仕組みづくりは、国の各省庁別の、さらには各局別の縦割りの行政システムをもってしては到底実現できない。この種の仕組みづくりは地方公共団体のなかでも、住民に身近な基礎的地方公共団体である市町村の創意工夫に待つほかはない。」
「『国と地方』、『国民と住民』、『全国と地域』、『全と個』の間の不均衡を是正し、地方・住民・地域・個の側の復権を図ることを目的に、全国画一の統一性と公平性を過度に重視してきた旧来の『中央省庁主導の縦割りの画一行政システム』を、地域社会の多様な個性を尊重する『住民主導の個性的で総合的な行政システム』に変革することである。」
* 以下第2節、第3節はキーワードのみ羅列→
U.目指すべき分権型社会の姿 ― 地方分権推進の目的・理念と改革の方向
「国と地方」、「国民と住民」、「全国と地域」、「全と個」の間の不均衡を是正
「規制緩和と地方分権は、中央集権型行政システムの変革を推進する車の両輪」
「条例制定権の範囲が拡大し、自主課税権を行使する余地が広がることに伴い、地域住民の代表機関として地方公共団体の最終意思の決定に与かる地位にある地方議会と首長の責任は現在に比べ格段に重くなる。そしてまた地方公共団体の職員も、その日々の事務の管理執行において国の各省庁による指示を口実にして主体的な判断を回避することも、困難な事態に直面して安易に国の各省庁の指示を仰ぐことも、もはや許されない」
「これまで国・都道府県・市町村の間で行われていた報告・協議・申請・許認可・承認等の事務が大幅に簡素化され、この種の「官官折衝」のために浪費されてきた多大の時間・人手・コストを節約し、これを行政サービスの質・量の改善に充てることができる」
V.生活者・納税者の視点に立った地方分権の推進 ― 調査審議の進め方
「各省庁所管の各種行政分野に共通し、これらを横断している制度的課題ごとにその改革方策を横割りに検討していく方法である。そしてもう一つは、各省庁所管の個々の行政分野別課題ごとにその改革方策を縦割りに包括的に検討していく方法」
「委員会は、制度的課題の審議と行政分野別課題の審議を並行して進めることを決め、前者は委員会自身で、後者は専門委員を主体に設置した二つの部会(地域づくり部会・くらしづくり部会)で担当することにした」
「委員会は、地方分権推進法第4条の国と地方公共団体の役割分担のあり方、及び同法第5条に列挙されている制度的課題、すなわち機関委任事務制度及び国の関与、必置規制、並びに国庫補助負担金の諸事項こそ地方分権推進方策の要と考え、これらを優先して取り上げ調査審議することとした。そこで、同法第6条の地方税財源の充実及び同法第7条2項の地方行政体制の整備及び確立に必要な国の支援措置の両項目についての本格的な調査審議は今後に残されている」
「地域づくり部会では、数多くの検討課題のなかから、当面は、地域住民のくらしや民間企業の経済活動にとって共通の基盤であるところの土地又は地域空間に係る行政を優先して取り上げ、調査審議してきた。たとえば、都市計画における線引きと開発許可、農用地区域内の開発許可と農地の転用許可、臨港地区の都市計画、地域地区制と景観・建築、バス・離島航路等の地域交通などである。
また、くらしづくり部会の報告では、対人サービスの現場を担っている人々の意欲と能力、公私協働と地域住民の支え合い、きめ細かな配慮と対応などの大切さが強調され、生活保護の決定・実施、福祉施設の基準、廃棄物の処理、幼稚園・保育所、学校教育など、地域住民のくらしに直接に影響する行政を優先して取り上げ、これらの行政が地方分権の推進によってどのように変化し得るのかを検討」
「委員会は、地方分権を推進するにあたっても、国・地方を通じ行政の簡素効率化には十分配慮し、これによって公務員の人数が全体として増えることのないようにすることを基本方針としている。」
<必見HP紹介>
「地方分権推進委員会」中間報告の第1章総論