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中澤浩子「福島県における障害者スポーツの発展とスポーツ指導員」
障害者スポーツは健常者スポーツと同じように体力・健康増進や趣味を目的としているだけでなく、リハビリテーションにも役立ち大会や教室を開催・参加することで地域住民との交流や社会への参加を促すものである。日本障害者スポーツ協会では次のように説明されている。
《定義》
障害者スポーツとは障害者のためだけに考案されたスポーツだけを指すのではなく、原則として
@ 障害があるためにできないことがある。
A 障害があるためにスポーツのよる事故の心配がある。
B 障害を増悪化させるおそれがある。
C 競技規則が複雑なために理解しにくい。
などの理由でルールを一部変更して行っているものも指す。
(日本障害者スポーツ協会 http://www.jsad.or.jp/)
長野県で行われた冬季パラリンピックをきっかけに、私たちの障害者スポーツへの関心は高まりつつある。これを機にこの関心を持続しさらに参加しやすい形として地域単位でも障害者スポーツを促進していくことが障害者の社会参加にもつながってくると私は考えている。しかし、実際に障害者スポーツがどのように支えられ、何を必要としているかなど明確ではない部分も多く、身近な存在であるとはいいがたい。それを見直し障害者スポーツを身近な存在にしていくためには、スポーツ指導員の育成が重要になってくると考えている。
今回私は福島県の障害者スポーツへの取り組みを例に上げ、取り組み・状況・これからの課題について考えていきたい。特にこれからを支えるのは高校生や大学生などの協力と交流だと私は考えているので学校と障害者スポーツ団体とのかかわりについても考えていきたい。まず、福島県の『障害者自立・共生ふくしまプラン』と福島県障害者スポーツ協会の概要に触れる。
《障害者自立・共生プランとは》
福島県の『障害者自立・共生ふくしまプラン』は障害の重度化・重複化、障害者の高齢化などの変化に対応していくために平成6年3月に制定された。このプランはリハビリテーションとノーマライゼーション(障害者などが地域で普通の生活を営むことを当然とする福祉の基本的考え)の基本理念に基づき、障害者をとりまく社会のあらゆる分野において「完全参加と平等」の実現を基本目標として各種施策を推進するものである。7つの部門があり、それぞれテーマと具体的方策を明らかにしている。
(障害者自立・共生ふくしまプラン3
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/law/pref_plan/xp070103.htm)
《福島県障害者スポーツ協会とは》
平成7年に開催された第31回全国身体障害者スポーツ大会「うつくしまふくしま大会」によって高まった障害者スポーツへの関心を持続し、さらに障害者スポーツを振興し障害者の社会参加等の促進につなげていくことを目標にしている。
身体障害者のみならず知的障害者も対象に含めた障害者スポーツの振興を、競技仲間とそれを支える多くの人々の協力を得ながら、総合的に推進するための中核的組織として「財団法人福島県障害者スポーツ協会」を設立するものである。
福島県障害者スポーツ協会では次の事業に取り組んでいる。
l 障害者の各種スポーツ団体等及び地域組織の育成・指導
l 障害者スポーツ指導者の養成
l 各競技県大会共催事業
l 障害者スポーツに関する各種事業の受託
l 障害者スポーツに関する知識調査研究及び広報活動
(財団法人福島県障害者スポーツ協会http://www3.jeynet.ne.jp/~letssports/index.html)
協会が力を入れているもののひとつに障害者スポーツ指導者の養成がある。障害者スポーツ指導者とは障害者スポーツの普及・振興に寄与することが目的であり、その種類は初級・中級・上級・スポーツコーチの4種類がある。
初級…18歳以上で障害者にスポーツの指導を行う者
中級…初級スポーツ指導員として2年以上の指導経験を有し、
都道府県レベルにおいて障害者スポーツ指導を行う者
上級…中級スポーツ指導員として3年以上の指導経験を有し、
障害者スポーツ指導に専門的知識と技術ならびに
高度な指導技術を身に付け、フロックレベルにおいて
指導者も含めて指導を行う者
スポーツコーチ…中級スポーツ指導員または上級スポーツ指導員として
相当な経験を有し、特定競技の専門的技術の指導と活動組織の
育成や指導を行う者
福島県では福島県障害者スポーツ連絡協議会を設置し、県北・県南・会津・相双・いわきの5つの支部に分けている。地域毎に支部を置くことのメリットとして考えられることの1つは地域に指導員がいることで地域でのスポーツ大会や教室などの実現が容易になること。2つめは地域色を出した行事ができること。3つめは他の地域の大会や全国大会への参加が容易になること。だと私は考える。福島県では実際に地区各自で大会を主催し他の地域がそれに参加したり、教室を開催したりしている。また、雪の多い会津地域ではクロスカントリースキーをしたり、豊かな自然を活かしてウォーキングをしたりと地域色がよく出た活動を行っている。やはり地域の障害者スポーツの発展においてスポーツ指導員の充実・組織化は欠かせない。都道府県別の指導員の数を見てみると、東北では福島県が一番多く239人でそのうちわけは初級が221人・中級が15人・上級が3人・スポーツコーチは0人となっている。だが239人という数は決して多い数字とはいえない。
この数を増やすには何か方策はあるのだろうか?現在、指導者の資格は満18歳以上の者と定められている。だが果たして18歳で指導員の資格を取得しようと考える人はいるだろうか?私はなかなかいないと思う。障害者スポーツ指導員という資格が若者にとってはそれほど魅力的なものではないのが現実である。その現状を改善するには学校・地域での子供たちへの働きかけが必要となってくる。
最近はボランティア活動を積極的に行い、必須科目のようになってきている学校もある。しかし、子供たちのボランティアに対する興味もそれに比例しているかと言えばそうでもないように感じられる。その原因は子供たちがいきなりボランティアという世界を知るからであり、もっと親しみやすい観点からボランティアの世界を見れば興味を持つ子が増えるのではないかと考える。例えば中学や高校では部活動の一環として障害者スポーツ大会の支援参加を行う。部活動は中高生にとって身近な存在であるため関心が増すだろう。自分の好きな分野だと興味もやる気も自然と出てくるものである。また、交流試合を行うなど定期的に障害者スポーツと触れ合うことが、指導員という資格・職業に興味を持たせることにつながると私は考える。
また、福島県では養護学校教育の中でのスポーツ活動の充実を目指し、体育・クラブ活動・部活動などでさまざまなスポーツ体験を広げ、能力・適性等にあったスポーツを奨励している。そのためにも、スポーツ指導者の存在は欠かせないものである。福島県では年に2回9月に「福島県障害者スポーツ指導員養成研修会」を開催し、初級スポーツ指導員の養成を図っている。しかし、中級・上級・スポーツコーチは各県ではなく東京都・大阪府などの首都圏のみでの開催なので積極的に取得希望者を派遣することが望ましい。
障害者スポーツの普及には、地域全体とものかかわりが欠かせない。しかし、これからはボランティアとしてかかわるだけではなく、職業としてもかかわることができるという認識をひろめることが重要となってくるだろう。