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  松岡かおり「グリーンコンシューマーかがわの働き」

 

はじめに

  わたしたち人間の生活とごみは密接な関係にある。それは我々の生活がものを“買う”ことによって成り立っているからである。例えば、お店で何か商品を買うと必ずその商品には何重にも包装が施されており、その上ビニールの袋に入れて手渡される。しかしその包装紙やビニール袋は、ほとんど全てはがして捨ててしまう。結局は無駄になってしまうものを、「見た目」や「機能性」といった人間中心の考え方だけを追い求め、限りある地球資源をただのごみにしてしまっている。これが今、特に先進国においては普通になっている。地球環境に関する国際的な条約や企業の取り組みはさまざまに行われているものの、個人に対する制限や取り決めは特に決められてはいない。省エネルギー対策の大きなカギを握っているのは63億の人、一人一人なのである。わたしたちの日常生活は言い換えればごみ生産活動である。ごみを増やすのも減らすのも日常生活のちょっとした努力に左右される。そこで地球環境のためにできる、いちばん身近なエコ活動としての“買い物”を考えてみようと思う。そこで香川県内で活動している環境団体「グリーンコンシューマーかがわ」を取り上げる。

 

グリーンコンシューマー活動・『グリーンコンシューマーかがわ』とは

   われわれの生活はまず買い物をすることで始まる。その始まりを変えることは、大量生産・大量消費のライフスタイルを変える大きな力になる。必要なだけ生産し、必要な分だけ消費するという「環境にやさしいライフスタイル」へと転換する必要がある。グリーンコンシューマー活動は「消費の仕方を変えることによって生産のあり方を変える」ということに基本をおいている。日常生活の基本であるモノを手にする買い物に“環境”の視点を取り入れて、ごみ減量化や省資源・省エネルギー、リサイクル推進など環境のことを考えて消費活動をすることにより、まず消費者自らのライフスタイルを環境にやさしいものへと変えることにつながる。消費者の消費の仕方が変われば、当然のことながら販売する側の提供するものやサービスを環境にやさしいものへと変えることにつながる。そして販売業者が変われば、商品を作る製造者も消費者のニーズに応えて、環境に配慮した商品を作る努力をしていくようになる。このような、消費者・販売業者・行政の三者がネットワークを形成し、環境をもっと身近に感じる消費プロセスを作ることを目的としている。また「環境にやさしい生活」といってもいったい何から始めてよいのかピンとこない消費者にとって、買い物という極めて身近な行為を通して、環境問題への意識を行動へと促す活動をしている。

   『グリーンコンシューマーかがわ』の活動方針は@環境にやさしい買い物運動を県民全体に広めること、A環境にやさしい買い物運動を推進し、その活動に対して支援する、B環境にやさしい商品の購入や販売を推進する、C環境にやさしい商品などに関する情報を推進し、提供することである。主な活動内容としては環境にやさしい買い物キャンペーン(買い物袋持参の推進・ゴミ袋減量化につながる商品選択の推進・環境にやさしい商品選択の推進・ハンガー回収の推進)、レジ袋を減らそうキャンペーン、再生紙100%のトイレットペーパーを使おうキャンペーン、省エネ型家電製品普及キャンペーン、買い物袋持参率全県調査、グリーンコンシューマー研修会・講習会の開催、情報誌の作成・発行である。「グリーンコンシューマーかがわ」ネットワークには県内のさまざまなチェーン店を含む商店が参加している。そこでは上で述べた活動だけでなく、販売企業独自の環境に配慮した活動を行っている。以下が主なそれである。

・ 商品の簡易包装(ノンラップの努力、自社商品のパッケージの薄型化、小型化、詰め替え商品の開発)

     青果物、魚のバラ売りまたは裸売り

     牛乳パック、プラスチックトレー、電池、アルミ缶、ペットボトルの回収

     再生品、詰め替え商品など環境にやさしい商品の積極的販売、品揃えを増やす

     ダイオキシン排除商品の積極的販売

     買い物袋持参者に向けてのスタンプカード制度

この制度を導入しているほぼ全ての店舗が、スタンプ20個と現金100円または100円分の

お買い物割引券と交換している。また環境保護団体に寄付している一部の店舗もある。

     買い物袋持参者に向けて3円の値引き積立進呈

     店独自のエコオリジナルバックの販売

このバックは精算時にレジ係りが買い物カゴにセットするため、購入した商品をビニール袋に

詰め替える手間が省ける。ある店舗ではバック自体をリサイクル素材から作っているところもある。

      ・ 自社のスーパーバックに有毒ガスの発生しにくい素材を使用

     ダイオキシン問題に対応した非塩ビ系包装ラップの全店導入

     ケナフ商品の開発・販売、ケナフ資材の導入

     社内事務用品への配慮

コピー用紙・会社案内・社内報等の再生紙利用、ケナフ製の名刺ペットボトルを利用した素材で作られた制服の採用

   このように企業独自の環境への配慮の努力は多岐にわたる。経費削減・節約というのはほとんどの場合、結局は環境にやさしいことであり、企業側も積極的に行える。また全国で一年間に使用されるレジ袋の数は305億枚にも上る。これをひとりあたりに換算すると一年間で約300枚を使っていることになる。このレジ袋を減らすことによって約56万キロリットルの原油輸入を減らすことができるのだ。

   香川県では毎年、買い物袋持参率調査を行っている。平成16年度の調査では昨年の同日に実施した調査(4.4%)に比べ1.5%アップの5.9%という結果になった。持参率アップの理由としては上の各店舗で独自の得点を設け、県下37市町において一斉に広報車を運行したほかに、地元の消費者団体や市町役場が住民に対して積極的呼びかけをするなどの独自の取り組みを進めたこと、また地域に根ざした運動の拡大を図るため、県内約12箇所(約400人)において出前講座を実施し、買い物袋の持参など環境にやさしいライフスタイルへの転換を呼びかけたことがあげられる。しかし事業者別の持参率の最高は20.1%、最低は2.2%とかなりの開きがあり、事業者間での取り組みに温度差があると思われ、今後の持参率アップにつなげるには事業者の取り組みの改善・強化が必要不可欠である。

 

グリーンコンシューマーかがわの今後の展開

  グリーンコンシューマーかがわでは、平成12年から買い物袋持参運動を展開している。今後における持参率アップを継続するためにもさまざまな方策を検討することにしている。具体的には持参率アップのための啓発事業をNPO等との協労事業とするなどの機動性または柔軟性を取り入れることである。次に消費者団体や市町担当課などによる地位に密着した啓発活動が持参率アップにつながったことを受け、今後も消費者団体・グループの会員及び地域住民を対象とした出前講座を積極的に開催すること、消費者団体・グループの会員及び事業者の従業員、自治体の職員などに再度、運動の趣旨を浸透させるための働きかけをすすめること、地域に根ざした運動の拡大のために、地域の推進リーダーの発掘及び養育を強化することである。

 

おわりに

  現に県内の小豆島や規模の小さい店舗では、なじみ客が多いため一人一人に声が掛けやすく、買い物袋の持参率は比較的規模の大きいところに比べて持参率が高いという結果が出ている。集客数の見込める大きな店舗で大々的にキャンペーンを行えば、持参率のアップはそれほど期待できない。それは昔ながらの地域との密着が無いからである。「グリーンコンシューマーかがわ」の今後の展開からも分かるように、やはり小さな地域・少人数から環境のためにコツコツと運動するという意識を持つことを大きな運動への足がかりとするべきなのである。ただ単にキャンペーンを行うのではなく、そのキャンペーンのために消費者団体や事業者の意識をはっきりと統一したものにするという“土台作り”が肝心だということがわかった。

〈参照ホームページ〉

 http://www.greenconsumer-kagawa.org/  グリーンコンシューマーかがわ

 http://www.pref.kagawa.jp/haitai/risa/index.htm 香川のごみ事情

 http://www.shikoku-np.co.jp/feature/tuiseki/270/ 四国新聞社 シリーズ追跡 「地球にやさしい買い物運動」は今 2004/10/03