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金沢絵理子「福島県における原子力発電」

 

現在の発電方法として火力、水力などがありますが、原子力発電も重要な発電元となっています。日本でも現在使用されているおよそ3割の電力が原子力発電でまかなわれています。原子力発電とは、火力発電のボイラーを原子炉におきかえたもので、火力発電の場合、ボイラーの中で石油などを燃やすのに対して原子力発電では原子炉の中でウランを核分裂させ、この時発生する熱によって水を286℃もの蒸気にかえてタービンを回し発電しています。原子炉の中には、核分裂を起こすウランの他に水などが入っており、それらによって出力量が調節されています。原子力発電のメリットは火力発電のように化石燃料を使用しないので、二酸化炭素は排出されず、水だけが排出されるクリーンなエネルギーであるということです。また少量のウランから膨大な電力を生産することが出来るのもその魅力のひとつです。しかし一方で原子力発電には大きなリスクも存在します。それは核燃料を使用することの危険性です。一度事故が起こるとその被害はとても大きなものとなりかねません。私の住んでいる福島県の浜通り中北部に位置する相双地方には、東京電力(株)福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所が立地し、計10基の発電用原子炉が運転されています。その発電量(909.6万Kw)は、日本の原子力発電電力量のおよそ20%を占める有数の電力供給地となっています。しかしそこで生産される電力は福島県で使用されることはほとんどなく、その大半が関東地方に送電されます。過去10年(94年〜03年)で福島第一原子力発電所で発生した事故(レベルが低いものも含む)は9件、第二原子力発電所では11件の事故が発生しています。2004年には電力会社による原子炉格納容器のひび割れの非公開が大きな問題となりました。そのとき初めて原子力発電所が身近にあることの危険性を感じました。その後一時はほとんどの原子炉が運転を中止するということもありましたが、現在は10機全てが運転を再開しています。そこで私は県民が安全に生活していくために福島県がどのような活動をしているのか調べてみようと思いました。

 

県民が安心して生活するための安全確保や広報活動に重点をおいている組織・機関として福島県には原子力安全グループと原子力センターあります。

 

原子力安全グループは県の生活環境部、県民安全領域内の組織です。原子力発電所周辺地域住民の安全を確保するため、昭和44年4月に東京電力(株)と「原子力発電所の安全確保に関する協定」を締結しました。昭和51年3月には、地域により密着した原子力安全行政の推進を図るため、二者協定から立地町を加えた三者協定にするなど、必要に応じて改定を行っています。また原子力発電では海水を使用しており、使用された水は温排水として海中に排出されます。そのため昭和49年度から原子力発電所などの前面海域において、温排水が海洋生物に及ぼす影響を把握するため、毎年度「福島県温排水調査計画」を策定し、温排水調査を実施しています。この調査計画に基づいて、県水産試験場において沿岸海域の水産資源動向と分布状況を把握するための生物調査や沿岸の海況などを調査する漁況・海況調査を実施しており、また、東京電力(株)においても、県の調査と並行して温排水の拡散分布状況を把握するための物理調査を実施しています。県による広報事業には広報誌「アトムふくしま」の発行やさらに、昭和52年度から、原子力発電所周辺7町の各種団体の代表の方々を会議員に委嘱し、「原子力広報連絡会議」を設置し、原子力発電所周辺地域住民に対し、年に4回研修、講演等を通じた情報提供を行い、原子力に関する基礎的知識の普及啓発を図っています。昭和55年度から広報・安全等対策交付金が原子力発電所周辺関係市町村にも交付されることになったことに伴い、県と関係市町村が一体となって広域的かつ効率的な広報活動を行う必要が生じたため、昭和56年4月1日、共同で(財)福島県原子力広報協会を設立し、同協会のもとで種々の原子力広報事業を実施しています。

 

福島県原子力センターは、県の知事部局の中で住民の生活環境の安全を確保する業務を所管する生活環境部県民安全領域(原子力安全グループ)に属する機関です。原子力発電所周辺の地域住民の安全を確保するために、昭和49年4月に福島第一原子力発電所の立地町である大熊町に、また、原子力センター福島支所は、平成8年4月に県庁所在地である福島市に開設されました。ここでは、環境放射能の監視測定、安全確保協定に基づく通報連絡や立入調査のほか、原子力の知識の普及・啓発のための広報活動、環境放射性物質の調査研究を行っています。環境放射能の監視・測定の方法は、テレメータシステムにより空気中の放射線を常時監視する方法、蛍光ガラス線量計(RPLD)を環境中に配備・回収して積算線量を測定する方法及び環境中の試料を定期的に採取してその放射能を確認する方法があります。また、緊急時においては、環境放射線測定車により放射線の監視を支援します。現在のテレメータシステムでは、常時監視モニタリングポスト23局を原子力センターで集中監視しており、その測定データは原子力センター展示室のデータ表示装置で表示しているほか、平成9年4月からは発電所立地4町役場(楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町)及び県庁県民ホールに、平成13年4月からは発電所周辺役場(広野町、浪江町)にデータ表示装置を設置し、測定データを表示しています。 また、平成9年4月からは、東京電力(株)がそれぞれ福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の敷地境界周辺に設置しているモニタリングポストの測定データ等を、平成11年4月からは両発電所の排気筒モニタのデータを、さらに平成12年4月からは両発電所の放水口モニタのデータについても原子力センターに伝送され、同様に測定データを表示しています。そしてこれらの測定値はホームページにおいてリアルタイムでみることができるのです。安全確保対策としてはまず県、立地町そして東京電力鰍ノよって結成された「原子力発電所安全確保技術連絡会」において随時情報交換が行なわれ、県、立地町が常に発電所の安全状況を把握しています。また定期的な会合では環境放射能の測定データを分析、評価し安全を確認します。また定期点検の実施状況や発電所において事故や故障が発生した場合は電力会社は県、立地町に連絡をすることになっており、必要に応じて県、立地町は発電所の立ち入り調査を行なうことができます。また、原子力センターには、昭和55年度から目で見る広報活動の展開のため原子力センター内に展示室や映像ホールを設け、原子力に関するパネル、模型などの各種展示物やマルチビジョン映像を設置しています。また来館者の希望により原子力発電所のしくみ、放射線および放射能測定機器の取り扱いなどの講習会を実施しています。

 

 原子力発電所では、発電時に発生する放射能が外部に出ないよう「五重の防壁」により閉じ込めています。一方、原子力発電所の立地の際には、現実には起こるとは考えられないような事故の発生を仮定した場合であっても、周辺住民の安全を確保できるかどうか、十分な広さの敷地がとってあるかどうかが確認されています。実際に福島第一原子力発電所では350万u、第二発電所では150万uの広大な土地が使用されています。このように、原子力発電所の設置・運転にあたっては、国による厳正な審査と厳重な監督がなされていることに加え、事業者の自主的な保安活動等が行われていることから、日本の原子力発電所では、技術的な安全性の見地から原子力災害が起こる可能性は低いものとなっています。 しかし万が一原子力災害が発生した場合に機能するのが福島県原子力防災対策センターです。福島県原子力災害対策センターは、東京電力株式会社福島第一原子力発電所又は福島第二原子力発電所において原子力災害が発生した場合に、国、県、立地町や周辺の市町村、原子力事業者、防災関係機関及び専門家等が一体となって対応するための「緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)」として使用することを目的として、福島県と国が協力して整備したものです。そこでは国と県の現地対策本部・「原子力災害合同対策協議会」が設置されるとともに原子力事業者による応急対策、事故の状況把握と予測、住民の安全の確保、被ばく者に対する医療措置、避難住民に対する支援等様々な緊急事態応急対策などが行われていきます。

 

これらのような県の原子力発電への取り組みを調べて感じたのは各機関・組織において互いの情報交換、状況把握はもちろん、住民に対しての情報公開もこまやかに行われているということです。今まで何度かあったトラブルに不安を抱くこともありましたが、これらのこまやかな情報公開は住民と県、そして電力会社との信頼関係を築いていくと思います。

 

福島県http//www.pref.fukushima.jp/  

原子力安全グループhttp//www.pref.fukushima.jp/nuclear/index.html

福島県原子力センターhttp//www.atom-moc.pref.fukushima.ma.jp/

東京電力http//www.tepco.co.jp

東京電力兜沒第一原子力発電所http//www.tepco.co.jp/fukushima1-np/index-j.html

東京電力兜沒第二原子力発電所http//www.tepco.co.jp/fukushima2-np/index-j.html