Nakamurayuki050117

 

中村幸恵 「平泉文化遺産を世界遺産へ」

 

地方自治を勉強するようになって、地方の行政活動に興味を持つようになり地元である

岩手のホームページをよく見るようになった。そんな中、父が以前単身赴任で住んでいた平

泉町の地域復興の一貫で平泉町にある遺跡を世界遺産に登録するための取り組みをしていることを知った。世界遺産というと、世界レベルなイメージがありそれがどのように地方と結びつくのだろうか。そこで今回のレポートでは、世界遺産に登録するためにどのようなことに取り組む必要があるのか、見ていきたい。

 

まず世界遺産とはどのようなもので、登録されるためにはどのような過程を通らなければいけないのかについて説明したい。始めに、世界遺産は「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」の三つに分類される。それぞれを簡単に説明すると、「文化遺産」は優れた普遍的な価値をもつ記念工作物、建築物群、遺跡(文化的景観を含む)である。「自然遺産」は、鑑賞上、学術上、保存上顕著な普遍的価値を持つ地形や生物、景色などを含む。そして、「複合遺産」は文化遺産と自然遺産の両方を兼ね備えている遺産のことを指している。世界遺産を取り仕切っている国連機関ユネスコによると平成167月現在世界遺産に登録されている遺産は788件でそのうち文化遺産は611件、自然遺154件、複合遺産は23件である。その中で日本は12件登録されている。(ユネスコ世界遺産センターホームページhttp://www.unesco.org/whc/nwhc/pages/home/pages/homepage.htm)次に、世界遺産に登録されるまでのプロセスについてであるがまず、国内で登録を希望する遺産についての暫定リストを世界遺産委員会に提出する。推薦する遺産は、推薦国を代表し(国宝など)誰もが認める価値をもつ資産であり、世界遺産委員会の登録方針に合った資産であることが条件とされる。暫定リストを提出したら次に、推薦準備作業に取り掛かる。これは、遺産が普遍的価値をもっていることの証明とその遺産を保護する体制が整っていることを書面に記載する。その書面を国内の日本では文化庁と政府の許可が出た段階で、世界遺産委員会へ推薦書として提出する。今度は、世界遺産委員会より文化遺産はICOMOS(国際記念物遺跡会議)へ、自然遺産IUCN(国際自然保護連合)へと、候補地の評価調査を依頼する。その調査結果をもとに世界遺産委員会で審査・登録の可否を決定し世界遺産リストへの登録を決めるというのが一連の流れである。登録にあたって、いくつかの登録基準が設けられており、この1つ以上を満たしていることが登録地の条件となる。ここで平泉町の遺跡について触れておく。平泉が登録を希望している遺跡は町内にあるいくつもの寺院や庭園である。有名なものに、12世紀のままに保存されている国宝中尊寺金色堂、毛越寺、無量光院、観自在大王院などがある。ちなみに、秀衡の居館「平泉館」の可能性がある柳之御所遺跡などの大規模な遺跡群の発掘が現在も行われている。これらの遺産が県内外で高い評価を受けているのは、平安末期に奥州平泉で、藤原四代にわたる約100年間の間に、京都の王朝文化に影響を受けつつ独自の文化を発展させた遺跡群であり、地方文化の中でも優れたものであるからだ。また、藤原三代清衡、基衡、秀衡らが親・子・孫三大にわたって寺院と庭園の管理をしていたことは世界にも例がないことである。このような評価、特色のある遺跡群が200011月、「平泉の文化遺産」として世界遺産暫定リストに登録された。

 

 では、登録のための平泉町の課題と取り組みについて、最近世界遺産登録が決まった和歌山県、三重県、奈良県の三県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」の県内の登録までの取り組みを参考にしながら見ていきたい。この紀伊山地は三県にまたがってあるため、三県が県の壁を越えて一体となって連携体制をとる必要とされたがここでは和歌山県内の取り組みについて見ていく。和歌山県ではまず遺産登録関係地域に自然公園法や森林法、条例を制定して保護していく取り組みを行っている。また、和歌山県は林業が主要産業となっていることから林業や農業によって形作られてきた景観が「文化的景観」として、評価の対象となることから、林業の伐採は林業法の範囲内で対応することとしている。また県内外へのPR活動として、登録予定地やグルメ、宿泊施設等を紹介したガイドブックを発行している。また、インターネットにおいても「和歌山県世界遺産登録推進協議会」のオフィシャルホームページを解説して、アピールをしている。(財団法人和歌山社会経済研究所ホームページhttp://www.wsk.or.jp./)このように登録後遺産を守っていく体制をしっかりさせかつ国内外に情報を提供して多くの人に関心を持ってもらうことが大切だと考えられる。では、平泉町ではどうであろうか。平泉町には四つのことが課題として挙げられる。まず先に述べた登録のためのプロセスから行くと平泉町は推薦準備の段階にある。現状として、まだ発掘途中である中尊寺大池跡、無量光院や柳之御所の発掘調査結果から復元することが必要である。また、これまで国内で登録された世界遺産は、現存している建造物等だが、「平泉の文化遺産」は史跡が地中にある埋蔵文化財(地下遺構という)も含まれる特殊性により復元整備をする必要がある。このように未完成の遺跡を完成させることが重要である。二つ目の課題に、平泉町内の世界遺産登録関係地域について環境保全対策を執ることである。遺産のいくつかが景観であるのでこの対策はとても重要だと思われる。具体的には自治体だけでなくその地域住民との協働で平泉町の実情に応じて管理・整備を行う。こうすることで世界遺産に対する住民意識が向上し自治体だけでは行き届かない所まで管理することができる。また、法的に環境保全を保障することも大切である。例えば、中尊寺などの中核となる遺産(コアゾーンという)を文化財保護法等によって保護し、それを取り巻く周辺の地域(バッファゾーン)を平泉独自の町条例等によって環境と景観を保護するべきである。その際に、どこまでを周辺地域にするかは地域住民との調整と了解をとるべきである。三つ目の課題は、現状が推薦段階であることから、世界遺産登録委員会に対し文化遺産が普遍的に価値あるものであることを証明する必要があり、そのためには県内の研究者に加えて県外からの研究者らとともに総合的な研究・調査を行う必要がある。そして最後の課題として、平泉文化の魅力を世界に発信しつつ住民の世界遺産登録への関心を高めながら「まちづくり」事業に取り組んでいくことである。先に述べたように、遺産の管理・整備を住民と協働で行うことで意識改革が望まれる。今、平泉町では平泉文化を知ってもらうために、当時の平泉町の様子をCGによって再現しDVDを作成した。また、世界遺産教室とよばれる講演会や世界遺産に関する塾を積極的に開いている。2004229日に第四回世界遺産講演会が、平泉レストセンターで開かれた。講演会は平成12年から毎年開催しており、今回で4回目になる。世界遺産の意識を認識し、世界遺産登録への機運の醸成を図ることを目的とした。同日は、東京文化財研究国際文化財保護修復協力センターの稲葉信子規格情報研究長が講演をし、会場内約180人が熱心に耳を傾け世界遺産条約の意義と平泉文化の特色について理解を深めた。このような取り組みを今後も続けていくべきである。今回冬休みを利用して昔訪れた平泉町に再び行ってくることができたのだが、昔に比べてだいぶ町並みが整備されていることが分かった。道路は舗装されており、道路沿いの建物も新しくなっているところが多かった。「まちづくり」事業が進展していることが分かった。

 

以上述べてきたように、現状としてもう少し時間がかかるにしても課題に対する取り組みが盛んに行われていることからそれを解決して世界遺産に登録させることができるように自治体と住民が協力して取り組んでいくことが重要だと思った。

 

<参照サイト>

ユネスコ世界遺産センターhttp://www.unesco.org/whc/nwhc/pages/home/pages/homepage.htm

財団法人和歌山社会経済研究所http://www.wsk.or.jp/

平泉町ホームページ

http://www.town.hiraizumi.iwate.jp/scripts/mgrqispi.dll?appname=hiraizumi&prgname=MakeHiraizumi