041004jichi 講義メモ
<地方自治論の進捗予定>
(10月4日現在。変更の場合あり。栃木県知事選について取り上げるケースも。あと適宜担当教員の行っている活動を紹介)
10月4日:地方分権推進委員会の中間報告について
10月18日:分権委の諸勧告と地方分権一括法の成立 (『公共を支える民』の講読も開始(第1章から))
10月25日:その後の地方分権の流れと三位一体改革、テキスト第2章
11月1日:市町村合併の経緯、テキスト第3章
11月8日:市町村合併をめぐる課題、テキスト第4章
11月15日:栃木県における市町村合併状況、テキスト第5章
11月29日:地方分権、市町村合併、テキストに関する試験(記述式)
12月6日:栃木県知事選を振り返って。社会人聴講生からの話題提供。レポート作成についての説明(視点の設定、スケジュールや作成要領、レポート作成事例や好レポート紹介など)
12月13日:受講生による中間報告(受講生の半数分)
12月20日:受講生による中間報告(受講生の半数分)
1月11日(火)授業振替日。予備日(教員からの話題提供と受講生からのレポート口頭報告)
1月17日:レポート提出日
1月24日:提出レポートをめぐる意見交換(受講生の半数分)
1月31日:提出レポートをめぐる意見交換(受講生の半数分)
―地方分権推進委員会の中間報告―
(*01年10月1日の地方自治論で用いたメモから)
http://www8.cao.go.jp/bunken/bunken-iinkai/index-bu.html
第1章
第1章
総論
1993.6
地方分権の推進に関する衆参両院決議
1994.12 地方分権の推進に関する大綱方針の閣議決定
1995.5、
地方分権推進法の制定:
政府に対して地方分権推進計画の作成を義務づけ。地方分権推進計画の作成のための具体的な指針を内閣総理大臣に勧告する機関。この地方分権推進計画に基づく施策の実施状況を監視しその結果に基づく内閣総理大臣に必要な意見を述べる機関として、総理府に地方分権推進委員会を設置。5年の時限立法。
1996.7
地方分権推進委員会の設置
「明治期以来の中央集権型行政システムを新しい地方分権型行政システムに変革しようとする決意を表明」「明治維新・戦後改革に次ぐ『第三の改革』」
なぜ地方分権か?→
中央集権型行政システムの制度疲労
明治維新以来徐々に形成されてきた中央集権型行政システムは戦時体制の下で一段と強化された。戦後改革はこの戦前のシステムを大きく変革するものであったが、機関委任事務制度の踏襲と拡張にみられるように、それは中央集権型行政システムを完全に払拭するものではなかった。そしてその後の高度成長期の行政活動の発展と膨張の流れのなかで、通達行政の濃密化と補助金行政の拡大にみられるように、新しい形態の集権化が積み重ねられてきた。 この明治期以来の中央集権型行政システムは、限られた資源を中央に集中し、これを部門間・地域間に重点的に配分して効率的に活用することに適合した側面をもち、これが当時はまだ後発国であったわが国の急速な近代化と経済発展に寄与し、比較的に短期間のうちに先進諸国の水準に追いつくことに大きく貢献してきた事実は、否定できないところである。
しかしながら、中央集権型行政システムにはそれなりの弊害も伴う。すなわち、国民国家の統一のために地域社会の自治を制約し、国民経済の発展のために地域経済の存立基盤を掘り崩す。権限・財源・人間、そして情報を中央に過度に集中させ、地方の資源を収奪し、その活力を奪う。全国画一の統一性と公平性を重視するあまりに、地域的な諸条件の多様性を軽視し、地域ごとの個性ある生活文化を衰微させる。それは、脳神経ばかりが異常に肥大しその他の諸器官の退化した生物にも比せられる。
このように、中央集権型行政システムには功罪両面があるのであるが、わが国の政治・行政を取り巻く国際・国内の環境はここのところ急速に大きく変貌してきている。そしてその結果として、今日では中央集権型行政システムが新たな時代の状況と課題に適合しないものとなって、その弊害面を目立たせることになったのではないか。言い換えれば、旧来のシステムは一種の制度疲労に陥り、新たな状況と課題に的確に対応する能力を失っているのではないかと考える。」
変動する国際社会への対応
「冷戦の終結に伴い、国際社会の枠組みは大きく変動した。経済活動のボーダレス化が急速に進み、政府レベルの国際交流のみならず、地域レベル・市民レベルの国境を越えた交流が活発を極め、政治・経済・社会をめぐる新たな国際秩序の模索が続いている。このような国際情勢の下で、国が担うべき国際調整課題があらゆる行政分野にわたって激増してきている。にもかかわらず、この種の国際調整課題に対する国の各省庁の対応は決して十分に迅速かつ的確であるようには見えない。
そこでこの際、国にしか担い得ない国際調整課題への国の各省庁の対応能力を高めるためにも、地方分権を推進し、国の各省庁の国内問題に対する濃密な関与に伴う負担を軽減することを通して、これを身軽にしその役割を純化し強化していくべきである。」
東京一極集中の是正
「産業の海外進出に伴う国内産業の空洞化現象」+「人口・産業・金融・情報・文化等の東京圏への過度の集中」。「東京圏における超過密の弊害は住民の生活環境のあらゆる側面に及んでいるとともに、この巨大都市圏は地震等の大規模災害に対してきわめて脆弱になってしまっている。そして地方圏では過疎化が進み、地域社会の活力が低下し、ところによっては崩壊の危機にさらされている。」
「多極分散型の国土形成」「政治・行政上の決定権限を地方に分散し、これによって東京一極集中現象に歯止めをかけ、地域の産業・行政・文化を支える人材を地方圏で育て、地域社会の活力を取り戻させる必要がある。」
個性豊かな地域社会の形成
「多くの行政分野でそのナショナル・ミニマムの目標水準を達成」。しかし、「中央集権型行政システムの下で全国画一の統一性と公平性が過度に重視され、地域社会の諸条件の多様性が軽視されてきた」。「国民の多様化した価値観に対して全国画一の統一性と公平性の価値基準を押し付けようとすることは、もはや時代錯誤」。「ナショナル・ミニマムを超える行政サービスは、地域住民のニーズを反映した地域住民の自主的な選択に委ねるべきものである。その結果として地域差が生ずるとしても、それは解消されるべき地域間格差ではなく、尊厳なる個性差と認識すべきである。」
高齢社会・少子化社会への対応
「高齢者に向けては保健・医療・福祉及び生涯学習関連のサービス相互の緊密なる連携が、幼児児童に向けては保育・教育関連のサービスの再編成が要請」。
「各種の公益法人、NPO、ボランティアなどの協力をはじめ、場合によっては民間企業の参入を得て、公私協働のサービス・ネットワークを形成する必要」。
「この種の総合行政と公私協働の仕組みづくりは、国の各省庁別の、さらには各局別の縦割りの行政システムをもってしては到底実現できない。この種の仕組みづくりは地方公共団体のなかでも、住民に身近な基礎的地方公共団体である市町村の創意工夫に待つほかはない。」
「『国と地方』、『国民と住民』、『全国と地域』、『全と個』の間の不均衡を是正し、地方・住民・地域・個の側の復権を図ることを目的に、全国画一の統一性と公平性を過度に重視してきた旧来の『中央省庁主導の縦割りの画一行政システム』を、地域社会の多様な個性を尊重する『住民主導の個性的で総合的な行政システム』に変革することである。」