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津田安希子「地方自治体による国際協力―北海道・中国の「友好の森」づくり―」
国際化という言葉がすっかり定着した今日、地方自治体においては友好・親善を目的とした国際交流だけにとどまらず、それらを基調としながらも地方自治体の持っている専門知識や人材などを活用した新しいタイプの国際協力が展開されつつある。本レポートではこうした地方自治体が行う国際協力事業の中から、先駆的な役割を果たしているとして「モデル事業」と言われている、北海道が行っている「緑の国際交流事業」について紹介する。
「緑の国際交流事業」は、1998年11月に江沢民中国国家主席が北海道を訪れた際、堀知事が両国の友好を願い「友好の森」を育てることを提案したのが始まりである。2000年から2002年の3ヵ年にわたり、毎年一般から募集した北海道のボランティア100人程度からなる日中友好植樹隊を組織し、現地の人達と一緒に毎年1ヘクタールずつ2500本から3000本の北海道産苗木(ミズナラ・シラカバ・ハマナス・ナナカマドなど)を遼寧省阜新市に植樹していくという事業である。なぜ遼寧省が選ばれたかは、気候条件が北海道と似ており北海道産の苗木を植樹するのに適しているのに加え、新千歳空港から遼寧省の省都瀋陽市への国際定期便も就航しているので苗木も迅速に運搬できる。さらに、苫小牧や千歳など道央圏の経済人らで作るボランティア団体「日中友好親善緑の森」が2度にわたって瀋陽市で植樹活動を行っており、中国で重要な人的な繋がりを持っていたということで実施の決め手となった。当初、実行委員会側は100人程度を見込み随時ボランティアを募集したが、実際には毎年それを超える人数が集まった。というのも、北海道には「北海道森林計画づくり計画」というものがあり、その中で一般から募集された森林ボランティアが林業分野などの専門家と連携して技術指導を受け、道内外の植樹活動を行っており、国際協力や緑化に対する意識が高いためこれほど住民の理解が得られたのだろう。中国側も、98年・99年と2年続けて長江流域などで大規模な洪水が起きたため、植樹や造林への関心が高まっており地元の一般市民や中学生など300人から700人(年によって違う)余りが参加し、ボランティア達は言葉の壁を越え共に交流・協力しながら北海道と中国の友好のシンボルとなる「友好の森」づくりを行った。そしてこの森には、参加者の名前と北海道と中国の友好の証を記した記念碑が建てられた。2002年をもってこの事業は終了したのだが、北海道は今回の成功により2003年度から新たに黒龍江省ハルピン市において「友好の森」づくりを実施している。
北海道と黒龍江省は1986年に友好提携を結んでおり、人的・技術・経済交流は以前から積極的に行われてきた。それをさらに今回の「友好の森」づくりによって環境分野における交流も促進し、友好関係の強化と緑化意識の高揚を図ることが目的とされる。事業概要は遼寧省の時と同じで、2003年から2005年の3ヵ年にわたり毎年北海道のボランティアと地元のボランティアとが協働で植樹するもので、2003年4月には北海道からは約90人、中国からは約150人がハルピン市近郊において約1ヘクタールに北海道産苗木1000本・中国産苗木1000本を植えた。この事業は現在も継続中なのだが、費用は全て自己負担にも関わらずたくさんの人達が参加し、かつ現地での関心の高さが窺えた前回から見ても、おそらく今回も成功することだろう。
日本の地方自治体が外国の都市と友好提携を結び、お互いに文化的・経済的交流をする。今までは、地方自治体による国際交流、というとそれしか思いつかなかった。「国際協力」を地方レベルでできるのか、という先入観が以前の私にはあったからだ。しかし今回のレポートを作成するにあたって色々調べていくうちに、その考えは吹き飛んだ。国にはできない、小さくとも住民の暮らしに直結している地方自治体だからこそできる「国際協力」がある。同じ目線で立てる、こうした地方自治体による国際協力は単なる援助だけにとどまらず、市民と市民が直接触れ合うことで顔の見える、「真の国際交流」の掛け橋にもなっている。それだけに相手を見下したり、やってあげる感覚の一方的な協力は事業(援助)そのものだけでなく両国の友好関係にも直接悪影響を及ぼしかねない。今後ますますこうした形の国際協力が増加していくであろう今日、担い手である地方自治体に対し、地域の特性を活かした多様な協力・対等な協力関係に基づく住民参加型の協力・そして相手地域の要請にあった極め細やかな協力への期待がより一層高まっていくことは間違いないだろう。
<参考ホームページ>
「友好の森02−1」http://www4.ocn.ne.jp/^minyurin/yokounomori02-1.html(04/01/14)
「友好の森02−2」http://www4.ocn.ne.jp/^minyurin/yokounomori02-2.html(04/01/14)
「Newschina」http://newschina.hp.infoseek.co.jp/00042301s.html(04/01/10)
「北海道庁ホームページ」http://www.pref.hokkaido.jp/menu.html(04/01/15)