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川村奈津美「栃木県の国際化推進計画」

 

 私が栃木県に住むようになって感じたことの一つに、「外国人が多い」ということがある。調べてみると、外国人の多さで全国のベスト10には入るほど特別多いわけではなく、2003年現在29,481人の外国人登録者がいることがわかった。隣の茨城県の47,012人や群馬県の41、818人に比べればさほどではないことがわかる。しかしそれと同時に、栃木県では外国人登録者の年々の増加に伴い、国際化社会に対応できる地域づくりを進めようとしていることも調べることができた。具体的にどんなことが行われているかに興味を持ったので、「とちぎ21世紀国際化推進プラン」と題されたその計画についてまとめようと思った。

 

まず、この栃木県の国際化推進の意義とは一体何だろうか。「国際化社会をたくましく生きる」というのがこの計画のサブタイトルである。そして、「県民参加ではなく県民主体」の国際化を目指すという。つまり、グローバル化する社会において県民一人一人が世界の一市民であることを認識し、異なる背景を理解しあって広い視野の中で生活すること、と言えるだろうか。世界には多種多様な文化や宗教、価値観が存在している。この栃木県に住んでいる外国人の人数も年々増加傾向にあり、ブラジル、中国、ペルーなど多数の国籍の人々が集まっている。互いに背景が異なることを認め互いに理解しあう国際理解は、相違点から生じる混乱や誤解を防ぐものとなり、様々な文化背景の人々が共生するのに資するであろう。これは栃木県民である私たち一人一人に関係してくることである。ではこの国際化推進プランとは具体的にどのようなものなのだろうか。

 

 この計画は2001年度からの五カ年計画で、1.国際理解教育の推進をはじめとする国際感覚豊かな人材の育成、2.外国人が親しみやすく、暮らしやすい地域づくりを進める世界に開かれた地域社会の整備、3.海外との友好交流や国際協力を進める多彩な国際交流・国際協力の推進、といった三つの基本方向が設定されている。1については、外国人との交流や海外派遣を通して県民の国際理解を深めること、国際理解教育や外国語教育の充実などの教育の推進が、2については、外国人のための情報提供や相談システム、日本語学習教室の充実などが、3については、外国人と県民の交流の機会を増やすことや、海外支援のための人材の受け入れ、派遣に力を入れること、県民によるボランティア活動や国際交流団体の活動の促進をすることが、提案されている。

 

 では、この国際化関連事業で実際にどのような活動がなされているのだろうか。1.人材の育成については、財団法人栃木県国際交流協会(以下TIA)により、国際理解のために“とちぎ国際セミナー”や国際体験学習(小学生、高校生を対象としたクラブ活動)が運営されている。また、教育に関しては、学校の「総合的学習の時間」等で用いるための国際理解を目的としたビデオの作成や、中学、高校における英語教育の充実のための外国語指導助手の配置が特別に取り組まれた。その他には、警察職員に外国語研修を実施し、語学能力を備えさせて国際社会に対応させることなどもあった。2.外国人が住みよい地域にするためには、日本の制度や習慣など生活に必要な情報をインターネットにより外国語で提供することや、国際交流相談事業の助成、また、精神保健相談事業として外国人の心の悩みに関する相談に対応するため精神科医や臨床心理士を相談事業に派遣することがなされている。地域づくりには、外国人がわかりやすいように公共施設などの外国語表記の普及、道路標識にローマ字を表記すること、外国語による栃木県紹介のためのパンフレット作成やホームページの活用などが含まれている。3.国際交流では、地域における国際交流活動の契機とするための中国やアメリカなどの友好提携先地域との交流活動の推進(交流員の派遣・受け入れ、大学生受入事業など)がなされており、国際協力の面では、海外移住者援護事業として留学生の受入や日系人子弟の短期研修生受入、また留学生支援事業などが行われている。さらに、県民の国際活動推進の分野においては、TIAの事業に協力できるボランティア団体の募集・登録、国際交流情報などを掲載した機関紙の発行などが行われている。

 

 国境のボーダレス化が進む現代社会で、在住する外国人と上手に付き合い共生していく事、互いに住みよい環境を作ることは必要不可欠なことになっていると私は感じる。そのために、ここ栃木で多数派の日本人も、相手の文化や価値観について学びそれを認識考慮することは、国際社会で最も大切なことであろう。国際体験学習などの国際理解教育、そして英語教育の充実、さらに在住する外国人のための街づくりなどが計画実行されているが、これらの内容の充実に加えて、対する県民の認識がさらに増してゆくことが栃木の国際化の成功につながると私は感じた。2002年度の「外国人も暮らしやすい地域づくりアドバイザー会議報告書」に載せられている外国人の声には、自分たち外国人に興味を持って知ってほしい、交流の幅を広げたい、ということがあった。日本人の中には外国人に無関心な人が多い、外国人をお客様や見せ物のような扱いをする人がいる、もっと地域の行事に参加したり身近な日本人と親しく付き合ったりしたい、という声もあった。確かに私たち日本人サイドには、相手を知ろうとする関心の態度や、地域住民の一員として迎えようとする姿勢が弱いのではないだろうか。これでは「県民主体の国際化」には程遠いかもしれない。いくつかの外国人実態調査によると、外国人相談事業や外国語による行政サービスの充実、日本語学習の促進を求める声が多かったが、この栃木県の国際化推進プランはそのような問題も含め、多方向に視点が向けられていてとてもいいものだと感じた。しかし、県民の「相手について知ろう」とする認識が、この計画の成功に足りない部分だと個人的に感じた。その思いが、国際化社会でたくましく生きるために一番必要なものではないだろうか。