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鮎ヶ瀬琢子「栃木県真岡市における市町村合併の現状と課題」
私が住んでいる栃木県真岡市は、日本社会は不況だ不況だと言われながらも次々と住宅が建ち並び、新しくスーパーや様々なお店もオープンするなど現在急速に発展している。今回地方自治論で市町村合併について学ぶまで、市町村合併とは人口が減り活気もなく衰退している地域がより発展した地域に吸収されるものだと思っていた私は、こんなにも驚くべき速さで発展している真岡市には「市町村合併」というものはまったく関係がないと思っていた。しかし実際は市町村合併とはただ弱者が強者に吸収されるだけのものではなく、真岡市にも合併協議会が設置されたことを知った。そこで今私が暮らす真岡市の市町村合併の現状や合併によって生じるメリット・デメリット、今後の課題について調べてみることにした。
平成14年5月9日に1市5町による「芳賀郡市行政事務研究会市町村合併研究部会」が設置された。まず真岡市とその他の市町村合併に関係する地域の詳細について調べてみた。
・ 真岡市 人口6.3万人 2万世帯 面積112
・ 益子町 人口2.5万人 7千世帯 面積 89
・ 芳賀町 人口1.7万人 5千世帯 面積 70
・ 二宮町 人口1.7万人 4千世帯 面積 55
・ 茂木町 人口1.7万人 5千世帯 面積172
・ 市貝町 人口1.3万人 4千世帯 面積 64
(平成15年1月1日現在)
これら1市5町で市町村合併が検討されていた。
合併パターン@ 真岡市、益子町、芳賀町、二宮町、茂木町、市貝町
A 真岡市、二宮町
B 益子町、芳賀町、茂木町、市貝町
C 真岡市、二宮町、益子町、茂木町
D 市貝町、芳賀町
しかし現在芳賀町は高根沢町との2町合併を目指して高根沢町の正式な回答を待っているところである。なので、真岡市、益子町、二宮町、茂木町、市貝町の1市4町での合併へ向けて1月1日に法定合併協議会を設置することが議決された。
私がまず思ったことは、はたして真岡市は本当に他の地域と合併する必要があるのかということだ。合併することによって考えられるメリットは次の通りである。
第一に、人件費の削減である。市町村合併により必要とされる議員数や役所職員数が減り、その分の人件費が浮くことになる。真岡市役所のホームページによると、1市5町の4役(市長・町長、助役、収入役、教育長)の人件費は、合併パターン@の場合は約2億1千万円、パターンAの場合は約4千万円、パターンBの場合は約1億3千万円の削減になるという。さらに1市5町の議員の場合は、パターン@で約3億7千万円、パターンAで約7千万円、パターンBで約2億2千万円の削減となる。それらの人件費は私たち国民が収める税金からまかなわれているものなので、人件費が削減されることで国民の負担も減ると考えられる。
第二に、私たち市民が利用できる公共施設が増えるのではないかということだ。図書館やスポーツ施設、医療施設など、その地域の人にのみ利用可能な場所や、その地域の人であればより安く便利に利用できる場所が増えて、私たちの生活がより豊かなものになると考えられる。例えば、真岡市の井頭公園にある井頭温泉は温泉の入浴料が700円であるが、真岡市民であれば500円で入浴できる。今は他の市民で700円支払っていても、合併後に同じ市民になれば500円で入浴できるようになるのだ。
第三に、市役所や町役場などが増えることになり、今まで一箇所でしか対処してもらえなかった様々な書類や相談などを、より多くの場所で対応してもらうことができるようになる。これまで市役所などでは1つの用事を済ますだけでも他に利用者がいれば駐車場はいっぱいでとめられなかったり、長く待たされたりしていたが、それらの機関が増えることで時間も短縮し今までよりも利用しやすくなるのではないか。
第四に、規模が大きくなり多種多様な意見、提案が集まることや、行財政が強化されることで行政サービスがこれまでよりも多様化し、より良いものへと変化する可能性がある。これまでなかった新しい施設や専門的な組織が生まれ、より高度なサービスを受けることができるのではないか。具体的には、私は現在自分の家でレポートができないので、休日にわざわざ40分かけて大学の情報センターまで来なければならない。もし真岡市内に大学の情報センターのような施設ができたら、何十分のかけて大学まで来る必要もなくなる。
では合併によって考えられるデメリットとはどんなものであるか。
第一に、合併する前の地域の間でサービスの水準や税金が異なる場合、値上げされることも考えられるということが挙げられる。都市計画税を例としてあげると、真岡市と二宮町は0.3%、芳賀町は0.2%であるが益子町、茂木町、市貝町では課せられていない。もし合併後に都市計画税が0.3%になれば、芳賀町は今までよりも多く税を取られることになり、益子町、茂木町、市貝町に至っては今まで払っていなかった税金を課せられることになるのだ。
第二に、合併する前の地域間の財政状況に差がある場合、良い方の地域にとって合併は不利になるのではないか。冒頭でも述べたように、真岡市は急速に発展していて財政状況も良いと考えられる。実際に総務省の公式ホームページで2000年の財政力指数をしらべてみると、栃木県は0.51で全国13位、真岡市0.85で県内ベスト5、芳賀町0.89でベスト4、市貝町0.61、益子町0.49、茂木町0.45、二宮町0.40はワースト6であった。真岡市と二宮町のようにこれだけの差がある地域が合併した際に、財政状況の良い地域、つまり真岡市民から不満の声が出ることは避けられないであろう。
第三に各地域それぞれの歴史や文化、伝統が失われていくのではないかという不安がある。この1市4町においては、特に益子町は古くから益子焼が全国的に有名で、陶芸家の中から人間国宝が誕生したほどである。市の財政力指数が県の財政力指数を下回っているとはいえ、現在でも全国各地から観光客が訪れている。私たちは益子市民であるというような誇りと言うかプライドのようなものが強くあるだろう。実際に芳賀郡市の市町村合併研究部会が昨年12月に1市5町に対して実施したアンケートによると、合併の必要性を感じないと答えた益子町民が38.2%で二位であり、その理由が「歴史、文化、伝統などの市・町の個性が薄れる恐れがある」というものであった。また、真岡市民の私としても合併により今までの名称が変わってしまうことやなくなってしまうことへの抵抗はある。
第四に、合併後に中心部のみが発達して周辺部がより衰退してしまうのではないかという可能性がある。このことは、先ほどのアンケートにおいて、茂木町民が合併の必要性を感じないと答えた理由であった。
今まで挙げてきたメリット、デメリットだけではなく、市町村合併によって生じる問題はまだまだ数多く存在するであろう。ではそのような問題を抱えて、今後どのような対策をすべきか。
まずは何よりも市民・町民の市町村合併に対する関心・知識を高めることである。先ほどのアンケートで合併について関心があると答えたのは1市5町で59.5%、真岡市が55.6%でワースト1だったという。真岡市は関心がないと答えた人も43.9%でワースト1だった。また真岡市民は合併の必要性についても最も低い数字を残している。逆に二宮町は合併に対する関心も必要性も最も高い数字を残している。いかに二宮町民が合併を望んでいるか、それに対して真岡市民は無関心であるかがはっきりと現れている。
次に、先ほどデメリットとして挙げられた問題点、不安が解消されるような対策を早急に練ることである。繰り返しになるが、合併によって生じると考えられる問題は上記の4点にとどまらない。メリットとして挙げていた必要とされる議員・職員数の削減でさえも、人件費が浮くという点ではメリットであるが、それだけの人が職を失うと言う点では重大な問題である。合併後も市民・町民が安心して暮らせる新しい町つくりが求められている。
参考資料
・ 真岡市役所、二宮町、芳賀町、益子町、市貝町、茂木町役所ホームページ
・ 総務省公式ホームページ