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阿部真理子「若者に生じる公的年金制度への不信感」

 

昨年度の国民年金で、二十歳代の保険料納付率が五割を切ったと今月13日の読売新聞で報じられていた。納付率のあまりの低さに驚くと同時に、そうなるのも仕方ないのではないかと思う気持ちがあった。二十歳を超えたら国民年金の保険料を国に納めるのは、私たちの義務であるが、実際に自分も学生納付特例制度を利用して、現在は保険料を納めていない。この学生納付特例制度は、平成124月からスタートしたもので、大半の学生は所得がなく、保険料を本人が納めることが困難であることを考慮して、社会人になってから保険料を納めることとした制度である。学生という身分の元、納付を免れているが、同世代で増え続けているフリーターや、この不況の中少ない給料で働いている社会人らにとって、月額13,300円を毎月必ず国に納めなければいけないというのは、けっこうな負担だと考える。さらに会社で働いていれば、それに上乗せで厚生年金の、公務員だったら共済年金の保険料を負担しなければいけない。それに所得税などの様々な税金が課せられることを考えると、納税の義務に押しつぶされてしまいそうな気になる。

国民年金納付率の低さに納得した背景として、公的年金制度への不安と不満がある。国民年金、厚生年金、共済年金の公的年金制度は、少子高齢化に伴って保険料の負担が今も、そしてこれからもますます増える一方で、給付水準が引き下げられていく。これによって、世代間で受け取る金額に大きな差が出るという事実は漠然と知っていたが、具体的な差額を知って、唖然とした。厚生労働省が昨年11月に行った試算[]によれば、厚生年金に加入していた現在の高齢者世代は、一生に払った保険料の4倍以上の年金が受給できるという。私たちの祖父母の年齢、例えば現在70歳であれば納付した保険料が1380万円でも受給額は4.1倍の5600万円になる。一方で、これから生まれる世代は、平均寿命まで生きたとしても、受給できるのは、払った保険料分をやや上回る金額だけだという。現在0歳であれば、保険料が15800万円で受給額は1.2倍の18200万円にしかならない。私たちの世代であっても、受給率は納付額の1.2倍だそうだ。もはや不公平だとしか言いようがなく、さらに受給できる年齢が60歳から65歳に引き上げられたことも考慮すれば、納める気力がなくなってしまっても仕方がないと思う。

 この格差が生じた原因は、現在の高齢者が払った保険料が今よりも少なかったことにある。厚生年金の保険料率は、現行で年収の13.58%だが、1948年日本は敗戦後で国民も疲弊していたことから、月収のたった3%に設定されていた。その月収の3%しか保険料を納めていない高齢者は、すでに大部分が納税し終えているので、今後の保険料率引き上げの影響を受けることはない。彼らが若いころは公的年金の制度が充実していなく、そのなかで彼らが戦後頑張って働いてきて今の日本社会が作られてきたことは、承知できる。

しかし時代は変わり、経済状況は悪化して、私たちの世代には「就職難」という形で、親の世代には「リストラ」という形で不況の刃が向かれている。それなのに、戦争功労者、戦後の経済成長功労者という括りで、今の高齢者だけを優遇するのは納得がいかない。経済界や財務省からは、「高齢者が受給中の年金についても聖域とせず給付抑制の対象とすべきだ」という意見も出ているようだが、その意見には大賛成である。厚生労働省にはこの意見を是非聞き入れてもらいたいと思うが、減額すれば高齢者の不安が強まることが予想されているために、実現は困難だとされている。私たち若い世代の公的年金制度へ対する不信感を少しでも解消するために、国には受給額の格差を少しでも埋めるための措置をしてほしいと願う。

 

 

 

【参考文献】

 

「追跡 年金改革」(『読売新聞』2004113p.14p.15

 

 

【参考ホームページ】

 

「年金財政ホームページ」

http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/zaisei/02/02_00.html

 

「学生の皆さん! 注目! 学生納付特例制度について」

http://www.sia.go.jp/info/topics/student.htm

 

「厚生労働省」

http://www.mhlw.go.jp/

 

「国民年金基金です。」

http://www.npfa.or.jp/

 



[] 厚生年金の最終的な保険料率を18%と想定して試算。年齢は2005年の時点。