Usuih040119

臼井浩子「地方議会と会派」

 

地方議会は都道府県や市町村といった地方自治体単位に設置される議会であり、われわれ市民にとって、首都・東京に設置される国会に比べ身近な存在であるはずである。しかしながら、実際はどうであろうか。テレビニュースで連日のように報道される国会に比べ、地方議会のニュースはテレビではなかなか報道されない。自主的に情報を得ようとしない限り、知ることができないのが現状であり、その点において、地方議会とは国会以上に市民にとって遠い存在であるといえる。地方議会とは実際にどのように運営されているのか。地方議会における需要なアクターである会派という単位から考えてみたいと思う。

はじめに、会派とは何か、その辞書的意味を確認しようと思う。辞書によると、会派とは主義・主張を同じくするものによって作られた派閥や団体であるとされている。インフォシーク-:大辞林(国語辞典)実際に宮城県K市議会を例にどのような会派(構成と特徴)があり、どのような役割を果しているのかについて、K市議会議員・A氏のインタビューを参考にまとめることによって、会派の実際に迫ってみたいと思う。K市の人口は6万人弱で市議会議員数は27人となっている。議会内には4つの会派が設置されている。それぞれの会派をその構成人数、平均任期数、平均年齢、系統の順に書く。A会派は5人、1.8期、50.2歳、保守系、B会派は3人、3.3期、63歳、社民系、C会派は6人、1期、47.8歳、保守系、D会派は、4人、3期、64.7歳、保守系という構成になっている。実際に議会において会派は、会派単位で行われる代表質問を行ったり、複数名での提案が必要とされる条例提案、会派単位に支給される政務調査費を利用して研修や勉強会などを行っている。会派単位で動くことによって、会派単位でしか認められていない権利を行使できていることがわかる。議会単位で議題を提案し、議論、決議するというプロセスにおいて会派というグルーピングがそれらのプロセスを円滑に進めているという面もある。また、会派を組むことは、議員としての主義・主張を実際に実現するための優位な環境づくりであるという側面が大きいように思える。多数決の原理で議案を採択する議会において、もちろん会派は大きな力を発揮するし、それだけではなく、議案を提案する機会もより多く与えられる。また、各委員会などでのポスト配分においても存在感を示せる。当局(行政側)に対する要請、話し合いにおいても、会派で行うことで、より多くの民意を反映した意見=より実現すべきであるというプレッシャーを持った意見というイメージを与えることとなる。その他にも、会派内での意見交換により、情報が得やすいことや、一目置かれるグループとして外からの情報も入りやすくなるという点が指摘できる。

以上のことをまとめると会派とは、主義・主張を同じくするものによって作られた集団であり、政策立案やその提案、議論、決議においてその数の利をいかして、その主義・主張の実現を目指す集団であるといえるだろう。しかしながら、ここである1つの疑問が浮かぶ。K市の各会派の内、ACD会派は同じ保守系会派である。特に、AC会派は平均任期、平均年齢においてもほぼ大差はない。主義・主張が同じ、もしくは、似通っているのであれば、協力することでより一層、数の利をいかせると考えるが、なぜ、それぞれ別々の会派を組んでいるのであろうか。各会派の構成議員の地盤を調べてみようと思う。大都市圏の近年の傾向とは異なり、地方での地盤という概念には根強いものがある。まず、A会派はS地区、O地区、H地区、F地区、M地区、C会派はS地区、O地区、m地区、H地区、K地区、K地区となっている。(M地区とm地区は別々の地区を意味し、そのほかのアルファベットの地区は1アルファベット、1地区を意味する。)このことから、A会派とC会派の実に、半数以上の議員の地盤が被っていることがわかる。したがって、会派とは主義・主張を同じくするものの中でも、とりわけ基本的に選挙の際に有権者を奪い合わないもの同士によって作られた集団であり、政策立案やその提案、議論、決議においてその数の利をいかして、その主義・主張の実現を目指す集団であるといえる。

今回の調査と、インタビューで、会派という議会におけるアクターの役割や成り立ちを知ることができた。このことで実際に地方議会がどのように運営されているのかということの一面に迫れたと思う。会派とは、議員による、政策立案集団であり、政策実現集団である。しかしながら、その一方でそのグルーピングは選挙に関する利害関係を意識したものとなっており、純粋に政策立案、実現集団とはいえないようだ。