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亀澤伸也「宇都宮市における市町合併に対する自治体職員の役割」

 

「平成の大合併」といわれる中、合併特例法の期限である平成17年3月に向けて全国各自治体の再編が加速している。私が勤務する宇都宮市も例外ではなく、平成15年6月に宇都宮地域合併協議会を発足させ、現在上河内町、河内町、上三川町との1市3町での合併に向けて、市町合併推進室を中心に各種事務事業の調整、市町建設計画の策定等に具体的に着手しているところである。市町村合併は住民自治の思想のもと、地域住民がその必要性、妥当性を考察しながら進めていくことが重要といわれている。1年後に合併期限を迎える宇都宮市において現在の住民意識・自治体職員意識を整理し住民対自治体職員のあり方及び自治体職員間のあり方について、宇都宮市職員としてどのような方法が必要か考察する。

住民が行政に関して非常に関心を持つべきものは何か?戦後の混乱期を経て急速に経済発展を遂げてきた日本。高度経済成長期には個人の所得は激増・生活水準が上昇し、現在においては個人尊重が重視される中、大多数の人は、私生活に直接かかわりのあるものいわば肌で感じられる事業であると考える。たとえば、「毎日の通勤路が拡幅工事され、交通渋滞がなくなり移動時間が短縮されよかった」「制度融資により、新規事業の支援が受けられた」「健康保険税の納付書が手元に郵送され、金額の高さに驚いた」などさまざまなことを挙げることができよう。では、このレポートの主旨である市町合併の影響についてはどうか。合併される前に想定されることいったら「町名が変更され不便に感じる」「本庁舎が遠くなり不便に感じる」など毎日の生活に関係するものは少ない。特に編入合併の元締めである宇都宮市においては、政令市を目指して等将来のメリットは分かるものの直接現在の市民生活に変化をもたらすものは少なく、市民の関心も他町に比べ小さいものになっていると感じる。

では自治体職員はどうか?人口規模40万を越す宇都宮市と3万人程度の河内町、上三川町さらには1万人を切る上河内町の制度の違いは多岐に渡る。1市3町で合併する場合、現在行っている事務事業の調整には2000以上あることが判明している。現在「合併の方式」「合併の期日」等重要事項24項目のうちについては合併協議書を取り交わすため、重点的に協議されると考えられるものの、その他細部については末端自治体職員が調整、策定していかなければならない。通常業務を行いながらの合併検討では、どうしても職員には負担がかかってくる。いままで培ってきた行政手法の違いの調整や職場風土の違い、労働条件の違い(賃金格差)等を考えると多くの不安が付き纏い、率先して合併しようとする動きにはなりにくい。かく言う自分も地方自治論を聴講する前までは、大いに討論してよりよい市政を作り上げてもらいたいといったいわば他人だよりな考えであった。

これらのように市民・自治体職員双方とも合併のメリットが感じられない人も存在する点が問題点として指摘される実情がある。多様化する住民ニーズに対応するための地方分権の推進が必要であり、国にとっても重要な施策となることから、やはり合併による地域自治体の能力強化は必要であるからだ。さらに合併するにあたり、合併特例法の期限まであと1年あまりという短い期間で検討しなければならない原状が問題であろう。とくに市町建設計画が策定されるまでは,ある程度自治体が積極的に住民に情報提供し合併の必要性を説くべきである。そのためにはまず住民に直接接する自治体職員の啓蒙が必要である。職場内においても、現段階では合併の必要性については広報誌等を頼るのみであるが,私としては合併するメリットとして目先の「アメ」である合併特例債の使途について考えをめぐらせてしまう。法定の協議会で結論付けられると思うが、早急に政治的、行政的結論をつけるべきである。そうすれば職員も動けるし、合併の機運が高まり、宇都宮合併協議会における地域自治制度構築基本方針に示すような、住民への説明も興味をもち始めるのではなかろうか。

次に1市3町による自治体職員間の交流も重要となってくると感じる。現在のところ私の職場では自治体間の職員の交流はない。税金分野に配属されているが、租税法律主義である以上、自治体間の運用の差はないに越したことはないが、税分野における職員数150人以上の宇都宮市では、課税・徴収分野を分けることができるため専門知識を持つ職員が育つ土壌であり、上河内町のように配置人数の10人程度であると多岐に渡る知識が必要とされる職員が育つ土壌となるため、住民に対する接し方には大きな違いがでてくることは大いに予想される。ほかの部署でも同様であろう。制度上の制約は紙面上解決することができるが、自治体職員の能力については研修・交流といった時間のかかる地道な作業を要する。いち早く住民サービスの平準化を図るのであれば、いち早く各部署における職員間の交流の場(研修会、協議会等)を設けることが必要となると考える。

最後に合併の諸問題を検討するときに、自治体職員も地域住民であることには変わりがない。それは自治体職員がイニシアチブを取ったからといって直ちに住民の考えを無視したことにはならないと考える。むしろ代弁者として合併後の住民自治構築者として果たさなければならない責任は重い。