yamadam000163  「地方自治論」 レポート

「中空知広域市町村圏組合〜市町村合併をめぐる動きの中でこれからの展望と課題〜」

                                   k000163M 山田実穂

 

1.はじめに

  地方自治論のレポートを書くにあたって、自分がやりたいと思ったのは、私が住んでいる町、北海道赤平市のことであった。赤平市は特出した産業も芸能も持たない、平凡で、過疎と高齢が進む北海道の町の典型的な例のような町である。しかし私の生まれ育った故郷。もっと自分自身でも知りたい、そして少しでも赤平市のことを知ってもらいたい、という気持ちで赤平市に関連することをテーマにすることを決めた。

「市町村合併」に目を向けるきっかけとなったのは昨年の11月。北海道にインターンシップで帰省していた際、父が市の主催する市町村合併に関する講演会に出掛けて行ったことに端を発する。地元紙である北海道新聞でも連日合併問題が取り上げられており、北海道各地で合併に関する動きが活発化していた頃であった。「へぇー、赤平市も合併?!合併論は北海道だけではなく、むしろ全国各地の方が盛ん。その流れに赤平も乗るのかー」というのが当初の感想であった。しかし、合併が進めば赤平市自体が無くなる可能性もある。それはまずい。自分の故郷が地名としてでも無くなるのは小学校だけで十分だ(出身校である住吉小学校は平成6年に廃校、近くの小学校と統合)という実感がフツフツ。よしよし、住民票を移していない私はまだまだ赤平人。この機会に合併の件、しかと見届けようではないか!!そのような背景のもと、赤平市が属している中空知広域市町村連合の合併論を考えるに至った。

2.合併をめぐる動きと中空知広域市町村圏の現状

  90年代は「地方分権の時代」と呼ばれるように、さまざまな計画が進行し、また法整備も行われた10年であった。その中で市町村合併論は水面下では存在していたものの、国の機関委任事務を廃止し、地方自治体・地方公共団体へ権限委譲を行う際に、一気に確立化してきた問題であるように感じる。その流れを受け、1999年7月に地方分権一括法が成立し、市町村合併特例法(市町村の合併の特例に関する法律)も改正された。同年8月には、自治省による「市町村合併の推進に関する指針について」、都道府県は「市町村合併推進要綱」が策定されている。

合併論が台頭してくる中、市町村をとりまく状況は、地方分権の時代を迎えて市町村に期待される役割が増えた反面、圏域の発展を目的とするのではなく、厳しい市町村の財政状況(公債費の増大、地方交付税の見直しによる減付など)がさらに悪化するだろう予測のもと合併へと加速度が増したとも言える。また、少子高齢化、さらには死亡数が出生数を上回り自然に人口が減少していく自然減社会が到来していることも合併論に拍車をかけているだろう。

現に「赤平市」は人口15,572人(平成14年12月31日現在、以下同様)で、全国で1万人以上2万人未満の市、12市ある中で下から4番目に人口が少ない。日本で最も市として人口が少ないのは、後に挙げる中空知広域市町村圏内の「歌志内市」で人口5,846人である。この市は2番目に人口が少ない「山田市(福岡県:人口12,679人)」と姉妹都市を締結している。3番目と4番目に列挙している三笠市(人口13,609人)と夕張市(人口14,794人:平成14年6月30日現在)はいずれも北海道にあり、中空知地区の隣の南空知ふるさと市町村圏組合に属している。

3.中空知広域市町村圏組合の概要

(1)中空知広域市町村圏組合とは

中空知5市5町村(赤平市、芦別市、滝川市、砂川市、歌志内市、奈井江町、上砂川町、浦臼町、新十津川町、雨竜町)によって構成される特別地方公共団体であり、 介護保険の広域連合や消防、上下水道の一部事務組合などさまざまな形で広域行政が行われている。

今回、中空知5市5町の首長による「中空知地域づくり懇談会」の中で、合併を前提としない、中空知を一つ地域として考え、地域の現状を分析し、従来の枠組みとは違う新たな可能性と目指すべき方向性を『中空知グランドデザイン』としてまとめられた。

(2)名称・組織

組合の名称     中空知広域市町村圏組合

組合の事務所所在地 〒073−0032

北海道滝川市明神町1‐5‐29 広域生活総合センター

TEL 0125‐22‐1226

4.中空知広域市町村圏(通称:中空知)の概要

(1)背景

昭和44年に赤平市、芦別市、滝川市、砂川市、歌志内市、奈井江町、上砂川町、浦臼町、新十津川町、雨竜町の5市5町が広域市町村圏として設定された。

   そもそも広域市町村圏とは、平成3年に広域市町村圏と大都市周辺地域広域行政圏の両者を「広域行政圏」と総称することとされた広域行政圏の一種である。広域市町村圏は、圏域人口が約10万人以上であり、一定の要件を備えた日常社会生活圏を形成し、または形成する可能性があると認められる圏域をいい、昭和44年に設定されている。また、大都市周辺広域行政圏は、圏域人口が約40万人程度の規模であり、地理的歴史的または行政的に一体と認められること等の用件を備えた圏域をいい、昭和52年に設定されている。

平成14年3月31日現在、北海道内の広域行政圏は「中空知広域行政圏」を含め、20広域行政圏が形成されているという。

(2)地勢

空知という地名の由来は、アイヌ語の「ソーラップチ」が語源とされている。「ソー」は「滝」、「ラップチ」は「くだる」という意味である。

北海道の中央部よりやや西方に位置し、東西約70km、南北180kmに及ぶ広大な内陸地帯の空知支庁の中央に位置する。中空知の面積は約2000k㎢であり、東京都全体の面積に匹敵。国定公園や道立自然公園北海道こどもの国のような緑豊かな山間地帯、実り多き田園地帯にゆったりと流れる石狩川、空知川がある。広い圏域内には、JRや高速道、国道が一応、走ってはいて、札幌圏や旭川圏との節足点であり中心地は交通の便が良い条件をかねそろえるところもあるにはあるが、不便なところはバスが通らないところもあり、千差万別。

(3)気候

温暖、低温の両面を併せ持ち、寒暖の差が大きい。雨は夏から秋にかけて多く、冬は気象変化の激しいことが特徴。特に中空知地方は大雪に見舞われることが多々あり、冬は除雪の問題が頭を悩ます。

(4)人口

圏域内の人口は現在約13万人であり、自立した地域として成立を目指している。全国的な少子高齢の傾向に加え、大都市への若者の流失などにより人口の減少が進む社会減に加え、自然減も顕著になりつつある。

赤平市:15,572人(平成14年12月31日現在 以下同様)

歌志内市:5,846人

芦別市:20,585人(平成14年6月30日現在 以下同様)

滝川市:46,870人

砂川市:20,855人

奈井江町7,344人

上砂川町:5,065人

浦臼町:2,658人

新十津川町:8,031人

雨竜町:3,477人

(5)産業

かつて日本の経済成長を支えた国内炭の需要が減り、炭鉱閉山(赤平炭鉱もその一つ)が相次ぎ、地域経済に大きく貢献してきた基幹産業を失った。その後は、地域の基幹産業である農業も従事者の高齢化や離農、海外からの農産物の輸入の増大により、大きな影響を受けている。

(6)財政・公共施設

人口減少や景気の低迷などにより、歳入の伸び悩みが期待できない中、公共施設、維持管理、高齢化や環境問題への対応など行政経費の増加が見込まれ、財政状況は厳しさを増している。

   医療施設や公共施設などは類似施設が多く、老朽化も進んでいるため統廃合を検討すべきとの声もある。

5.市町村合併のメリット・デメリット

  メリットとしては、行政の効率化、行財政基盤の強化、公立施設の広域的・効率的配置、専門的知識を持った職員の増強などが言われている。しかし、メリットとして掲げられているこれらは、合併推進論者の机上の理論に過ぎないように感じる。実際、施設の統廃合や人件費の削減など経費の効率化は図られるかもしれないが、市役所や支所が遠くなり、手続きの複雑化やサービスの低下が考えられる。この地域は特に高齢者が多く、自力で行けない場所に設置されてしまうかもしれないことを懸念する声が多いだろう。その他にも、町から小規模村へと地区転化が起きたり、零細地域産業がさらに衰退してしまう可能性なども挙げられる。

しかし、財政面で合併による優遇措置が受けられることもあり、賛否両論を要す。ここでの優遇措置とは、合併後の地方交付税を10年間、合併前の各自治体の合算金額で支給されるというものである。優遇措置がなければ、一自治体としての交付税しか支給されないのだ。だが、ここで気をつけなければならないのは、合計額が10年間全額保証されることはないということである。交付税といえども、景気動向によって見直しも図られるからである。けれども、一自治体だけよりは多く交付されると考えていいだろう。もう一点、合併特例債の発行も認められている。これは自治体の財政の95%まで公債で賄ってもよいということだが、使い道を間違えるとこれによってますます借金が大幅に増大してしまうかもしれない。

現在注目すべき点は、合併特例法は平成17年3月までの時限立法であることだ。それまでに優遇措置をめぐって合併の是非を各自治体は決定しなければならない。実際には1〜2年間の準備が考えられることから、今年中には全国的に各地で合併論が急進することだろう。期限の延長を囁く議員もいるようだが、それが嘘か真か、単なるリップ・サービスなのかは定かではない。合併論は今年中に山場を迎えると言える。

6.将来展望と課題

  私個人としては合併論には反対である。財政が厳しいからといって生まれ故郷の赤平市が存在しなくなるのはとても悲しい。現在、中空知広域市町村圏連合は合併せずに地域統合の動きを強める『中空知グランドデザイン』を提唱している。

しかし、時代の流れとともにやはりこれからは互いに協力し合って生きていかなければならないのかもしれない。実際、地域に密接に結びついているJA:農協は今年度、中空知地区で合併し、「JAたきかわ」として生まれ変わった。このまま、合併をせずに単独で行政を司っていても、やはりいずれ国から合併勧告を受ける、もしくは周辺自治体に吸収合併されてしまう(滝川市が妥当)ことになり、赤平市自体が残らなくなってしまう可能性が強い。それなら、赤平市の要望も採り入れてもらえるかたちで合併するのも悪くもないのではないかとも感じる。それは赤平市民だけでなく、芦別も砂川の市民も同じ想いであろう。

わたしの住んでいる地域には未だ上下水道が整備されていない。飲み水は地下水で賄い、金気に悩まされている。排水は一応浄水した後排水溝にそのまま流すしかなく、トイレなどの汚物はバキュームーカーに回収してもらう。この授業の中で、地方分権を推進するにあたって個性豊かな地域社会の形成のためには、国は全国画一的なナショナル・ミニマムを達成し一定の水準に到達したのだから、その後は自治体に委ねる(中間報告から)という目的を学んだが、それは都市部だけであって過疎地域では実現されていないことを強く叫びたい。

このように、合併はその地域に住む人々にとって一生の問題なのである。財政的な優遇をちらつかせて急速な合併をはやし立てるのは得策ではない。各自治体は合併するにあたり、多大なリスクを背負いながらも地域の活性化や人口の増大、まち自体の再生を図ろうとしている。国も地方分権を真摯に受け止めなければならないし、また私たち市民も積極的に身近な問題と捉え、個人としてまちに対して何を貢献できるか考えていくべきである。

合併しか道がないわけではない、合併は選択肢のひとつなのだから。

<参照サイト>     

総務省 合併相談コーナーHP

http://www.soumu.go.jp/gapei/index.html

NAKASORACHI探検隊HP

http://www.nakasorachi.com/

空知支庁HP

http://www.sorachi.pref.hokkaido.jp/marugoto/marugoto.htm

南空知ふるさと市町村圏組合HP

http://www.ms11.or.jp/

札幌広域圏組合HP

http://www.kouiki.chuo.sapporo.jp/index.html