2002年後期地方自治論レポート negamiu030114

「ペット増加による地方自治体と飼い主の関係」 k000139c  根上詩子

 

「ペット」― 私たちの生活で、より多くの人に求められている存在となった。近年流行している癒しという流行の風にのったことで、今では一人暮らしの人から世帯持ちの人々まで、たくさんの人々がペットショップへ足を運び自分の気に入った動物を探している。ペットの定番といえば昔から犬や猫だが、最近ではより個性的な動物も人々に求められている傾向にある。飼い始めたからには生涯飼育を約束するのがペットを飼うにあたっての常識、ところがこのごく一般的な常識でさえも守ることのできない人たちがいる。ペットブームが上昇してくるにつれ、流行遅れの動物たちは次々と捨てられていくようになったが飼い主はその後、動物たちがどのようなことになっているかを知らない。そこで私は、栃木県宇都宮市の自治体と飼い主の関係について考えてみたい。

 

1 「動物」・「行政」つながりの起点〜現在まで

 そもそも動物は家畜や猟犬などとして飼われていたが、共に生活をすることで動物は人の生活において重要な位置を占めることとなった。そこで、昭和48101日に「動物の保護および管理に関する法律」(動管法)が公布され、人は動物に対する意識の変化が求められた。この動管法の中身は『動物虐待の防止、動物の適正な取扱い、その他動物の保護に関する事項を定めることにより、国民の間に動物愛護の精神を芽生えさせ、生命尊重、友愛及び平和の情操を築かせるとともに、動物管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止すること』を目的としている。これにより人の動物に対する意識は大きく変わり、精神の豊かさを引き出せることが可能となった。ところがこの動管法は動物の命を保護するには完全なものではなく、人間の精神の豊かさを引き出すための「モノ」として扱われている。結果、人の意識は大きく変化したものの、近年では流行のペットを飼うことがブームとなり、流行が終わると捨てられるという「使い捨て」の状態になっている。また、飼い主の中には動物虐待、飼育放棄をする人が増え、数年前から深刻な問題が表面化されている。そこで、問題に歯止めをかけるため、平成1112月に改称され「動物愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)となった。改称になった理由は「保護=世話をする」ということに対し、「愛護=動物を愛する」という言葉の違いを明確にするためだ。また、内容も改正され、動物を「モノ」として見ていたところを「命ある存在」に見直し、飼い主の責任で動物を適正に飼育、健康・安全の管理に努めることを新たに追加した。さらに営業しているペットショップでも、動物取扱い業の届け出や購入者への適切な説明を義務化、業者の実態調査や立ち入り検査を行う動物愛護担当職員の設置を定めた。そして一番大きく改正したのが罰則の強化だ。動管法では動物を虐待したり殺したりすると3万円以下の罰金または科料であったが、動物愛護法ではみだりな動物愛護の殺傷には100万円以下の罰金、または懲役1年以下の刑。愛護動物に対し、みだりに水や食事を止めることにより衰弱させる等の虐待を行った場合や、遺棄した場合には30万円以下の罰金が課せられるようになった。この法律改正により動物はより人間と同等の扱いを受けられるよう近づき、また、人も動物を飼育していく際のあり方を考えさせられるようになったと言える。

 

2 地方自治の関わり・現状《栃木県宇都宮市》

 地方自治体で動物に関わっている機関は2つある。「宇都宮市保健所生活衛生課」と「栃木県動物愛護指導センター」だ。保健所では、犬猫の飼い主に正しい飼育の仕方や注意を促し、管理を行っている。飼い主に犬の登録や狂犬病の注射を義務付けることで、ペットとしての動物を安全に飼育していける環境を作っている。また、不妊・去勢手術の一部費用の補助も昨年から行っている。補助金も犬の雄で3000円、雌で5000円、猫は雄が3000円、雌が4000円と大体費用全体の半分程である。その他には犬猫の死体引き取りも行われている。有料事業として行われているが、アパートなどの共有生活をしている人たちにとっては助かる行為といえるが、私は宇都宮市のこの扱いはまだ意識が低いのではないかと思う。なぜなら、他の自治体を見てみるとより意識が高いことをうかがわせる設備が整っているからだ。他県を取り上げてみると有料事業は変わらないものの、保健所がゴミ処理施設と共同で動物の死体焼却をしてくれる。ゴミ処理場という場所には疑問が浮かぶが、そこには動物専用の焼却炉が設置されており、焼却後の骨の引き取りも希望すれば行うことができる。また、最近ではペットの斎場もあり、人間と同様に焼却から納骨、墓場の設置までを行ってくれている業者もたくさん見受けられる。一方、動物愛護センターでは栃木県内の保健所または動物愛護センターに保護・捕獲された犬の中で子犬に限り里親を募集し、月1回譲渡会を開くことで動物愛護を呼びかけている。しかしその反面、動物管理センターで殺処分を行ったりもしている。

 

3 地方自治体の限界と問題《殺処分》

 1で話したように、法律ができたことにより我々の精神は豊かになったが、流行のペットを飼うことがブームとなり終わると捨てられるという問題や動物虐待などが著しく増えた。動物愛護法という法律があっていくら改正されても結局は我々がペットと生活していく上でこの法律を意識することはなく、知っていたとしても人は都合のよい解釈をする。そのような考えが後を絶たず、ペットとして飼われていた動物は外に捨てられていき、今や動物管理センターへ持ち込まれる動物の8割がこの理由からだ。地方自治体としては全てを管理することができず殺処分という過程に行きつく。持ち込まれた犬猫は、飼育放棄された犬猫は即日、迷い犬でも3‐7日後には処分される。また、処分されなかったとしても実験払い下げとして動物実験を行っている関係機関に無料で引き渡している。近年では実験払い下げを廃止している自治体も多いが、栃木県は2003年4月より廃止することを決定した。つまり、現在はまだ行っているのである。栃木県の今までの動物実験払い下げ数は第5位。ペットとの付き合い方が見直されている現在にこのような記録があるということを知りつつ、地方自治はなぜ2003年4月という後にまで廃止を延ばしているのかがわからないところである。

 

4 地方自治体と飼い主の今後

 現状から考えると、地方自治体は各家庭から捨てられる動物の抑制と、動物愛護法に基づいた地方自治の運営を行えるよう配慮していかなければならない。しかし、個人も流行に左右されたペットの選び方、人に見てもらうことだけを目的とした飼育など、知らぬうちに欲求を満たすだけの人形となっていないか見直さなければならない。個人では地方自治体の殺処分を悪いことだと訴える人もいるが、地方自治体は個人の飼育責任に問題があると考え、結局は責任転換が続いている。このように責任を押しつけあうのではなく、お互いに動物にとって住みやすい環境を作る方向に向かっていけばよいと思う。何事も、話すことのできない動物を尻目に、人がさまざまなことを強いているということを心に留めておかなければならない。

 

 

<参照サイト>

宇都宮市役所:http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/

ペット愛好家:http://www6.plala.or.jp/nkib/topics-dog-totigi.htm

プラーナ:http://www.prana-japan.com/menu.htm

LIFEBOAT INFORMATION: http://www.lifeboatjapan.com/

動物実験廃止・全国ネットワーク:http://www.ava-net.net/action-news/top.html

Japan Animal Network: http://www02.so-net.ne.jp/~tamaco/index.html

動物愛護法:http://www5a.biglobe.ne.jp/~hiroko-n/hou.html