テーマ: 栃木県の主な市自治体における海外交流の現状と今後の動向 2003年 01月14日
990151M 武藤幸夫
1.
背 景
栃木県は人口約200万人を有する日本の中堅の県(平成12年度調査で頭から20番目に多い人口県)である。
栃木県南部における日々の人口移動、つまり都会への朝夕の通勤通学は日常的になっており、少なくとも栃木県南部地域は東京都ビジネス圏のベッドタウン化していると言えよう。この意味において、東京のグローバル化の一部を構成する環境下に入っているといえる。かたや現在のあらゆる分野でのグロバリゼーション(世界化)の中で、栃木県としても、東京商業圏の影響のみならず世界のグローバリーゼーションの影響をポジティブ(前向き)に生かしてゆくことが求められている状況にある。このような社会環境下で、栃木県内の主な市自治体も海外との交流が必然的に進みつつあると思われるため、この現状と今後について調査する。
2. 目 的
栃木県内の街を代表する市自治体が、現在どのような海外交流を行っているかを知ると共に、今後どのような方向(動向)に進めようとしているのかを把握する。
3.
調 査 対 象
下記栃木県内の7市自治体を対象として調査する。
1)宇都宮市、 2)栃木市 3)足利市 4)佐野市 5)鹿沼市
6)小山市 7)日光市
4 調 査 方 法
・ 海外交流の現状についてはインターネットでの調査を主体とし、必要に応じて電話等で聞き取り調査を行う。
・ 海外交流の方向性(動向)については電話を主体として調査する。
“電話調査のポイントとして下記項目を含める”
・今後の大きな動向・方向性、何らかの計画の有無
・実務者人事交流(例えば、1年間の専門職員実務交換など)
・お金(財政・予算)
・特徴
5.
各市自治体の海外交流の現状(各市のインターネットホームページ住所を含む)
1)宇都宮市
宇都宮市国際交流協会(1997年設立)が主体になって交流活動を行っている。
*組織: 協会専任メンバー(2人)と市役所出向メンバー(4人)―が主体となり、市民、企業や団体などのボランティアと協力して運営推進している。具体的には8つの部会(日本語、地域交流、学生、海外支援、通訳、ホームステイ、日本文化紹介、広報)で交流展開を実施している。
*主な活動内容:
・日本語講座開催
・会報発行(年3回予定)
・研修会開催(日本語講師養成、通訳、日本文化紹介など)
・地域在住外国人との交流(工場見学、ハイキング、料理教室、留学生との交流など)
・通訳派遣
・姉妹友好都市との交流(中学生・高校生・青少年の派遣、学生・研修生の受け入れ、訪問団の受け入れなど)
・ニュージーランドのマヌカウ市(姉妹都市):
提携日1982年2月24日、人口約24万、オークランド市のベッドタウンとして発展した市。
・中国のチチハル市(友好都市):
提携日1984年9月30日、人口約590万、黒竜省における第2の市。
・フランスのオルレアン市(姉妹都市):
提携日1989年5月7日、人口25万、パリの南方約115kmに位置している。
・アメリカのオクラホマ州のタルサ市(姉妹都市):
提携日1992年7月10日、人口約38万、オクラホマ州第2の市。
・イタリアのピエトロサンタ市(文化友好都市):
提携日1995年8月3日、人口約2.5万、ルネッサンス発祥の地(フィレンツエ)の西方約80km
に位置している。
* http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/bs/bs_kk/kb_kk_007.htm
* http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/bs/bs_kk/index.htm
* http://tia21.or.jp/dantai/dantai/021.html
2)栃木市
栃木市国際交流協会(1990年設立)が主体になって国際交流を行っている。
* 組織: 協会専任メンバー(1人)と市役所出向メンバー(秘書課の人が1人)が主体になって、市民、企業や団体などのボランティアと協力して運営している。
* 主な活動内容:
・情報収集提供・会報発行
・日本語講座開催
・地域在住外国人との交流
・市民訪中団の派遣
・研修事業(日本語講座、中国語講座、英会話教室、食文化体験交流会)
・民間交流団体活動支援
・友好都市との交流
・中国の金華市(友好都市):
提携日1990年1月、人口450万、上海の西南方約300kmに位置している。
・アメリカのインディアナ州のエバンズビル市
* http;//www.t-cnet.or.jp/~tochigic/profile/yuukou/yuukou.html
* http://tia.21.jp/dantai/dantai/107.html
3)足利市
足利市国際交流協会(1992年設立)が主体で国際交流を行っている。
* 組織:協会専任メンバー(2人)が民間、団体、企業などのボランティアと協力して運営している。市からの
出向者はおらず、あくまで民間主導型である。具体的には7部会の組織で展開している。
*主な活動内容:
・在住外国人との交流(クリスマスパーティー、ジュニアサマーキャンプなど)
・語学学習(日本語講座、外国語講座など)
・異文化理解(インドツアー、海の向こうの暮らしなど)
・ボランティア通訳、ホームステイの協力
・青年海外協力隊帰国報告会
・外交の窓inあしかが
・青少年の国際交流エッセイコンテスト
・アメリカンビレッジ
・友好(姉妹)都市交流
・アメリカのイリノイ州のスプリングフィールド市
・中国山東省の済寧市
* http://tia21.or.jp/dantai/dantai/001.html
* http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/ashikaga/kokusai/
4)佐野市
佐野市国際交流協会が主体になって国際交流を行っている。
* 組織: 協会専任メンバー(2人、内1人は市役所OB)が、市民や企業や団体などの
ボタンティアと協力して運営を実施している。
*主な活動内容:
・国際交流ニュースの発行
・外国人向け生活便利帳、ガイドマップその他の資料配布
・日中友好佐野市民訪中団体の派遣
・ランカスター市中学生ホームステイ受け入れ及び佐野市内中学生の教育交流派遣
・国際交流フェスティバルの開催
・日本語教室開催
・外交人の「海水浴」、「富士山ツアー」(内容は毎年変わる)事業の開催
・親善・姉妹都市との交流:
・アメリカのペンシルバニア州のランカスター市:
提携日19994年10月1日、人口 、アメリカで最も古い内陸都市のひとつ。
・中国のク州市(中華人民共和国セッコウ省):
提携日1997年11月11日、人口約240万人、自然身恵まれた歴史ある都市。
* http://www.sunfield.ne.jp/sanocity/02guide/htm/koryu.htm
* http://www.sunfield.ne.jp/sanocity/02guide/htm/sirankas.htm
* http://www.sunfield.ne.jp/sanocity/02guide/htm/sichugok.htm
5)鹿沼市
鹿沼市国際交流協会(KIFA・・・1989年設立)が主体になって、国際交流を行っている。
* 組織:協会専任メンバー(1人)と市役所兼務者(4人)が、市民や企業や団体など
のボランティアと協力して活動展開をしている。
*主な活動内容:
・交流交歓(鹿沼ワールドフェスティバル、各種交流事業の開催、諸外国訪問団受け入れなど)
・語学教室・講座(日本語教室、日本語教授法セミナー、英・韓・中・西語などの外国語会話教室など)
・情報収集提供(国際理解に関する図書、各国語ビデオ、日本語学習教材テープ、市民及び
在住外国人に必要な資料の閲覧貸し出しなど)
・人材バンクの活用およびボランティア活動支援
・関係の深い都市との交流
・中国の鉄嶺市:提携日1992年3月
・オーストラリアのアーミディル・ヂュマレク市:提携促進に向って展開中
* http://tia21.or.jp/dantai/dantai/040.html
6)小山市
小山市国際交流協会(1994年設立)が主体になって、国際交流を行っている。
* 組織:協会専任メンバー(1人)と市役所兼務者(3名)が、市民や団体や企業など
のボランテュイアと協力して活動展開している。3部会(事業、広報、研修)あり、会員が中心・主導して
ボランティア活動を展開するよう努めている。
*主な活動内容:
・広報出版(小山市国際交流協会ニュース)
・交流事業(外国人向け異文化体験事業、世界の料理講座、スポーツ交流会など)
・研修事業(日本語講座、フランス語講座、ハングル講座)
・サークル活動(スペイン語、中国語)
・友好都市との交流:
・中国の本渓市:
提携日1994年10月28日、人口約155万、遼 省中部に位置した美しい自然に恵まれた都市。
* http://www.city.oyama.tochigi.jp/kouryu/index.html
7)日光市
日光市国際交流協会はないが、民間の日光国際交流協会が2002年11月9日に発足した。
* 組織: 会長:イーストマン真理子さん、事務局長:高井考美さん
*活動方針:「観光案内のような表面的な交流ではなく心の交流を・・・」
* http://www.shimotsuke.co.jp/hensyu/news/colum02/021113c.html
6.
各市自治体の海外交流に対する今後の方向性(動向)など
1)宇都宮市
電話で話した結果、下記のような内容を教えてもらうことが出来た。
*今後の動向・方向性:
今まで国際交流協会としては協会、市(出向)そして市民・企業・団体ボランティアが協力して国際交流を運営
展開してきた。しかし今や地方自治はこれまでの中央集権型から地方分権型に転換しつつある。このことは地方自体
においても同様で、今まで何かというと行政(市)が絡んできたが、これからは個々の市民(企業・団体含む)が
出来ることは市民がやるということが求められて行く時代ニーズになってきている。従って国際交流も例外ではなく、
出来るだけ民間(市民・企業・団体などを含む)を主体にした(例えばNPO,NGOなど)運営活動に向ってゆくことが
必然的に求められてゆくだろう。しかしこれは“市民の声を第一に”検討・展開されることが必要である。つまり市民が
どう考え、市民でどこまで実践されるかがポイントになってくると言えよう。
*実務者人事交流とお金(財政・予算)については、世相を見て分かるようにとても余裕はない状況といえよう。
*活動内容の特徴・傾向としては、各会員(個人・団体・企業など)の主体性と各活動部門のバランスを考慮しながらも、今までよも対在住外国人にたいする交流活動に力点が置かれてゆく模様である。
2)栃木市
電話確認の結果、下記のような内容を得ることが出来ました。
*今後の動向・方向性:
栃木市の場合も大きな方向性としては宇都宮市と同様であるといえよう。現在の地方分権の時勢を踏まえて、行政(市) も市民や民間も前向きに捉え、出来るだけ“行政(市)の手から民間の手へ”の運営活動に向かって行きつつあるといえる。無論市民・民間の声を基本に進展させることが要求されることになる。ただ国際交流の場合相手国の状況を考慮する必要があることも教えてくれた。例えばアメリカの場合、国際交流などはNGOやNPOなど民間団体などが中心になって展開することが一般的となっているが、中国などは民間中心よりも行政(市)が関与していた方がベター又は喜ばれるようである。相手国の政治体制や社会環境を考慮することが必要となってくるといえる。
*実務者人事交流については、中国の友好都市金華市との間で行われている。今までに栃木市国際交流協会から金華市に1人
(2年間)が行き、金華市からは2-3人/年の研修生(市民レベル)を受け入れてきている。
*特徴については、在住の外国人との交流(国際交流のつどい、日日本語講座など)と海外に目を向けた交流(友好都市金華市、
姉妹都市エバンズビル市など)を、うまく調和させた交流進展といえるでしょう。
3)足利市
電話による確認で次の様なことを教えてもらった。
*今後の動向・方向性:
今までと同様に今後も民間主導のボランティア活動を継続して行く。
*特徴としては、その一つに民間主導型ということが言える。そして二つ目に足利在住外国人による英会話活動(ICC International Community Club)が挙げられる。ICCは主に地元の子供たちを対象に定期的に英会話を教えると共に、地元の小学校へも出向き英会話を楽しみながら普及活動をしている。
4)佐野市
電話で確認した結果、下記の内容を教えてもらえた。
*今後の動向・方向性:
佐野市の国際交流の場合も大きな方向性としては、“市政”から“市民(民間)”への方向にあると言えよう。今までの“何でも行政“の考えから”民間で出来ることは民間で“の方向性であるといえる。つまりNGO,NPOなどのボランティア活動を前向きに取り入れてゆく方向にある。
*今後の予定と特徴:
・その一つは姉妹都市になっているアメリカのランカスター市から、佐野市の全中学校へALT(Assistant Language Teacher)を配属しており、今後も充実して行く方向にある。
・二つ目は、毎年恒例の“国際交流フェスティバル”には、在住外国人の外交官にも来てもらい親善を深めており10回目を迎えている。今後も前向きに実践し、佐野市の国際交流をより特徴づけて行く方向にある。
*実務者人事交流とお金(財政・予算)については、佐野市でも厳しい現状であるといえる。
5)鹿沼市
電話で下記の事を教えてもらえた。
*今後の動向・方向性:
大きな方向性としては、他の市と同様に完全独立化(民間化)の方向にあるといえる。時期的なものについては現時点で言うことは大変難しいといえよう。
*特徴:
鹿沼市の特徴は全体的にバランスの取れた活動展開をしながらも、特に日本語教授法セミナーによって日本語の教え方を技術習得した
人が、日本語教室で日本語を教える方法をとって力を入れているといえる。外国人の生活面での日本語活用に役立つと共に学校へも
出向いて支援活動をしている。
*実務者人事交流とお金(財政・予算)については、今のところ実務者の長期人事交流はない。財政・予算については他の市と同様に余裕はないといえよう。
6)小山市
電話で下記の内容を教えてもらえた。
*今後の動向・方向性:
他の市と同様に、大きくは民間化の方向にある。現経済時勢では民間ボランティア(個人・団体・企業)でも市でも財政的に厳しく
今まで通り会員中心・主導を進めて行かざるを得ないといえよう。
*実務者人事交流とお金(財政・予算)については、財政的にも余裕はなく実務者人事交流は現時点ではない。
*特徴:
小山市の特徴は全体的にバランスの取れた活動展開をしながら、ボランティア活動は会員中心・主導の展開に努めていることが特徴といえよう。
7)日光市
日光市市役所へのTEL確認とインターネットで下記内容を得た。
*日光市においては日光市役所(行政)がかんだ交流協会はなかった。つい最近(2002年11月9日)民間の日光国際交流協会が
発足したばかりである。 今後“心の交流”を目標にした交流展開が進められようとしている。
**上記TEL確認に際して、各市国際交流協会や市役所の関係者が大変好意的に応対してくれましたことを感謝いたします**
7.
まとめ
A)海外友好都市や姉妹都市について:1980年代の前半から友好都市や姉妹都市の締結が始まった。そして1990年代になってから盛んに締結が成されるようになっていった。締結の一番多い国は中国であり、二番目はアメリカとなっている。
B).国際交流進展形態について: 上記各市とも「○○市国際交流協会」といった名称の組織を主体にして活動している。
具体的には、 ● 宇都宮市、栃木市、佐野市、鹿沼市、小山市の国際交流協会は協会と市政の合体協力型
● 足利市は市政が入らない足利市国際交流協会による民間主導型
● 日光市は日光国際交流協会という名前の民間団体(2002年11月に発足した)
また「○○市国際交流協会」発足は鹿沼市の1989年が一番早く、その他の市はそれ以降に発足している。
C).交流内容は在住外国人を対象にした活動(日本語講座、地元文化交流、広報発行、イベント活動など)と海外の外国人を対象とした交流
(友好・姉妹都市交流、ホームステイ、文化交流、技術交流など)に大別できる。上記日光市以外の各市では、在住外国人と海外外国人の両面での交流活動が前向きに展開されている。
8 感 想
1. 現在の地方分権化の時勢下においては、国際交流協会においても例外ではないといえよう。つまり協会も出来るだけ民営化・民間化の方向にあることを感じとることが出来た。私としてはこの方向性は間違っていないと考える。最初の段階では市と協会が一緒に交流活動を展開することは必ずしも悪くないと考える。しかし交流の原点は市民個人個人であることを考えると出来るだけ早く市民レベル、民間レベルでの交流組織に持って行くことが望ましいと考える。
2 各市国際交流協会の具体的な実務内容はそれほど変わりはない。電話で確認できた範囲で、それなりの特徴は教えていただいたが今一これこそは我が街の交流の目玉、特徴、特質であると胸を張って言い切る協会は少なかったといえよう。わが街の国際交流のやり方に自信を持った、個性ある交流方法や内容があっても良いのではないかと思いました。今後21世紀の国際交流には個性豊かな市民レベルに根を張ったボランティア活動(交流)が益々盛んになって行くことと考えます。
3 今回上記七つの市自治体の海外交流について知りえた範囲では、現在の国際交流協会(協会専任メンバーと市職員とで活動展開)は大きな流れとして、民営化・民間化の方向に動いている。私としてはこの方向は望ましい方向だと考える。ただこの前提には街の個人個人が国際交流についてどう考えるかがある。市民一人一人が国際交流(外人・外国とのまじわり)を少なくとも肯定的に考え、行動する人々が一人でも多く増えることが肝要である。街の人々が国際交流に関心や興味を持ち、国内・海外の外国人コミュニケーションをしたい気持ちがどのくらいあるかに掛かっていると言えよう。全ては市民一人一人の国際交流に対する普段の関心意識と行動力に掛かっていると考えます。つまり民営化・民間化の方向に持って行くには、市民一人一人の関心と実践協力が益々求められると考える。