Nakazawat030114「地方自治論」レポート

「松本市におけるコンベンションビューローの働き」k990142中澤 匠

 

コンベンションは広い意味で一般的な会議や大会、展示会やスポーツ、興行イベント、祭りやフェスティバルを含めたものをさし、コンベンションが観光振興にはたす役割が注目されている。

 観光についてはこれまでのツアーバスなどによって観光名所を訪れるというやり方が衰退し、新たにその土地の歴史、伝統、町並みなど総合的に訪れた土地を楽しむという「滞在型」の観光が好まれるようになったとされている。

 コンベンションが観光振興に対してなにかしらの効果を」期待されるのはコンベンションによって地域に滞在して交流が行われることと大きなイベントによる地域の情報発信の効果の可能性が見出せるからである。

松本市では近年観光客数が減少傾向にある。松本市の観光スポットにおける観光地利用者数の数値を見ると「松本城」は平成9年度が798000人、平成11年度が1677000人と増加しているものの、「浅間温泉」「日本民俗資料館」「美ヶ原高原」「美ヶ原温泉」「美鈴湖」「重文開智学校」は年々緩やかに減少している。これは不況によって客足が遠のいたとことともに観光形態の変化の影響を受けたためによるものではないかと思われる。

図―1

資料:松本市総合計画 第7次基本計画より

 このような状況の中、観光振興を促すため松本市としては「松本市総合計画 第7次基本計画」において観光振興の基本方針として同市における観光振興の基本方針として観光資源の整備や特色ある温泉地の形成、新たな観光資源の創出と共に国際的な会議やイベントの誘致を積極的に行うことを掲げた。

 また国際的な会議やイベントの誘致を積極的に行うための施策の中で国際会議観光都市として施設、受け入れ態勢の整備促進を行うとして大型イベント、会議、大会等の誘致・支援と多彩な交流の促進や外国人にやさしいまちづくりの整備、接遇、通訳など受け入れ態勢の整備充実、コンベンション対応施設の整備促進を挙げた。

コンベンションビューローを支援する組織として国際コンベンション誘致センターという組織がある。国際コンベンション誘致センターは国際観光振興会の一部門で日本の「政府観光機関」として海外14箇所に観光宣伝事務所を置き、外国人観光客増加も含めて国際会議の日本への誘致を目的に活動を行っている。国際観光振興会は国土交通省管轄の特殊法人である。観光行政は国土交通省が管轄になっており、国土交通省は「国際会議観光都市」の認定を行っている。

 このようななかで松本市にも松本コンベンションビューローというコンベンションを誘致するための団体が設立された。

 松本市コンベンションビューローは松本市と松本商工会議所が主に資金を出して設立された民意団体である。活動目的はコンベンションを施設、人、情報提供などの面について支援して成功させることにある。仕事内容としては@コンベンションの誘致・主催者への支援Aコンベンション都市の広報・宣伝Bコンベンションの調査活動・企画Cコンベンション情報の収集と提供が挙げられている。具体的には文化会館や市民会館など会議施設のや体育館や陸上競技場などスポーツ施設、展示施設の情報を提供したり、パラグアイチームの誘致の際には実行委員会のメンバーとして協力をする。担当者は商工会議所の経済部と松本市役所内の観光温泉課の職員が兼任しているが、実際にはコンベンション担当として1名ないし2名が主にコンベンションにかかりきりになって活動している。

 松本市で行われたコンベンション活動をみてみると8月の会議などの開催数は5件、イベントなどは22件、スポーツなどは14件であった。9月にはいると会議等9件、イベント等21件、スポーツ等19件であった。10月では会議等34件、イベント等26件、スポーツ等10件、11月では会議等12件、イベント等12 件、スポーツ等18件、12月では会議等4件、イベント等6件、スポーツ等7件、20031月現在は会議等4件、イベント等10件、スポーツ等6件であった。

内容を見ると中学生・高校生・社会人のスポーツ大会やお祭り、シンポジウムなどが多い。市民のお祭りとして定着しているものもあり例を挙げると、8月に行われるイベントである「松本ぼんぼん」は22000人余りの踊り手が踊り、見物客は20万人を超える。主催は松本ぼんぼん実行委員会で、共催として松本市、松本商工会議所、松本観光協会が参加している。

コンベンションビューローに期待すべきはこのようなイベントを含めた松本市の姿をコンベンション誘致によって多くの人に知ってもらい、またコンベンションが根付くもしくは経済面や観光面のみならずなにかしらの影響を残すことにより地域住民にとって新しいまちづくりの機会が増えるという相乗効果をもたらすのではないかという点である。

その意味で、松本市における2002年の日韓共催サッカーワールドカップのパラグアイナショナルチームのキャンプ地誘致はパラグアイナショナルチームが松本市を訪れた際、イベントとしてパラグアイチームのチラベルト選手との握手会が企画されるなど意味のあるものであったと考えられる。

しかし、滞在日数が少なく地域住民との交流期間が短かったことや情報提供があまり徹底されなかったことなどにより、地域住民側の盛り上がりがあまりおこらなかったというのは事実である。大きなコンベンションの誘致に成功しながらその成果を存分に生かしきれなかったように思われる。

この例を見てコンベンションビューローの考えるべき課題はコンベンション誘致の継続とともにコンベンションがもたらす効果を地域住民に対しても丁寧に伝えていくことではないかと思われる。

観光とまちづくりが相互関係をもつようになってきた今日では、観光振興を成し遂げるためにまず地域住民に目を向けていかなければならない。様々なコンベンション誘致やその企画、支援はそのコンベンションに関わる当事者に対してのサービスであることは間違いはないが、その活動を観光振興としての効果により密接につなげていくのは住民理解が進むことによるまちづくりであり、まちづくりによる新たな観光資源の創出であるからである。

また、住民理解を得ることは同時に同コンベンションビューローの息の長い活動にもつなげていくことが出来る。まちづくりによる観光振興は中期、長期的な視点に立たなければ成果の見えにくいものであり、中期長期に渡って活動をしていくためには「いずれは住民のためになる」ということを分かってもらわなくてはならない。

より住民の視点に立ち、松本市コンベンションビューローがコンベンションの誘致及び活動支援を行いいずれ松本市の観光振興につながることを期待する。

 

参照サイト

http://www.city.matsumoto.nagano.jp/www_cbox/

松本市の公式ホームページ。映像など盛りだくさんです。

 

http://www.jnto.go.jp/

国際観光振興会のホームページ。データが豊富です。