地方自治論
国際社会学科 3年 田中 辰季
テーマ:在日コリアンに対する地方自治
理由:長年にわたって日本に住んでいる在日コリアンの人たちに対して国や地方自治体はいまだに彼らに十分な権利(ここでいう十分な権利とは日本人と同様の権利、例えば選挙権、被選挙権など)を与えていません。しかし一方で義務に関していえば日本人と同様の義務を負わせています。これらの事実に対して詳しくは知らなかったので、今回深く調べてみようと思いました。
研究の流れ:在日コリアンの人たちの日本での生活の現状を調べることによって、まず日本という国の枠内での在日コリアンを知った上で、日本のいくつかの都市に焦点を定め、各都市での在日コリアンに対して行われてきた政策、また現在の法整備について調べる。
日本の中の在日コリアン
在日コリアンの人口: 在日コリアンをどうとらえるかによって変わってきますが「終戦時に日本に残った朝鮮人とその子孫で,現在も韓国籍か朝鮮籍を持っている人」と定義した場合、現在その人口は約65万人とみなされています。
在日コリアンの納税の義務の有無:日本で生活している以上,在日コリアンも日本人とまったく同じようにはらっています。逆に,韓国籍や朝鮮籍であっても,大韓民国や朝鮮民主主義人民共和国には税金を支払っていません。
在日コリアンの選挙権の有無:ありません。
在日コリアンへの法律上の差別:内外人差別を禁止した難民条約に日本が1982年に加入してからは,しだいに国籍差別はなくなっていきましたが完全に差別がなくなったわけではありません。年金差別の問題です。 年金といっても,厚生年金や共済年金などには以前から国籍による差別はありませんでしたが、ほんの20年ほど前までは,在日コリアンが一般企業に就職することはきわめて困難でした。理由はもちろん,激しい民族差別のためです。したがって,1982年に国民年金への加入が認められるまで,圧倒的多数の在日コリアンが無年金で放置されていたのです。
川崎市
川崎市では近年「外国人の市政への参加を目指して」というテーマで政策に取り組んでいます。京浜工業地帯の真ん中に位置し,そのため戦前から多数の朝鮮人が職を求めてあるいは強制連行によって多住するようになった川崎市は,彼ら在日コリアンの差別撤廃・人権確立の政策に取組んできました。
1970年代から全外国人への国民健康保険の適用や児童手当の支給,市営住宅入居の国籍条項撤廃を国に先駆けて実施してきました。
1980年代は在日コリアン児童生徒の教育方針を制定し,全国初の在日コリアンと日本人の交流施設(子ども文化センタ−と社会教育施設の機能をもつ)「ふれあい館」の建設や,外国人登録法に規定されている切替や再交付時の指紋押捺制度に対する拒否者の不告発等を実現してきました。
また川崎市の地域社会の構成員である外国人市民、特に在日コリアンに、自らに関わる諸問題を調査審議する機会を保障するために川崎市外国人市民代表者会議を設置しました。
この会議は1996年12月1日を第一回とし、以後定期的に開かれるようになりました。
この会議を開くにあたり川崎市では1994年から調査研究委員会を設置し、外国人の法的地位および処遇に関する国内の法制度上の問題と外国の事例研究を行い,1995年3月末には中間報告書をまとめました。1995年度はヨ−ロッパ現地調査を行い,川崎市独自の仕組みづくりに向けた実務研究とモデル会議を開催しました。
事例研究ではドイツ・フランス・オランダ・スウェーデンなどの国々の法制度について調べ、朝鮮総連・韓国民団との懇談も実施しました。
また90年代に入ると、国際化の進展にともなう外国人労働者の増加、および国際結婚や留学生の増加などにより外国人が多数来日し定住するようになったため、川崎市では在日コリアンだけではなく様々な国の外国人に対する法整備が求められています。ちなみに現在川崎市の全人口の1.7%、約2万人の外国人が居住し、国籍数では108カ国を数えています。
京都市
京都市では京都市外国籍市民施策懇話会会議を設置し、地方公務員の国籍要件について審議しました。
京都市では,現在,一般事務職など4職種に「国籍要件」を設けています。この国籍要件は,1953年の「公務員に関する当然の法理として,公権力の行使又は国家意思の形成の参画にたずさわる公務員となるためには日本国籍を必要とする」という内閣法制局の見解に基づいて設けられたものです。 地方公務員も税金をかけたり,建築許可を出したり等の公権力の行使にあたる業務を行い,また,予算や基本計画の策定など公の意思形成に参画するため,この公務員に関する「基本原則」が適用されることになります。そのため,在日外国人には,地方公務員の一般事務職等の受験資格がないとされてきました。
※ 京都市では,73の職種のうち,一般事務職,一般技術職,消防職,学校事務職について,日本国籍を有することを受験資格の一つとしています。
国籍要件が設けられたのが1953年と50年もまえのことであり、また現在、国際化の進展にともなう外国人居住者の増加という社会状況の変化にもかかわらず、なぜ国籍要件が撤廃されずにいるのかという理由にこのようなものがある。
国籍要件を撤廃すれば,市役所が外国人に乗っ取られるのではないかという見方がある。また,日本人でさえ就職が難しいのに,なぜ外国人に公務員への門戸を開けるのかという声もある。さらに,日本国籍を取得すればよいではないかという意見がある。
在日コリアンが日本で暮らすことになった歴史的経過の認識が必要であるとともに,日本人優先の外国人排外主義を打ち砕く必要があるようである。
京都市は,現在,一般事務職,一般技術職,消防職及び学校事務職の4職種を除く,69職種について,外国籍市民にも門戸を開いているものの,外国籍職員数は極めて少ない状況にあります。
京都市は,京都市国際化推進大綱において「最大の職員数を数える4職種について,地方自治法における住民本位の精神に立ち返り,採用可能な職種・職位の検討を進める必要がある」と定め,本懇話会も1998年度報告書において「市職員採用における国籍要件の緩和(一般事務職等における外国籍市民の採用可能な限りの拡大)」を提言しました。
大まかな流れ
98年7月2日、京都市の転職試験国籍条項撤廃を組合が申し入れ。
99年2月4日、京都市「外国関市民施策懇話会」は国籍条項の撤廃を含む意見書を提出した。
99年4月 1日、京都市立学校教員として韓国籍の女性が採用された。教員採用試験の国籍条項が撤廃された92年度以降としては、京都市では合格第1号となる。全国では、これまでに大阪、神戸市など全国で約20人が合格、採用されている。京都市では82年に国籍条項のない養護教員に韓国籍の女性一人が採用され、現在も保健指導などにあたっている。
京都市は、無年金状態に置かれている市内の在日外国人高齢者に給付金を支給することを市議会で決定しました。この「高齢外国籍市民福祉給付金」は、99年1月から月額1万円支給されるというものです。対象は1926年4月1日以前に生まれた外国籍の高齢者。京都市は、この制度の設置により市内在住の1300人に給付金が支給されるものと推算しています。これまで京都市は在日外国人障害者には給付金を支給してきたが、高齢者に対しては制度を設置していませんでした。女性同盟京都府本部顧問会をはじめ総聯京都府本部の各階層の代表は京都市に対し、在日朝鮮人高齢者・障害者に給付措置を実施・拡充するよう、繰り返し要請していました。総聯本部では今後、対象者捜し、手続きの代行などを行っていく。