Ootsukah011112 「地方自治論」レポート

「国籍条項撤廃に関する地方自治体の取り組み、及び現状」

 

1)外国人の権利

    ここでいう外国人とは、日本国籍を有しない者をいい、外国国籍を有する者であると、無国籍者であるとを問わない在日外国人は日本人が有している、様々な権利を有していない。例えば外国人は外交官、民生委員、人権擁護委員になることができない。また、外国人は公証人、漁業、政治献金ができない。また、外国人は直接請求権、重要な公務就任、選挙権、被選挙権の権利が無い。このレポートでは参政権、公務就任問題に関する地方自治体の取り組み及び現状について詳しくしていこうと思う。対象地域は福井県武生市、福井市の2つの市に絞った。各地域のホームページが豊富なことが理由である。

2)国籍条項とは

    日本国籍を持たない外国人の権利を制限する法令などを国籍条項という。しかし、公務員(外務公務員以外)に対する国籍条項に法律の裏付けはない。代わりにその根拠になるものは国の見解である。公権力に関わる仕事に就くためには日本国籍が必要で、これは「当然の法理」と言える。国籍条項には法的な根拠がなく、これを受験資格に加えるかどうかは、各自治体の一存で決まっているという矛盾がある。国籍条項の合理性の根拠は「当然の法理」のみ。

3)国籍条項をめぐる主な動き

    1953年、内閣法制局が「公権力の行使または国家の意思形成への参画に携わる公務員になるためには日本国籍が必要」と見解する。後、80年代、国籍による就職差別の撤廃を求める運動や国際交流が活発になり、受験資格から国籍条項を撤廃する市町村が増える。それから川崎市、大阪市では採用後の職務と昇任に制限を設けて撤廃する方針を決定し、外国人が公権力の行使、または公の意志形成の参画に携わる職には就けない、とする従来の自治相の方針は変えていないものの、運用は自治体の裁量に委ねるとする見解を出した。自治省は地方公務員の採用に直接の権限はないが、その見解は事実上自治体の方針に枠をはめてきた。そして、この修正で弾力的運用に踏み出す自治体が増えていった。

4)福井県武生市の場合

    武生市は製造品出荷額で福井県内第1位という工業の盛んな地域である。また,県内の他地域に比べ比較的大きな工場が多く,こうした工場で働く日系ブラジル人を中心に外国籍の市民が急増している。武生市の人口約72,000人のうち,外国人登録をしている外国籍の市民は2,200人を超え,人口の約3%を占めるに至っている。(今年度,日系ブラジル人を中心に約500人が増加した。)武生市職員採用要件見直し研究会報告書によると市は、地球規模で人、物、情報等が行き交い、国際的な相互依存関係がますます深まってきている現在、武生市は、「世界に聞かれた都市・武生」づくりに努めているところであることから、外国人に公務就任の機会を広げることは、本市にとって有意義なことであり、また、国籍にかかわらず優秀な人材を確保することは、地方分権時代に対応できる織員を育てる上にも必要不可欠なことであると考えている。しかしながら国民主権の原則 ・公務就任は参政権の一つであり、憲法21条は適用されない ・「国籍」は国家に対する忠誠の証である、などといった理由から外国籍の人々の採用を拒んできた。しかし、ここで間違っているのは公務員に法律で求められているのは「憲法、国民に対する忠誠心」であり国家(政府)への忠誠心ではない、ということだ。いろんな理由を持ってきて自らを正当化しようとする姿勢が見える。

5)福井県福井市知事、酒井哲夫氏の考え

    福井市知事である、酒井哲夫氏にいくつかの質問を市、その回答をまとめた。まず一問目に、地方公務員採用に国籍条項が設けられていることについてどのように考えているか、という質問。これに対して彼は定住外国人の地方参政権については、現在の法において「日本国民が選挙権を有する」と規定されてあるので、地方独自でその権利を認めることができるものではないと考える。しかし、納税義務を有するなど、居住する地域の地方公共団体と緊密な関係を以ていることを考慮すると、定住外国人の意志がその日常生活に密接な関連を有する公共団体に反映されることは必要だと考えている。また、福井市では現在、国籍が必要とされないのは現業職の一部のみだが、今後一般職を含め全ての職種について国籍条項を撤廃する考えはないか、という質問に対して、福井市では、すべての現業職員の採用については国籍条項を撤廃しております。その他の職員(一般職)については国籍条項をはずしていない。川崎市などの例の状況を十分踏まえるとともに、国や県の指導を仰ぎながら、職種の内容等を十分考慮するなかで、慎重に対応していきたいと考えている。三つ目に、在日外国人の、とりわけ定住外国人の声を市政は現在市政に反映されていると考えているか。また今後反映させていくための具体的施策があれば紹介してください。という質問に対しては、国際化の伸展に伴い、福井市におきましても在住外国人の方々は近年増える傾向にありますが、こうした傾向を踏まえ、福井市では異なる価値観や生活週間を有する外国人の住民であるとの視点にたち、在住外国人の方々と共生することのできる開かれた地域社会を目指している。具体的には、平成87月に発足しました福井国際交流協会内に地域国際化部会が設置されていますが、地域の国際化をになう地域各界の代表者と共に、在住外国人の方々も参加されており、相互交流と相互理解に向けた種々の取り組みがなされつつある。また行政としては来庁される外国人の方の相談窓口として国際交流課を担当窓口と位置付け、主に日常生活に拘わる諸問題について関係部署と連携しつつ対応しています。
福井市の国際化施策は、未だけっして十分と言える状況ではないが、今後とも適切な国際化施策を検討して参りたいとかんがえている。これらの質問と回答より、地方自治の国際条項撤廃は、各自治体の判断に委ねられているとはいえ、国や、県の指示がなければ動くことができない、地方自治体の力不足を感じる。

6)意見

    これらの調査より、国際条項撤廃に関する各自治体の動きは進んでいるとはいえ、今はまだ、足踏み段階である。在日外国人らは法律すれすれのところで国籍条項撤廃を妨げられている。国も、県も、各自治体もそれぞれが責任のなすり合いをしていて、何とかして外国人に権利を与えないでおこうとしている。そんなにして何を守ろうとしているのだろうか、国際化だの、グローバリゼーションだのたてまえでは奇麗事を言い、本音である国民国家たるプライドを捨てきれていない姿が国籍条項撤廃問題にしっかりと映し出されている。また、各自治体は与えられた仕事のみをこなしてゆくのではなく、社会のニーズにあった仕事を自ら行ってゆくべきである。

 

       

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/gj/gj05.html

福井県武生市教育委員会学校教育課の研究報告書

http://www2.interbroad.or.jp/shimada/takehu

「在日外国人の参政権を考える会 福井」のホームページ

http://www.ryukoku.seikyou.ne.jp/home/j980499/99-920-1.htm

http://www.ryukoku.seikyou.ne.jp/home/j980499/99-920-2.htm

高橋進研究室の外国人公務就任権問題に関するホームページ

http://okaguchi.tripod.co.jp/jk8.htm

裁判関係、特に外国人の人権に関するサイト