Oshimat01112  「地方自治論」レポート

「宇都宮市のゴミ問題と市民活動」 k000110 大嶋友子

 

はじめに

 私達が生活している限り必ず出てくる物、それは「ゴミ」である。現在では環境汚染が各地で騒がれ、ここ宇都宮市でも5種9分別に分別してゴミを出さなければならない。燃えるゴミにはダイオキシン問題がクローズアップされ、埋め立てゴミには土壌汚染や埋め立て地域の住民の反対運動などが取り上げられる。また、近年では国内外を問わずペットボトルやビンのリサイクル運動が盛んに行われているが、どのような展開を見せているのか、また今後の課題について探っていきたいと思う。 

 

(1)  増加するゴミと市民の負担

以下のデータは2000年5月30日に行われた 第4回ゴミ「0」シンポジウムの参考資料である。(http://plaza22.mbn.or.jp/~gomigenryo/)

 

宇都宮市のごみ事情 〜平成10年度実績〜

1.宇都宮市のごみ排出量の推移

平成 9年度  18.46万トン  前年度比 104%
平成10年度  18.86万トン  前年度比 102%

2.市民1人あたりのごみ排出量の推移

3.ごみ組成分析調査結果

宇都宮市のごみ組成分析調査結果   平成10年度実施 単位:重量%

  
   
  

4.ごみ処理費用

平成 9年度 ごみ処理費  5,113百万円   市民1人あたり 11,600円/年
平成10年度 ごみ処理費  5,847百万円   市民1人あたり 13,200円/年

※ごみ処理費:焼却や収集のための人件費、工場管理費、設備償却費、有害ごみ処理費、等々

宇都宮市が収集・処理しているごみ処理原価   単位:円/kg

内容

H

H6

H7

H8

H9

H10

収集費用

15.12

15.32

18.39

17.88

17.14

16.96

処理費用

15.00

13.85

17.08

16.35

14.25

17.65

ごごみ処理費用

30.12

29.16

35.47

34.23

31.40

34.61

  

以上の報告結果は平成10年の実績調査ということで少々データが古いが、最近の傾向を掴むには差し支えないと思われる。宇都宮市のゴミ排出量は調査を開始したS62年から年々増加し、5種9分別が開始されたH7年に一時減少したが、その対策もむなしく、近年再び増加傾向にある。ゴミ組成の内訳は厨芥類が5割強を占め、次いで紙類、プラスチック類…と続く。厨芥類に関しては「いかに食べ物が溢れているか」が分かる。食べ物が貧しかった時代、好き嫌いは許されなかった。しかし現代では食のバラエティも豊かになり、物が溢れ、偏食をする人も増えてきた。「嫌いな物や、食べきれない物は捨ててしまえばいい」そういった風潮がゴミ問題に拍車をかけているのではなかろうか。また、紙の大量消費には単なるゴミの増加だけでなく、森林破壊という深刻な問題にも関わっている。「紙だって今は再生紙が普及しているじゃないか」と主張する人もいるだろう。しかし、残念ながら日本において再生紙はまだまだ私達の中に浸透できていないのが実情である。私達が普段使っている上質紙は、発展途上国の森林を切り倒したものを輸入して、日本で加工したものがほとんどである。なぜ日本人は自分の国の伐採して使わないのか、そういった批判が出るのも無理はない。答えは明快である。発展途上国から材木を輸入した方が、コストがかからないで済む。それに国内の木を切らなければ、国民から「森林破壊だ!」と後ろ指をさされなくて済む、という身勝手な解釈から紙の大量消費は続けられている。

ゴミの増加に伴い、ゴミを処理するのにかかる費用も増加している。ゴミが増えればそれだけ人手も増えるし、処理する時間もかかる。ということはつまり、ゴミを捨てている私達市民の負担(処理費用)も増えることは当然の結果である。私達はお金を払ってゴミを処理してもらっている、という実感がなかなか湧かない。言い換えれば、お金を捨てているとも言えるだろう。まず、一人ひとりがそういう意識を持ってゴミ問題に向き合っていかなければならない。

(2)次に、宇都宮市民の可燃ゴミ処理対処法による排出量の違いを見てみたい。  

宇都宮市民のごみ実態調査     実施:ゴミ問題・ゴミ発電を考える会

調査期間:1998年2月〜11月 調査対象:清原地区住民 延398家庭

一般家庭(ゴミ問題・ゴミ発電を考える会の会員)にごみ計量を呼びかけ、各家庭の可燃ごみ排出量を測定し、そのデータをまとめた。

可燃ごみの量は、各家庭での対処方法で大きく異なっている。

·         生ごみを堆肥化に有効に利用し、可燃ごみとして出さない。

·         雑紙(レシート・封筒・カタログ等々)を分別回収し、資源物として出す。

·         トレーや牛乳パックを生協やスーパー等のリサイクルボックスに戻す。

·         買物袋を持参し、ごみとなる包装物をもらわない。

<調査結果>

各家庭の可燃ごみの排出量平均: 0.24kg/日/人
生ごみを家庭内で処理していると: 0.14kg/日/人
生ごみを可燃ごみとして出していると: 0.34kg/日/人

このような調査結果から家庭の可燃ゴミに対する関心の持ち方によって、ゴミの減量化が行えるということが分かる。私の家では数年前までは生ゴミは土中に埋め、自然に還元していた。これは上のグラフを見てもわかるように、可燃ゴミを家庭で処理した場合のゴミの排出量に効果が大きい。しかし、あまりのゴミの量と手間から可燃物としてゴミに出すようになった。我が家のように庭に生ゴミを埋めるスペースのない人や、あまりゴミ問題に関心のない人にとってはゴミとして出してしまった方が手間もかからない。生ゴミを自分のところで処理しようとする人はあまりいないようだ。

しかし見方を変えて、「消費するもの」そのものを減らせば良いのではないかという発想が生まれてくる。つまり不必要なものを買わずに、生活するのに最低限のものを消費するようにすればゴミそのものが減る、ということである。上記にあるように、ある家庭では買い物袋を持参し、ゴミとなる包装紙をもらわないという試みを行っている。確かに買い物に行けば必ずと言ってよいほど袋や包装紙に包まれる。高価なものや上品なものになればなるほど過剰包装である。しかし包装紙は家に着くなり、あるいは送られる側に渡ったとたんに「不要物」=「ゴミ」となってしまうのである。送り物は体裁の関係もあってやむを得ないとして、自分の家で使う分には買う時からゴミの減量化に心がけても良いではなかろうか。

私がアルバイトをしているコンビニエンスストアーでは忙しいということもあるが、お客さんに「袋にお入れしますか?」と伺って相手の要望に応えている。例えばガム一個・ジュース一本の場合、袋に入れなくてもかまわないと言うお客さんがほとんどである。中には大きい商品を買う場合にでも「袋に入れなくても大丈夫ですよ。すぐ使うので」と言ってくださる人もいる。確かにちょっとした食べ物やジュースを買う場合、袋に入れてもらいたい場合もあるが、たいていの場合は食べてしまったら空になった容器と一緒に袋も捨ててしまう。それならば「買った」ということが分かるように、お店のテープを貼ってもらえばそれで充分である。このような体験を通して、自分が買い物をする時には「袋はいいです」とゴミの減量化に貢献するように心がけている。

 

(2)  国の取り組み

平成12年 5月26日 環境庁は「循環型社会形成推進基本法」を成立させ、6月2日に公布させた。大量生産・大量消費・大量廃棄の型の経済社会からの脱却を目指し、資源の消費が抑制され、環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成することを目標に掲げている。

(参照ホームページhttp://www.env.go.jp/recycle/gaiyo.html

   情報:循環型社会形成推進基本法が成立  〜廃棄物抑制に枠組み〜

各紙新聞情報 平成12年5月27日(下記は、下野新聞報道を転記)

 ごみの減量化やリサイクル促進を目指す循環型社会形成推進基本法と排出事業者に最終処分の確認を義務付ける改正廃棄物処理法が26日午前、参院本会議にて可決、成立した。
 基本法の成立で「大量生産、大量消費、大量廃棄」型の経済社会から、廃棄物を抑制して環境への負荷が少ない「循環型社会」づくりへの基本的な法律の枠組みができた。しかし「理念、精神だけをうたって実効性に欠ける」との批判もあり、どれだけ実際に廃棄物の抑制につながるのか注目される。
基本法は使用済み製品や廃棄物などを循環資源と位置付け、処理の優先順位を@発生抑制A再使用B再生利用C適正処分−とした。(以上)

循環型社会形成推進基本法の概要

1.形成すべき「循環型社会」の姿を明確に提示

「循環型社会」とは、@廃棄物等の発生抑制、A循環資源の循環的な利用及び、B適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会。

2.法の対象となる廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と定義

法の対象となる物を有価・無価を問わず「廃棄物等」とし、廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置付け、その循環的な利用を促進。

3.処理の「優先順位」を初めて法制化

@発生抑制、A再使用、B再生利用、C熱回収、D適正処分との優先順位 

4.国、地方公共団体、事業者及び国民の役割分担を明確化

循環社会の形成に向け、国、地方公共団体、事業者及び国民が全体で取り組んでいくため、これらの主体の責任を明確にする。特に、@事業者・国民の「排出者責任」を明確化。A生産者が、自ら生産する製品等について使用され廃棄物となった後まで一定の責任を負う「拡大生産者責任」の一般原則を確立。

5.政府が「循環型社会形成推進基本計画」を策定

循環型社会の形成を総合的・計画的に進めるため、政府は「循環型社会形成推進基本計画」を次のような仕組みで策定。

@原案は、中央環境審議会が意見を述べる指針に即して、環境大臣が策定、A計画の策定にあたっては、中央環境審議会の意見を聴取、B計画は、政府一丸となった取組を確保するため、関係大臣と協議し、閣議決定により策定、C計画の閣議決定があったときは、これを国会に報告、D計画の策定期限、5年ごとの見直しを明記、E国の他の計画は、循環型社会形成推進基本法を基本とする。

6.循環型社会の形成のための国の施策を明示。

@     廃棄物等の発生抑制のための措置、A「排出者責任」の徹底のための規制等の措置、B「拡大生産者責任」を踏まえた措置(製品等の引取り・循環的な利用の実施、製品等に関する事前評価)、C再生品の使用の促進、D環境の保全上の支障が生じる場合、原因事業者に現状回復等の費用を負担させる措置  

 

(3)  リサイクルの現状

宇都宮市でも平成7年にゴミの分別が5種9分別になり、それまで可燃物として出されていたペットボトルが別個として分別するようになった。それはペットボトルを回収して、リサイクルするためである。しかし、あるテレビを見ていて「ペットボトルを回収していても、コストがかかりすぎてリサイクルしても採算が合わない。リサイクルするよりも新しいものを作った方が良い」と言うリサイクル業者の言葉を聞いて、それならばなぜ手間をかけてまで分別する必要があるのかと疑問を抱いた。いくら環境のため、資源の再利用、とスローガンを掲げてもコストが高くつけば製品価格も値上がりする。価格が上がれば消費者は買わない。こんな悪循環が起きているのか、ペットボトルのリサイクルの現状を載せているサイトを見つけて調べてみると、年々少しずつではあるがリサイクル率は増えている。しかしそれと同時にペットボトル用樹脂の需要率が増加している。そのほとんどは清涼飲料水のペットボトルが占めている。つまり広い目で見ると、リサイクルが追いつかない状態なのである。 

またペットボトルだけでなくビンや缶のリサイクルも行われているが、宇都宮市を含め、日本のリサイクル事情はまだまだ諸外国に比べて関心が薄い。ここでいくつか欧米のリサイクル関連サイトを上げておきたい。以下のサイトを見る限り、国のゴミに対する取り組み方からして違うように思われる。例えばビンをお店に返すと日本では1本あたり5円の保証金がもらえるが、デンマークでは34円という驚きの差である。このような高額な保障金が支給されるならば、喜んでリサイクルをするというものであろう。

宇都宮市議会 環境と健康を守る会(デンマークのデポジット制)http://plaza6.mbn.or.jp/~econet/report/rp010715.html

ドイツ・北欧ごみ事情http://www2u.biglobe.ne.jp/~GOMIKAN/germany-a.htm

 

おわりに

 以上述べてきたように、ゴミ問題は依然として深刻化を増す一方である。しかしそのゴミは一人ひとりの心がけによって、可能な限り最小化できる。必要以上のものは買わない、リサイクルに心がける、リサイクル用品を利用する。この心がけさえあれば、明日のゴミ減量の一歩につながる。自分もゴミ社会の中に生きるクリーン・コンシューマーの一人として、ゴミと向き合っていきたいと考える。