Kumamotos011119
地方自治論ノート
動物と人間に関わる行政
人間はその誕生から現在に至るまで多くの動物と生活を共にしてきた。古くは獲物として、また、家畜や猟犬など生活の重要な位置を占めてきた。
そして現在はペットという愛玩の対象として、生活を共にする人も多い。
しかしながら、その数の増加により、行政は人間のみならず、我々と直接対話することのない動物についても考えざるを得なくなった。
私はその動物と人間に関係する行政のありかたについて考えてみたい。
いわゆる「動物行政」だが、その起こりは、「動物の保護および管理に関する法律」(昭和48年10月1日公布)の制定にあると思われる。
目的は、第一条に この法律は、動物の虐待の防止、動物の適正な取扱いその他動物の保護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止することを目的とする と記載されていた。そしてこの法律は法改正により、法律名が「動物の愛護及び管理に関する法律」に変わるとともに、動物取扱業者の届出制や愛護動物をみだりに殺傷し又は虐待した者、及び遺棄した者に対する罰則規定の改正等が盛り込まれた。この法改正の背景には少子化、核家族化の進む中、犬やねこ等のペットは、単なる愛玩動物ではなく、家族の一員、人生の伴侶であるとの認識が高まってきたこと、その一方で、無責任な飼い主によるペットの遺棄、不適切な飼養、また動物への虐待等の問題が社会的な関心となったことがあげられ、改正の概要としては
(1) 法律名及び基本原則の改正
法律名が、「動物の愛護及び管理に関する法律」と改められた。
また、基本原則に「動物が命あるものであること」、「人と動物の共生に配慮すること」の2点が追加。
(2) 動物所有者又は占有者の責務等の強化
動物の所有者又は占有者は、命あるものである動物の所有者等としての責任を十分に自覚し、その動物を適正に飼養又は保管することによって、動物の健康及び安全を保持するとともに、動物による人の生命、身体若しくは財産に対する侵害や迷惑行為の防止に努めなければならない。
さらに、次の事項も新たに飼い主等の責務に追加。
[1] 自分が飼っている動物に起因する感染症の疾病について正しい知識を持つこと。
[2] 動物の所有者を明らかにするような措置を取ること。
(3) 動物販売業者の責務
動物販売業者は、購入者に対して、販売する動物の適正な飼養又は保管の方法について、必要な説明を行い、理解させるよう努めなければならない。
(4) 動物取扱業の規制
[1] 動物取扱業の届出
動物(哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの。畜産農業目的や試験研究用、ワクチン等の生物学的製剤の製造の用等のために飼養又は保管しているものを除きます。)を飼養又は保管するための施設を設置して、動物取扱業を営もうとする人は、都道府県知事又は指定都市の長(以下「知事等」という。)に届け出なければならない。
[2] 届出の必要な動物取扱業の業種は、動物の販売、保管(ペットホテル)、貸出し、訓練、展示、その他政令で定める業。
[3] 動物取扱業者は、届出事項に変更があった場合、施設の使用を廃止した場合にも知事等に届け出なければならない。
[4] 知事等は、動物取扱業者が、その施設や動物の取扱いにつき、環境省令(動物取扱業に係る飼養施設の構造及び動物の管理の方法等に関する基準)で定める基準を遵守しない場合には、改善すべきことを勧告及び命令できることとなった。
[5] 知事等は、必要な限度において、動物取扱業者に対し、必要な報告を求め、又は立入検査できることとなった。
(5) 周辺の生活環境の保全に係る措置
知事等は、多数の動物の飼養又は保管により、周辺の生活環境が損なわれているものとして、環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、必要な措置をとるよう勧告及び命令できることとなった。
(6) 動物愛護担当職員及び動物愛護推進員
地方公共団体は、動物取扱業者への立入検査や動物の愛護と管理に関する事務を行わせるために、動物愛護担当職員等を置くことができることとなった。
また、地域における動物の愛護と適正な飼養の推進につき、動物愛護推進員を委嘱することができることとなった。
(7) 罰則規定の改正
虐待や遺棄に対する罰則の適用対象(愛護動物)として、新たに飼育されている爬虫類が追加。
* 愛護動物とは、牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる並びにこれ以外で人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの。
また、愛護動物を
a.みだりに殺傷した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
b.給餌・給水をやめること等により、みだりに虐待し、又は遺棄した者は、30万円以下の罰金に処される。
その他、動物取扱業の届出違反や立入調査の拒否等に対する罰則規定が新たに設置された。
「動物の愛護及び管理に関する法律」改正の概要についてより引用(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/gaiyo.html)*語尾はクマモトが変換
となっている。近年の動物に関わる問題についてより深く、厳しい規定となっているが、そうせざるを得ない行政のとりうる方法としてどのような政策があるのだろうか。
東京都衛生局生活環境部獣医衛生課(http://www.eisei.metro.tokyo.jp/vet/)のHPに様々な動物行政の項目があった。その例は
@ 迷い犬・迷い猫捜せます!(東京都動物保護相談センターで収容している動物の画像付き情報をインターネットで提供)
A 動物保護相談センターにおける「犬のしつけ方教室」のお知らせ(市民にむけ犬についての正しい知識を広める)
B 動物取扱主任者講習会のお知らせ(講習の後、登録できる仕組み)
また、これらの他に動物行政に関するページとして
飼い主のいない猫との共生モデルプラン |
動物取扱業を営まれる方へ |
など、市民に広く情報の提供を行うシステムを展開している。これは、ペットの育成が飼い主のモラルに大きく影響されること、また、野良犬、野良猫や、ペットを飼っている家の近所など、一般市民の生活への影響なども考慮されているからだ。
しかし、捨て犬、捨て猫や、それが野生化したものなどについての政策は乏しい。今回はその現状と問題、対策などについてHPなどから考えてみたい。20011119MON熊本真一