ashitomir011213 「地方自治論」レポート

「グリーン・ツーリズムについて」 K000102 安次富 梨乃

 

 グリーンツーリズムとは、簡単にいえば、農村や漁村などで休暇を過ごすことである。農業や漁業を体験したりする休暇であり、最近ではこのような休暇を過ごす人も増えてきたようだ。しかし、一般的には「グリーン・ツーリズム」という言葉はまだ浸透していないようである。今回はグリーン・ツーリズムの定義、目的をみたうえで地方の取り組みや事例をあげていく。

 

1.グリーン・ツーリズムとは

  「一般的にグリーン・ツーリズムとは、自然の豊かな地域で農家民宿などを利用して自然などと親しむ余暇活動で、以下の内容に集約されます。

.あるがままの自然の中でのツーリズム(農林漁業体験を含む観光旅行)

      .サービスの主体が農家などそこで居住している人々の手によるもの

      .農山漁村の持つ様々な資源・生活・文化的ストック等を都市住民と地域住民との交流を活かしながら、地域社会の活力の維持に貢献するもの」

 グリーンツーリズムホームページよりhttp://www.greentourism.gr.jp/gt/gt1.html

グリーン・ツーリズムは「緑豊かな農山漁村において、その地域の自然や文化、人々との交流を楽しむ、滞在型の余暇活動のことであり、ひとことで言うと、『農村で楽しむゆとりある休暇』」(グリーン・ツーリズム研究会報告)とされている。グリーン・ツーリズムの始まりはドイツ・バイエルン州といわれており、現在ではドイツ、イギリスをはじめヨーロッパ諸国で定着している休暇形態である。日本においては農林水産省が積極的にグリーン・ツーリズムに取り組んでおり、平成6年には「農村漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」が制定され、平成741日に施行された。(財)農林漁村体験協会では農林水産大臣から指定を受け、農林漁業体験民宿の登録業務を行っている。平成103月現在では851軒が登録されている。グリーン・ツーリズムは、「大規模な開発は行わず、地域資源を最大限に活用し、こころのふれあい等、人間交流の面を重視し、農山漁村の自然や社会を破壊せず、これを育てるものでなければならい」とも規定されている。このようなところが「民間事業者の能力の活用に重点をおいた大規模開発と結合した余暇活動」としてのリゾートの概念の違うところである。

 

2.グリーン・ツーリズムの目的

グリーン・ツーリズムは何よりも、そこで農業を営む人やそこに住む人が、ゆとりと活力のある生活をするために役立つものであり、その地域の農業・経済・文化等の復興に貢献するものでなければならない。農村の自然や文化・伝統・歴史などを求める都市住民に対して様々な形で体験として提供し、また都市住民の活力を次の地域文化発展に向けて活用するものである。グリーンツーリズムは地域づくりの一つの方法であり、人々の交流を通しての農村への理解、農村の活性化が目的である。しかし、グリーン・ツーリズムの対象となるのは日本全国すべての地域・市町村ではなく、農業が存在することを前提とし、さらに農業条件のよくない地域を重点的に活性化するための方策であり、条件不利地帯といわれる中山間地がその中心となる。農家民宿、体験農家などをする場合はその土地の環境や地域資源、特質を生かしその土地にあったグリーン・ツーリズムをすることが地域の活性化につながる。農村側の地域づくりと都市側の農村への余暇利用ニーズを双方が分かち合った共生関係を保った上で、農家民宿や農家レストラン等による農家の副業的所得の確保、農村の美しい景観づくりと村づくり、農林水産業・農産漁村に対すると都市住民の理解促進、また若者のUターンや地域住民の定住の促進および女性・高齢者の主体的な活動の場の提供等による地域の活性化等が期待できる。

 

*3.グリーン・ツーリズムの構成要素とネットワーク

 グリーン・ツーリズムの基本的な要素な構成要素は、次の通りである。

(1)   施設的なもの

@     農家民宿

A     農家レストラン

B     農産物加工施設・販売施設(直売や宅配)

C     農業・農村体験や学習のための施設

D     自然とふれあい歩き回るための道路やサイクリングロード

(2)   機能的なもの

@     美しい農村景観

A     農産物・自然・史跡・郷土料理などの有形の地域資源

B     文化・伝統・芸能・習慣などの無形の地域資源

C     衛生的な生活環境

これらが単独で機能し完結するのではなくて、お互いに関連・協力しながらネットワークを組み、有機的に結合したものでなければならない。

 例えば、農産物の加工品は、農家民宿や農家レストランでの販売と関連してくるし、農家民宿の宿泊者は実際の農業体験を通じて農村の伝統・文化・史跡や美しい豊かな景観を直接ふれあうことができる。

 また、農家レストランで地場で採れた農産物をもとにした郷土料理の食事をとったり、農産加工品を買ったりするなどの例の通り、お互いに関連しあって機能している。

また、地域内のネットワーク整備のためには、道路整備やサイクリングロード・散歩道の整備も必要となる。

 このような構成要素間のネットワークを充実させ、情報の提供・交換や収集を図ることが、地域のグリーン・ツーリズム推進にとって、重要なものである。さらに、地域内の各種構成要素間のネットワークのほかに、他グループや団体との交流、他の地域との情報交換、全国的なネットワークに発展させていくこと、また、効果を一層波及させるためには、単独の活動だけでなく、数か市町村や数地域間の連携も念頭にいれておかなければならない。

 

4.国および地方の取り組み

農林水産省;農業・農村の過疎化、高齢化が進行する中で、平成46月ガットウルグアイラウンド農業合意の実施に伴い、「新政策(新しい食料・農業・農村政策の方向)」を提唱し、中山間地域対策を中心に重要な農政課題の一つに位置づけ、グリーン・ツーリズムを地域活性の有効な手段として取り上げ、行政支援を開始した。支援策として「グリーン・ツーリズム研究会」を設置し、グリーン・ツーリズムの推進方策の方向等について検討を行い、同年7月には中間報告がまとめられた。平成74月には「農山漁村滞在型余暇活動促進法」を施行した。平成1012月の農政改革大綱においては、グリーン・ツーリズム等都市と農村の交流が国民的運動として定着するようソフト・ハード両面からの条件整備を行うこととされた。平成11712日には上記の農政改革大綱をふまえた「食料・農業・農村基本法」が成立した。

 参照:農林水産省 グリーン・ツーリズム都市農村交流のページhttp://www.maff.go.jp/soshiki/koukai/gt/frame.htm

 

「厚生省;従来から進められている健康文化都市の構想に新たにグリーン・ツーリ

ズムの視点を組み込み、都市農村交流の事業の積極的な展開を目指している。

 また、森林の健康機能性を捕らえたフォレストヘルスなどもグリーン・ツーリズ

ムの一貫といえる。

 

建設省;海岸の保全と健康利用を目的とし1998年より実施計画に移った「健康海岸

構想」を推進する補助事業は、海洋国日本におけるグリーン・ツーリズムの新たな方向性として注意深いものがある。また、従来から進められている「道の駅」など宿泊は無いが形を変えたグリーン・ツーリズムへの試みと考えられる。」

               (グリーンツーリズムネットワークHPより)

*地方の農業改良普及センター;

 普及員は地域経営のトータルコーディネーターとして活動する。

 ○準備段階

     地域住民の意向や要望の把握

     グリーン・ツーリズム導入の可否の判断

 

     構想を立てる前に

     市町村計画に参画、一体的に推進

     地域合意、住民参画、住民主体の原則の確認

     普及センターは総合力を発揮する体制を組み、役割分担の明確化

 

     普及員の援助・指導活動内容

     グリーン・ツーリズム対応地域ビジョン案の作成

     合意形成、計画作成への誘導、ソフト・ハード事業計画への誘導

     地域推進体制づくりと活動案作成(人材活用と育成、実践組織づくり)

     住民参画への準備と蓄積

・ワークショップ、環境点検等

・地域資源調査等

・展開ステップ案の作成

例)沖縄県の農業改良普及センター

  ・南部地区グリーン・ツーリズム実践者養成講座 平成138月から平成141月まで計8回を予定/南部農業改良普及センター

     グリーン・ツーリズム養成講座/中部農業改良普及センター、八重山農業改良普及センター

     「しまじりグリーンツーリズム研究会」(金城清郎会長)

島尻郡の地域特性を生かしたグリーン・ツーリズムの在り方を考えようと、農業、観光業、行政、地域おこし関係者らが集まり発足。(平成12年5月)

月一回の定期研究会などを通して、実践に向けた意見をまとめ提起していく。

 

5.沖縄県内におけるグリーン・ツーリズムの事例

  ・東村(ひがしそん);東村では県外からの修学旅行生を対象にグリーン・ツーリズムを行っている。平成12年には埼玉県の「自由の森学園」の中学生約40人が訪れ、農家にホームステイし、農作物の収穫を体験したり、海岸でキャンプをしながら漁業を体験するなど、地域交流を取り入れたプログラムを実施した。

  平成12年には県外から90校の修学旅行生が東村を訪れ、平成13年には128校の予約があるという。

     「海の学校」;平成711月設立。今井輝光校長。伊平屋村(いへやそん)の漁業組合と提携して、体験漁業やマリンスポーツなど島の自然を活用している。 

             905−0703

             沖縄県島尻郡伊平屋村字我喜屋217-30

             (伊平屋漁業内/沖縄伊平屋島本校)

      http://www.maff.go.jp/soshiki/nouson_sinkou/nousonseisakuka/nousonkouryu/kouryu/hyakusen/jirei/kyushu/kyus30.html)紹介ページ

 

 沖縄は自然に恵まれ、文化的特長を強くもった県である。その地域の特性を生かして、漁業体験、農業体験、伝統工芸体験など、さまざまなグリーン・ツーリズムが行われている。特に経済的振興が他地域に比べおくれている北部では県外からの修学旅行生を対象とした体験学習を多く行っている。それぞれの地域が、その地域の環境、地域資源などをうまく活用し、市町村、住民、学校などが一体となり地元活性化のためグリーン・ツーリズムを促進している。沖縄でのグリーン・ツーリズムについては「沖縄タイムス」のキーワード検索でサーチした。興味のある方は参考にしてほしい。http://www.okinawatimes.co.jp/)  

 

6.まとめ

 今日、日本でグリーン・ツーリズムが話題となっているのには日本人のふるさと離れ、農山漁村の過疎化が大きな理由としてあげられるだろう。戦後の高度経済成長により、多くの人が地方から都市部へ移動した。今では8割近くの人が都市部に住み、一方農山漁村では人口が激減し、「過密化・過疎化」の問題が深刻な問題が生まれた。都市においては、自然の消失、長時間の労働による疲労、生活における疎外感・孤独感や煩わしい人間関係など、精神的に人々は疲れている。また都市で育った子供たちにとって農業は遠い存在になり、野菜の育ち方も知らない子がいるのはあたりまえになってしまった。農山漁村では、都市部に比べて20年先取りした高齢化社会の到来、後継者不足や荒廃地の増加など、危機的状況の集落が増えている。このような状況の中、都市住民と農山漁村の住民との交流をはかり、農山漁村にとっては地域活性化を目指した、都市住民にとっては農山漁村の自然、文化、そして人々とのふれあいを楽しむ余暇活動であるグリーン・ツーリズムが求められ、注目を集めているのだろう。

 

参考資料:沖縄県中部農業改良普及センター「グリーン・ツーリズム養成講座」資料より

     (なお、*は引用)