Abet011203         「地方自治論」レポート    

     

 

テーマ:自転車と市民生活

000103 阿部 誉子

 

 

1、はじめに

私たちは日常生活の中で様々な交通手段を持っている。その中でも、子供から大人まで幅広く気軽に利用できるのは自転車である。そのため自転車が最も日常生活に根付いた乗り物であるといっても、過言ではないと思う。

私は大学に通学するために毎日自転車を利用している。そして引っ越してきて現在生活しているこの宇都宮市では、「サイクルシティ宇都宮」というテーマで「まちづくり」「ひとづくり」を目指している。だが良い意味で「自転車の街」と掲げていても、先日テレビの報道番組では宇都宮市の迷惑自転車(暴走・放置)に関する取材が流れた。自転車には利点もあれば問題点もある。それらがどのようなものであり、対策がどう行われているのか考えてみたい。

 

     サイクルシティ宇都宮  宇都宮市はロードレースの世界選手権やジャパンカップが行われる街である。またそれと同時に宇都宮市の都市問題である交通渋滞や、危険性が指摘される自転車交通の改善などを含めて、健康で環境にやさしい面を利用し、自転車をキーワードとした街づくりを目指す。

(引用HP  http://www2.justnet.ne.jp/~RPItochigi/tochigi/05cycle/05link06.htm) 

 

 

2、自転車の利点

 ここでは自転車の主な利点について考えてみたい

 

(1)手軽な移動手段である。

供から大人まで乗ることができ、近距離への移動に適している。これは自転車の最大の利点であると思われる。

 

(2)車などのように維持費がかからない。

    自転車は買ってしまえば、修理の必要がない限り経費がほとんどかからない。   

 

(3)健康に良い。

    

(4)境にやさしい(二酸化炭素を排出しない)。 

      地球温暖化防止のために二酸化炭素の排出量の削減が叫ばれている今、自転車は排気ガスも出さず、交通渋滞も起こさない最も環境的な乗り物である。そんな中、海外では自転車推進のために様々な対策がなされている。例えばノルウェーでは自転車通勤を企業の従業員に勧め、自転車利用率の高い会社に政府から奨励金が出されている。このように自転車の利用者を増やすことで、地球環境を守ることに繋がるのである。

 

 (参考HP 脱クルマ社会http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/ecology/eco/eco12.html

 

 

これらのように自転車には人間だけではなく、環境にも有益である。人々が自動車を利用するようになった今、私たちは自転車の利点を再確認する必要がある。

 

 

3、自転車の問題点 

前項で自転車に関する様々な利点について述べたが、当然問題点も考えられる。それらは、乗っている本人からみたものと、第三者から見た問題の二つの観点があると思われる。これらの問題がどのようなものであり、また行政側からどのようなアプローチがあるのか考えてみたい。

 

(1)乗る側からの視点

     自転車はどこを走るべきか。

自転車が歩道または車道を走るため危険である。実際のところ、自転車は車道走行が定められている。だが車道を走ることで自動車との事故の可能性もあるため危険であり、自転車は歩道を走ってしまう。そうすると今度は歩行者、またはすれ違いざまの自転車と接触する危険性も出てきてしまう。

(*道路交通法第二条 三の三 自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。)

 

・ 路面の問題

やむを得ず歩道を走る場合でも、路面は平らではなく凹凸部分が多い。また車道から歩道に乗り上げる際の縁石は、斜度が急で危険な部分が多い。この問題は自転車に限らす、特にお年寄りや障害者に対しても危険であると思われる。

 

これらに対して私たちは間接的な行動、つまり自転車の安全性を確保してほしいと訴えることはできるが、直接的な行動はどんなに努力してもできないのである。行政側からはどのようなアプローチあるのだろうか。宇都宮市議会での「安心して自転車に乗れる街づくり」関する発言に触れたみたい。

 

@     自転車専用道路の建設

A     商店などの駐車スペースから車が歩道にはみ出さないような方策

B     自転車を乗せたバスを走らせられないか 

                    (参考HP  http://homepage2.nifty.com/koojima/sub5.htm

 

 などが挙げられる。また環境への配慮として月に一度サイクリングデーを作り、片道5キロ以内の車通勤を自転車に切り替える運動をしてはどうか、という発言もある。宇都宮市はサイクルシティとしての名乗りをあげているのだから、もっと自転車を安全に乗り、また推進していく姿勢が大切なのではないだろか。  

自転車用専用道路について更に述べると、例えばドイツ、デンマークでは、歩道、車道、自転車道は明確に区別されている。日本では自転車道という認識が弱いのではないだろうか。以前宇都宮市内で初めて自転車専用の道路を見かけた。それを見た印象としては、自転車の安全性が確保されている分、車道が1車線しかなく、しかもかなり狭いということだ。自転車は安全であっても、あの状態では今度は車の交通の流れが悪くなるのではないかと感じた。そして逆に、1車線しかないようなあまり交通量が多くない場所でしか、自転車の安全性は確保されないのかとも考えられる。横断歩道では歩行者と自転車が通る部分を区別している所も見られるが、両者または、自転車と自動車の安全性を考えるとそれだけでは十分ではない。だからといって自転車用道路の整備は簡単にできるものではないのだ。新しく造られる道路に関しては配慮することは可能でも、既設の道路に関しては限界がある。その点に関しては、自転車専用道路を造るまではできなくとも路面の凹凸を改善するなどのように、少しでも安全に走行できるような環境が望まれる。

 

(参考HP バークレー市の自転車用道路の増設  http://eco.goo.ne.jp/california/files/traffic/bike1.html

 

 

(2)第三者者からの視点

・ 放置自転車問題

     この問題は自転車が存在する限り解決できないのではないか、というほどどこの街にでもある問題であると思う。放置自転車は主に駅周辺や商店街など人がにぎわう場所に多く見られる。どちらにしても自動車、人々の交通の妨げになる厄介なものである。しかしながら放置しているのは、まぎれもなく私たちなのだ。「ほんの少しで戻ってくるから」「他の人もしているから」が積もりに積もって膨大な量の自転車が放置されていくのだ。子供や高齢者、障害者にとってみれば事故に合う可能性も含んでいる。

 

     では自転車が放置される理由は何か。それは先にも述べたように、私たちに甘えの心があるからである。またそれとは別に考えられる理由として、駐輪場 が関係していると思われる。駐輪場が整備されていない、場所が遠い、有料であるというようなことが挙げられる。しかしながら「有料」については駐輪場を維持していくためにはやむを得ないし、例えば宇都宮駅東口にある駐輪場では2時間無料で、それを超えると100円〜と高額とは言えない。考慮すべきは駐輪場の整備とその場所である。ある程度は私たちも駐輪場から目的地まで歩くことを当然としなければならない。だがせっかく駐輪場を造ったのにあまりにも不便な場所にあると、利用者は確保できないだろう。住民にアンケートを取るなどして、どこに造れば最も価値があるのかを考える必要がある。そして忘れてはならないのは、自転車を利用する一個人として、またその街に住む一市民としてマナーを守ることが大切である。

 

 

  @放置自転車の撤去業務

     放置自転車に関して行政が行う主な対策として、強制的に自転車を撤去する方法がある。これは条例(放置自転車条例)に基づき、自治体が指定した自転車等の放置禁止区域において、自治体職員の指示に従い放置自転車等を撤去用車輌に積載し、指定された集積場所まで搬送のうえ荷下ろす、という順序で行われている。 撤去後はすぐに廃棄処分されるのではなく、返還手続きが行われ持ち主へ自転車を保管していることを通知する。持ち主は印鑑や身分証明書、返還料などを提示することで自転車を受け取ることができる。実際私も以前自転車の盗難にあい、自転車そのまま放置・撤去され、返還通知書を受け取ったことがあるが、その時は返還場所がかなり遠く場所もわからなかったので、結局受け取りに行かなかった。

    ところで自転車撤去には税金が使われている。2000年、東京都の荒川区では自転車税の導入を検討したが、反対意見が多く取り下げられた。放置自転車撤去にかかる費用を少しでも削減しようという考えから出た案だったが、もとはと言えば自転車を放置する住民に原因があったのだ。無くなることのない放置自転車と、ほんの少しのマナーがあれば失われることはない税金。もっと別の街づくりにその税金を生かしていけたら良いのではないだろうか。

 

 

(引用HP  都市環境整備株式会社 日本唯一の放置自転車対策一貫業務専門企業

                            http://www.richu.co.jp/services/toshikankyo.htm

 

                         (参考HP  荒川区の自転車税の波紋http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2000/12/04/news_day/n1.html

 

 

 

 

A撤去後の自転車の活用

撤去された放置自転車はある一定期間は保管され、持ち主に返却される場合もあるが、持ち主が現れなかった場合は廃棄処分になってしまう。そこで廃棄処分になる自転車を再利用する試みが注目されている。以下、どのようなリサイクル法があるか述べてみたい。

 

・リサイクル自転車を安値で販売。

   修理・再生・販売を行い自転車のリサイクルを図る。中古であるため安値で販売する。またその事業をシルバー人材センターに委託することが多く、高齢者の雇用にも貢献している。販売は抽選で行われる場合もある。

 

   ・外国(発展途上国)への寄贈

      途上国へ無償で輸出し寄贈する。グローバル的なリサイクル活動である。

     (参考HP  http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/2000/12/04/news_day/n1.html

      

   ・リサイクル自転車の貸し出し

     観光用または買い物用に、自転車を貸し出しする。

 

     (参考HP  http://www.komei.or.jp/komei_news/contents/2001/08/01/009.htm) 

 

 

  自転車もペットボトルや空き缶のようにリサイクルの時代がやってきたのだ。だが何より望ましいのは、リサイクルされるということよりも私たちが自転車を放置しないことにある。そしてリサイクルされ販売された自転車また放置されないことを望みたい。資源としての自転車を私たちはより大切に利用していくべきである。

 

 

4、自転車と私たち   

 これまで自転車の利点と問題点について述べてきたが、私たちが普段何気なく利用している乗り物について、行政側からどのようなアプローチがされているのかを知ることができたと思う。それと同時に行政に頼ってばかりでは、何も解決することができない問題もあることを知った。特に放置自転車問題に関しては、私たちが問題意識を持たなければ変えられないことなのだ。

 今後、自転車はその価値をさらに再認識される時代がやってくる。自転車とうまく付き合い、利用していける社会・生活を行政側と市民が協力してつくりあげていくことが課題であると思われる。