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上原紗由美「日本の環境税導入の是非」                   

 

1環境税とは

最近は原発問題などが大きく取り上げられており環境問題についてニュース等で触れられる機会が減少している。だが時間は止まることはなく、人々の問題意識の有無に関わらず地球環境は汚染されていっている。そのような環境汚染に歯止めをかける切り札となり得る「環境税」に興味を持った。

 

まず、環境税について説明したい。環境税は間接税かつ目的税である。税制による地球温暖化対策を強化するとともに、エネルギー起源CO₂排出抑制のための諸施策を実施していく観点から導入するものである。具体的には、原油やガス、石炭といった全化石燃料に対してCO₂排出量に応じた税率を課すものだ。税収は、エネルギー起源のCO₂削減対策に効果のある、産業・民生・運輸といった広範な分野への対策に活用する。具体的には家庭用の低炭素機器の普及促進、未利用熱の面的利用の促進、温暖化対策投資の推進だ。このようなことに税収を充てることにより家庭・企業の温暖化対策を支援し、税負担の軽減と新たな需要・イノベーションを喚起することを期待しているのだ[1]


 

現在、環境税はフィンランド、ノルウェー、オランダ、イギリス、ドイツなど欧州各国で導入されているのになぜ、日本は導入されていないのだろうか。理由としては景気の悪い日本に新税を導入すると景気回復に水を差すことになるからだ。主にエネルギーを多く消費しているのは産業分野であり、増税となると国内の産業空洞化に拍車をかけることになりかねない。導入していない国も数多くある中、日本が導入すると原価が上がり輸出競争力の低下を招き、経済が減速する恐れがあると懸念されている。また、ガソリン税や石油税などが既にかけられており、その上に環境税が導入されると過重に税を徴収しているという反対意見がある[2]

 

環境税を導入している国もあるのだから環境税にはメリットもある。価格が上昇するので、化石燃料の使用が節約される。また、価格上昇は省エネ投資の促進、低炭素集約型の製品への代替促進といったインセンティブ効果が期待され、税収を省エネ技術の開発など温暖化防止対策に使用することができる。汚染者に汚染費用を負担させることにより汚染者に改善しようという気を起させる効果がある[3]

 

2ドイツの事例

ここで環境税導入に成功したドイツの事例を挙げたいと思う。1994年、グリーンピースがベルリン・ドイツ経済研究所に調査を委託し、一般的な経済的効果の観点から環境税導入はプラスとなるとの結果報告を得た。その後1998年に緑の党が同年の選挙対策として提唱し現在の連立政権における税制改革の一環として環境税が19994月に導入された[4]1999年には既存のエネルギー税制である鉱油税を引き上げた。そして鉱油税の対象外である電気に対して新たに電気税を導入した。2006年には鉱油税の対象を石炭に拡大してエネルギー税を改組した。これらの税の使途は税収の大半社会保険料の負担軽減に充て、再生可能エネルギーの普及等の環境政策に充てている。ドイツでは環境税は社会保障の充実、雇用促進に大きく寄与している。2008年のデータで少し古いものだが、環境税による税収の額だ。エネルギー税は3941600EUR1686億円)であり全税収の3.99%、電気税 では626200EUR9546億円)であり全税収の0.63%にあたる。ドイツは2010年には1990年比でCO₂排出量を18.9%削減したそうだ。このデータは環境税を導入したことによる効果の表れだと思う[5]

 

3地球の未来を考える

ここからは私個人の意見を述べたいと思う。私は環境税導入に賛成だ。なんでも税によって規制すれば良いというわけではないと思うが、地球環境問題は環境を汚染している人間自身が自分の首を絞めている問題である。だから、人間が負担を抱えても仕方がないことだと思う。身をもって地球が汚染されていることを感じる機会はほとんどなく、身近な問題と捉えることが難しい。だから、家庭では地球に優しい生活を送ろうという気にもなかなかなれないのだ。また、CO₂を多く排出しているのは企業であり、企業はやはり利益重視に運営していると思うので、地球環境にまで視野を広げて運営するのは難しいと思う。企業アピールとして「環境保全に取り組んでいます」ということを目にすることもあるが本質的に環境について考えているのか疑問を感じる。CO₂排出に税をかければ人間心理として無駄なお金は使いたくないと思い、無駄なCO2を出すことをやめるはずだ。

 

以前テレビで南太平洋に浮かぶ島国ツバルについて見たことがある。元々海抜の低い国ではあるが近年、満潮時に浸る部分が増え、家にまで浸水してきているようである。また、大潮のときには今までにないような洪水の被害を受けているそうだ。ツバルの海面上昇には温暖化によるものという説と地盤沈下によるものという説があるが原因が地球温暖化にある可能性もあるのなら、同じ地球に住んでいる人間が苦しんでいるのだから何らかの対策を打ち出すべきだと思う。実際、ツバルの人々は自給自足の生活をしており、エネルギーはあまり使っていない。先進国の人間の欲得のしわ寄せがツバルの人々にきている。先進国の人間のせいでツバルの人々の笑顔が消えてしまうかもしれない。そんなことは決してあってはいけない。先進国である欧州の国々が環境税を導入しているのだから日本もその流れに乗るべきだと思う。何の罪もないツバルの人間だけが痛手を被り、日本人が平然と快適な生活を送るためにエネルギー使い続けているのはおかしいと思う。

 

今、多く排出している国は新興国と呼ばれる中国やインドだ。かつての日本のような高度経済成長期であり開発が目覚ましい。世界的に見てCO₂排出大国である国が環境税を導入しないのに、なぜ日本が導入しなければならないのか。また、先進国であり、CO₂排出量世界2位である米国もまだ導入していないのになぜ日本が導入しなければならないのか。このような疑問を日本国民は抱くと思うが、日本がこんなに経済発展した背景には1970年代の高度経済成長があり、日本も多くのCO₂を排出したはずだ。その時代に懸命に開発をした人々の努力がある。そのような人々に恩返しをする意味でもCO₂排出量削減に取り組むべきだと思う。

 

私の父の職場では、東日本大震災による節電対策としては、使用していないエリア、昼休みの消灯、暖房設定温度19度、OA機器の省エネモードなどを行っているそうだ。また、環境報告書を毎年発行しており、環境配慮活動や環境負荷データとその低減対策などについて記されている。昨年夏の「大口需要家は15%削減」という法律を制定した効果もあるかもしれないが、身近なところでも、積極的に節電に取り組んでいて、人々の意識が少しずつ変わろうとしているのかなと感じた。

 

中国、インドのCO₂排出量増加の背景には人口増加ということがある。日本の人口は減少に転じているが、世界の人口はますます増加し、2050年には90億人を突破すると推定されている。これから先、何の対策も施さなければ、地球全体のCO₂排出量が増えることは目に見えている。目に見えているのに何も対策を打ち出さないのは何も見えていないことと同じことだ。環境税を導入すれば国民は否応なしにCO₂削減に取り組み始めるはずだ。1997年に締結された京都議定書の締結内容である「1990年比でマイナス6%」は未だ達成されておらず、達成されないまま期限が切れそうだ。日本は京都議定書延長に不参加だ。13年以降の空白の期間にこのまま何もしないのか。「万里の道は一歩から」というように、何か一歩踏み出さなければ状況は何も変わらない。その一歩として「環境税導入」を踏み切るべきだと思う。



[1]環境省HP「税制のグリーン化」(201112月現在) http://www.env.go.jp/policy/tax/about.html

[2] 環境税とは?http://eco.ninpou.jp/009tax.html

[3]環境税の本質http://park10.wakwak.com/~ooki/sub11.html

[4]3章ドイツhttp://www.meti.go.jp/policy/global_environment/report/chapter3.pdf

[5]みずほ政策インサントHP「海外の先行事例にみる環境税の有効性」

http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/policy-insight/MSI110331.pdf