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樽井 駿「福島第一原発事故に対する国の対応と福島の実態」

 

1.福島第一原発事故

 

2011311日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)によって引き起こされた福島第一原発事故は、日本および世界における最大規模の原子力事故である。今回のこの事故は、想像以上の巨大地震、大津波といった天災が原因で、炉心溶融および水素爆発が発生するまでに至ったのも、米国メーカー設計の原子炉容器が大きく損傷して大量の放射能が外部へ漏れ出したのも、今回の原発事故が原子力発電史上初めてである。

 

ここで炉心溶融とは、原子炉の温度が上がりすぎ、燃料棒が溶けて破損する事故のことである。冷却水が失われて炉心の水位が下がり、燃料棒が水面上に露出した場合、燃料棒中の放射性物質の崩壊熱が除去できず、温度上昇が続くために起こる。炉心全体や大半が溶け落ちるのは「メルトダウン」と呼ばれ、想定される原子力事故の中でも最悪の事態とされている。水素爆発とは、水素が酸素と反応して起きる爆発のことである。福島第一原発事故の場合、一部の原子炉で水位が低下し、核燃料が露出して「炉心溶融」の状態が起き、燃料を覆う被覆管の金属ジルコニウムと水蒸気が化学反応し、原因となる水素を発生させたとみられている。

 

今回のこの福島第一原発事故は、国際原子力事象評価尺度のレベル7(深刻な事故)に相当する多量の放射性物質が外部へ漏れ出た。一刻も早い事故の収束が求められている[]

 

 

2.事故発生時の国の対応の実態

 

東日本大震災によって東京電力福島第一原発、第二原発に津波が襲来。電源喪失により、炉心の冷却が止まってしまった。国は法に基づいて緊急事態を宣言した。原子力災害対策本部を設置したが、現地の拠点施設も被災してしまったため、現場から東電の本店、政府対策本部への情報が不足し、当時の首相であった菅直人首相が自らヘリコプターで福島第一原発の現場に入り、指示をするという事態となってしまった。福島原発事故の初期対応に対する不手際を批判する声が高まり、後に政府は、東電との間で十分なコミュニケーションが取れなかったことを認めた。

 

事故発生直後、政府は福島原発から距離が近い住民の放射能汚染を懸念し、避難勧告を言い渡した。しかし、政府は「原発から半径20キロ圏内の住民はただちに避難してください。」といったものや、「その地域にいる場合、100ミリシーベルト被ばくしてしまいます。」、「ただちに健康に影響を及ぼすことはありません。」といった説明ばかりでどんな影響が私たちの身に起こるのかなど何の詳しい説明もなかったために、福島県民、さらには国民の不安をよりいっそう強めてしまう形となってしまった。事故発生直後の政府の説明はあやふやなものばかりだった。そのため、運送業者は福島県内へ立ち入ることを拒み、さまざまな物資の運送が滞るという事態が起き、政府側の言動に不安に思った人々は避難もしくは屋内退避を余儀なくされた。

 

最近は、ベクレルやシーベルトという言葉をニュースなどで頻繁に耳にしており、その言葉の意味がわかる人々も多くいると思うが、事故発生直後に初めて耳にしたという人々も少なくないだろう。簡単に説明すると、ベクレルというものは、放射能を出す能力(放射能)の強さを表す単位である。ここで、ベクレルだけでは私たちの身体への影響がわからないので、そこで用いられるのがシーベルトという単位である。シーベルトは、放射線が人体に与える影響を表す単位である。電球に例えて説明すると、光の強さそのものがベクレルであり、電球からの距離によって異なる明るさがシーベルトである。シーベルトに関して、1シーベルトの1000分の1がミリシーベルトで、さらに1000分の1がマイクロシーベルトである。

 

原発に関する知識の薄い人々は、事故発生直後の政府の対応だけでは明らかに不十分なものであり、原発に対する不安が大きかったことは間違いないだろう。事故発生時の政府の対応には、多くの不満の声があがっている。

 

 

3.警戒区域と計画的避難区域、緊急時避難準備区域

 

政府は事故発生後、警戒区域と計画的避難区域、緊急避難準備区域をそれぞれ定めた。警戒区域とは、福島第一原発から海域を含む半径20キロメートル圏内のことであり、昨年4月22日、福島県内の9市町村を警戒区域に設定した。計画的避難区域とは、警戒区域と同様に昨年4月22日に原子力災害対策特別措置法に基づき設定され、事故発生から1年以内の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある区域のことである。この計画的避難区域で一番に上がってくるのが、飯館村である。飯館村の役場は、福島第一原発の北西40キロに位置しているが、とても高い放射線量が計測されている。さらに、緊急時避難準備区域とは、福島原発から半径20〜30キロ圏内の地域の中で、警戒区域の外ではあるが福島原発の事故が安定していないため、今後なお、緊急時に屋内退避や避難の対応が求められる可能性が否定できない状況にある区域のことである。福島県の5市町村を対象に政府が、原子力災害対策特別措置法に基づき指定した。子供や妊婦、要介護者、入院患者らを避難させ、学校や幼稚園なども休校・休園するように求めた。(緊急時避難準備区域は、9月30日付で解除されている。しかし、これまでに講じられてきたさまざまな支援策は、当面の間は継続していくこととしている。)

 

ここで、「原子力災害対策特別措置法」について簡単にまとめると、原発事故などに対応するため、2000年6月に施行された。1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故の問題点を踏まえ、国の権限を強めた原子力災害対策本部の設置や自治体などとの連携強化が盛り込まれた。対策本部長である首相は緊急事態の場合、自治体の首長に必要な指示ができると規定。今回の福島原発の事故に対する出荷制限もこれを根拠にしている[]

 

 

4.自主避難者に対する賠償問題

 

福島県の推計によると、自主避難した住民の人数は、事故発生直後の3月15日時点で計4万256人である。このうち、いわき市が最多の1万5377人を占め、郡山市の5068人、相馬市の4457人、福島市の3234人となっていた。事故後にいったんは減少したが、4月末以降は増加し続け、9月22日時点では5万327人と、警戒区域などから政府指示で避難した住民10万510人の約半数に相当する。

 

この自主避難者に対する賠償問題の対象者は、福島県内の福島市や郡山市など23市町村の全部の住民、または一部の地域の住民についても事故による精神的な損害として対象であり、賠償対象となる対象地域の人口は、県の人口の4分の3に当たる約150万人にもおよぶ。このうち妊婦と子供は約30万人で、賠償規模は約2160億円にも上る。これらの人々に対する賠償額は、18歳以下または妊婦には40万円、それ以外の人々には8万円となっている。この金額の設定については賛否両論数多くの声がある。批判側の声として避難して今までにかかったお金がこの賠償金で賄えるかといったら賄えきれないという声などがあり、そういった避難者も少なくないのは事実である。この金額の設定について納得できている避難者はそれほど多くはないというのが現状である。

 

この賠償問題で課題となるのがこれらの対象者にもれなくかつ迅速に賠償できるかということになってくる。そして、さらに課題となってくるのが、県南地域の白河市や、会津地域の会津若松市などの対象地域外の26市町村の地域に暮らす住民の声や福島県から近い県の県民の声に対する国の対応である。現に対象者を全県民に広げるよう求める声があがっている。全県民を対象とする場合、ものすごく多額な金額が絡んでくる問題なので金銭的な面から考えると難しい問題である。

 

今年の1月以降、この賠償問題について政府は必要に応じてさらに検討するとしている。今後の国の対応にまだまだ目が離せない状態である[]

 

 



[] ウィキペディア「福島第一原子力発電所」http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80

 

[] 首相官邸HP「避難区域などの設定」

http://www.kantei.go.jp/saigai/anzen.html

 

[] 河北新報社

http://www.kahoku.co.jp/news/2011/12/20111209t61006.htm