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中山裕貴「福島第一原発について」
1、原子力発電の仕組み
基本的な仕組みは、火力発電とそこまで変わらない。火力発電は、化石燃料を使って水を熱して蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回して発電するのに対し、原子力発電は化石燃料を使う代わりに、ウランやプルトニウムを核分裂する際に発生する熱で水を沸騰させ、生じた蒸気でタービンを回して発電している。発電に使われた燃料からは高温の熱が発生するため、燃料を原子炉内で水を循環させ、冷却している。
世界各国でこの仕組みが取り入れられており、全世界の約15%を原子力発電が占めていると言われている。日本でも、2010年の段階で国内の電力の約20%を原子力発電が担っていると言われている[1]。
2、メリット
安定して大量の電力を供給できる
発電量当たりの単価が安いため、経済性が高い
事故が起きなければ国の技術の高さの証明になる
発電時に地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しない
酸性雨や光化学スモッグなどといった大気汚染の原因となる酸化物を排出しない
3、デメリット
放射線の厳しい管理が必要
毒性のある放射性廃棄物が発生する
事故が起きて周辺地域に多大な被害を与える恐れがある
事故が起きて放射線が外部に流出すると、人間が発電所に近づくのが難しくなるため、故障個所の修復が困難となってしまう
4、推進国と反対国
世界的にみると、推進国されている国はフランスである。電力の約8割を原子力発電で賄っており、他国への電力輸出や技術輸出も盛んに行われている。その他、アメリカや中国、ロシアなども推進国とされている。
一方で、反対国とされているのはドイツである。ドイツは2022年までに国内にあるすべての原子力発電所を閉鎖すると発表している。また、ベルギーでは2025年までに、スイスは2034年までに、それぞれ脱原発を実現させると発表している。
ヨーロッパ諸国やアメリカ、日本などの先進国では、今後電力需要が高まるということは考えにくいが、アジアやアメリカ、中南米の国々では、経済発展のともに電力需要が急増することが予想されていて、各国で安定した電力供給を実現できる原子力発電が導入されるのであれば、事故を起こす前の厳しい管理が必要となる。
5、原発における主な事故
原発における主な事故として、炉心溶融が挙げられる。炉心溶融はメルトダウンとも言われる。一度運転を開始した燃料には、核分裂によって発生した核分裂生成物が大量に含まれており、核分裂が停止した後も長期間にわたり崩壊熱が生成される。そのため、炉心を冷却しなければならないが、冷却がされなくなると燃料が溶けてしまう。この現象が炉心溶融である。また、水素爆発も原発の代表的な事故である。原子炉や原子炉格納容器、原子炉建屋に水素がたまると酸素と結合して爆発することがあり、このことを水素爆発という。
6、福島第一原発の事故
2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響で、福島第一原子力発電所では、発電に使用された燃料(使用済み燃料)を冷却する装置が壊れてしまったため燃料が溶融した。さらに水素が発生して1号機、3号機、4号機で水素爆発が起き、原子炉建屋などが破損したため、放射性ヨウ素や放射性セシウムなどといった放射性物質が大気中に放出された。その後放射性物質は風に乗って南西や北西に広がり、雨によって地面に付着した。この影響で、福島県をはじめとする東北地方や関東地方の広い範囲の大気中や土壌から水素爆発によって大気中に放出された放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質が検出された。現在では福島第一原子力発電所周辺と一部地域を除いて放射線量は地震が起こる前と変わらない程度まで下がっている。しかし、福島第一原発から20km圏内の避難区域では、避難生活を強いられ、また野菜や果物も出荷規制されているというのが現状である。原発の問題は放射線の収拾だけではなく、周辺住民の安全や生活の保障もしなければならなくなる。今後このような原発の問題が収束するには数十年要すると言われている[2]。
7、地震直後の福島第一原発とその後
2011年4月2日、東京電力は2号機の取水口付近にある作業用の穴に高濃度の汚染水がたまり、周囲のコンクリート壁に生じた亀裂を通じて海に流失しているのを確認したと発表した。応急処置としてコンクリートを流し込んだが止水効果がなかったためであると考えられている。原発から放水してされた汚染水は、法令が定める濃度限度の数千倍の放射線物質が検出された。東京電力は、2日の夕方からコンクリートを作業用の穴に流し込んだが海への流出を止めることは出来なかった。翌日3日には、水分を吸って膨張する高分子ポリマーという材料を穴に詰まらせて流れを止めようとしたが、海への流出量は減少せず、あまり効果はなかった。そして東京電力は4日午後には、福島第一原発から放射性物質を含む水約1万1500トンを故意に海へ放出すると発表し、4日午後7時すぎに排出を始めた。5日には、作業用の穴に石を敷き詰めた。その石の隙間からも汚染水が漏れ出ていたため、午後3時すぎに石の隙間を埋める特殊な薬剤を注入した。その結果、多少の効果はあったが、出口のなくなった汚染水が別の場所から漏れ出す可能性もあるため、継続して監視が必要となった。また、東京電力は作業用の穴に敷き詰めた石の層に着色用の入浴剤を投入し、汚染水が海へ流れ出る場所を見つけることとした。すると、作業用の穴の石の層の隙間から海へ流れ出ていることが分かった。そこで隙間を埋めるために水ガラスという薬剤を注入した。
一方、原子炉内の高濃度の汚染水は福島第一原発敷地内の集中環境施設というところへ移された。集中環境施設にはすでに低レベルの汚染水が移されていたため、その低レベルの汚染水は海へ放出された。そして9日、比較的濃度の低い汚染水を海へ放出する作業は最後となった。4日から9日までの間、海へ放出された汚染水は7700トンと推測されている。11日には、高濃度汚染水が集中廃棄物処理施設にホースを使って移される予定となっていた。しかし、ホースに漏れが見つかり、また強い余震の影響で作業の継続が困難となったため、高濃度汚染水を集中廃棄物処理施設に移す作業は中止となった一方で、集中廃棄物処理施設から、比較的濃度の低い汚染水約9千トンを海へ放出する作業が終わりとなった。
汚染水の処理が進む中、原子炉内では新たに汚染水が生成されていることが分かった。これは燃料が破損していることによるものであると発表された。その後も原子炉内の汚染水の除去や冷却水を注入しての燃料の冷却が進められた。水素爆発によって原子炉建屋が吹き飛ばされてしまったため、雨が原子炉内に入り込んでしまうという事態も発生したが、2011年9月11日には原子炉内にたまっていた高濃度汚染水の水位は目標の数値まで下がった。このことを受け、東京電力は原子炉内への注水量を増やし確実に冷温停止したいと発表した。そして9月28日に福島第一原発1号機、2号機、3号機は原子炉圧力容器の温度が目標であった100度を下回ったことが分かった。
2012年1月1日には、冷却水を循環させて燃料を冷却させられるようになっている。そして1月13日現在では、原子炉圧力容器の温度40度から50度であり、安定した状態を保っている[3]。
現在では燃料の温度も比較的下がり、また原子炉内の汚染水も処理され、全体的に安定した状態である。今後すべきこととして、放射線の放出をとめること、燃料の温度を下げて廃炉にすること、そして福島第一原発周辺住民の生活の保障を優先的に行っていく必要があると思われる。しかし簡単にできることではなく、何年のも月日をかけなければならない。修復作業が進められていく中、また予想できない地震なども起こるかもしれない。そのため、最善の策をとって、この福島第一原発の事故を乗り切らなければならない。そして今回の事故の原因を調べ、今後このような事故が起こらないように原発のあり方について再度検証していく必要がある。