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北山富貴「脱原発」

 

 私は、今回「脱原発」について考えた。なぜならば、2011311日に東日本大震災が起こり、福島原子力発電所事故が発生して原発の恐ろしさを知ったからだ。日本だけでなく世界中で、改めて原発に対して賛否が問われている。

 

1.「脱原発」とは

   脱原発とは、発電供給を原子力に依存している状態から脱することである。もともとこれは、原子力撤廃や反原子力、脱原子力といった核エネルギー技術である原子力の利用に対しての反対、撤廃、縮小の運動から派生したものである。原子力発電の危険性としては、(1)核兵器の製造や使用につながってしまうという危険性、(2)大事故が起きてしまうかもしれないという危険性、(3)日常的な放射線被爆の危険性、(4)放射性廃棄物を後世に残すことによる危険性、の主に四つの危険性がある[1]。このような危険性から脱原発が唱えられているのである。

 

2. 今、なぜ「脱原発」なのか

最近なぜ、脱原発と言われるようになったのか。2011311日に東日本大震災が起こり、福島第一原子力発電事故が起こった。事故による放射線の悪影響から世間の人々は原子力、又は原子力発電所などに関心を持ち始めたように思われる。しかし、チェルノブイリ原子力発電所事故やスリーマイル島原子力発電所事故などが有名だが、原発に関する事故は今までに何件か起きている。脱原発は、以前から議論され続けていることなのである。

今回の福島第一原子力発電所事故について、政府の事故調査・検証委員会は1226日に東電や政府の対応が甘かったとする中間報告書を公表した[2]。事故時に原子炉を冷やす作業で国や東電の不手際が重なり、事故を広げたという可能性も示した。この対応の甘さも、脱原発にすべきだという意見が高まる一因になっているとも考えられる。

 

3. 原発の危険性

原発は、上記の「『脱原発』について」で述べたように多くの危険性を秘めている。ここでは、浜岡原発、伊方原発、柏崎刈羽原発の三つの原発の危険性について述べる。

まず、浜岡原発が危険だといわれているのは東海地震の予測震源域にあるからだ。浜岡原発は、現在1,2号機が廃止措置中、3号機が定期検査中、そして4,5号機が停止中である。ちなみに、4,5号機は23年後に運転再開予定である[3]。しかし、文部科学省の地震調査研究推進本部によると、これから30年以内にマグニチュード8程度の東海地震が起こることが予測されている。もし、浜岡原発が運転を再開し、現実に東海地震が発生したならば福島原発事故と同等の事故が起こってしまう可能性は高いと考えられる。

   次に、愛媛県にある伊方原発である。伊方は伊予灘に面している町であり、その伊予灘には中央構造線という活断層が走っている[4]。したがって、伊方原発周辺で巨大地震が起き、大事故につながるのではないかと懸念されている。

   そして、2007716日に発生した新潟県中越沖地震によって影響を受けた、東京電力の柏崎刈羽原発である。現在、24号機は稼動していない。柏崎刈羽原発は、計画段階から地震の発生を警告されていた。しかしながら、当時の東京電力の勝俣社長は地震発生後「想像を超える地震だった」と発言した[5]。東日本大震災においても、東電は「想定外」と発言した。過去の経験を全く活かせていないといえる。

     原発の危険を語る上で外せないのが、放射性廃棄物と被爆の問題である。日本が約46年間にわたって運転してきた原発によって生み出された放射性物質は、広島原爆がばらまいた放射性物質に換算すると、120万発分に相当する。日本では、放射性物質を地下に埋めることが法律で定められている。地震国である日本では、とても危険な手段に思える。放射性物質の無毒化を実現するのが今後の課題である[6]

     原発事故が最悪の事態にならないよう防いでいるのは現場の作業員である。政府でも東電でもない。福島原発事故のような大事故だけでなく、過去にも原発では度々トラブルが起こっていた。勤務中に亡くなってしまった作業員もいる。したがって、作業員の危険な作業や被爆は大きな問題である[7] 

 

4. 国の原発推進運動について

日本には、核政策というものがあり、それは主に四つある。(1)非核三原則、(2)現実的、漸進的な核軍縮努力、(3)アメリカの核抑止力に依存する(「核の傘」)、(4)核エネルギーの平和利用の四つである[8]。この四つ目の「核エネルギーの平和利用」が、原発を推進するという国策である。1968年当時、佐藤栄作首相は「核エネルギーの平和利用は、最重点国策として全力をあげてこれに取り組む」と答弁した[9]。その目的とは、「将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与すること」(原子力基本法)である。しかし、これは技術面等で諸外国と張り合っているだけであるように思える。核エネルギーは、一歩間違えれば核兵器にもなり得る。だから、核兵器をいつでも製造できるようにするために原子力開発を進めてきたとも言われている。もし、本当にそうだとしたら非核三原則は全く意味のないものになってしまう。

 

5. 「脱原発」をしても、電気は間に合う?

最近、原発を廃止したら電力不足になるという話をよく耳にする。実際、福島原発事故後、計画停電が行われ、テレビでは毎日のように電力使用率が報道されていた。しかし、日本中の原発を今すぐ停止させても電力不足にならないと唱える研究者もいる。火力発電をフル稼働させれば、原発が生み出す電力をまかなえるという。だが、化石燃料が枯渇しつつある今、いつまでも火力発電に頼り続けることもできない。だから、原発に替わる新エネルギー又は化石燃料に替わるものを開発しなければならない。ただ、新エネルギーに関しては、注意しなければいけない点が二つある。一つは、大きく電力を発電する事ができるようにしなければならないという点、そして二つ目は自然を破壊しないシステムにするという点である[10]

 

6. 脱原発で失うもの

   原発は、多くのリスクを伴うということがわかった。だからといって原発を簡単に廃止しても良いのだろうか。もし、原発を廃止した場合、原発で働いている人々が生活に困ってしまうだろう。また、原子力産業だけでなく、建設会社を含めたくさんの企業が原発に関わっているため、経済的に大きな打撃となるだろう。しかし、世界中に放射能をふりまくよりはまだ解決策があると私は考える。

 

7. 脱原発世界会議

   2012114,15日にパシフィコ横浜で脱原発世界会議が行われた。この催しの目的は、「現在の原子力利用状況について学び、発信し、原子力に頼らない社会をつくることが可能であると示すこと」である[11]。私は、14日の方に参加した。会場には、老若男女、様々な国の人々でいっぱいだった。また、日本全国の原発だけでなく、チェルノブイリ原発事故や広島・長崎の原爆投下に関する講演や展示もたくさんあった。

   私は、そこで「福島の今!放射能と戦う有機農業者」という講演会に参加した。そこで、福島の農家の方や、研究者の方のお話を聞く事ができた。原発から50km弱の地点で農業を営む菅野さんは、出荷できなかった野菜を廃棄したことや、周りの農家の方々のお話、自ら線量計を使い土壌の放射線量を調べているといったことを話していた。お話のなかでとても印象に残ったのが、「国や市を待つのではなく、自分たちで検証したり、行動しなければダメなんです」という言葉だった。これからも福島だけに限らず、農業、酪農業、漁業は厳しい状況が続くと思われる。それを改善していくのも大きな課題である。

   

   最後に、私は「脱原発」について調べて、脱原発をするべきだと考えるようになった。やはり、原発はリスクが大きい。何より人体に影響を及ぼす放射能は恐ろしいものである。また、今回調べていて思ったのがマスコミの影響力は強いということだ。情報には正しいものと誤っているものがある。1つのメディアだけでなく複数のメディアから情報を吸収し、自身で見極め、思考することが重要である。これからもこのトピックについて調べ、考えていきたい。

 



[1] 原子力資料情報室(CNIC) HP「日本消費者連盟編『安全らし方事典(緑風出版)』(20121月現在) http://www.cnic.jp/modules/about/article.php?id=15

[2] 朝日新聞 「国・東電 甘い津波対策」(1227日付)

[3] 中部電力浜岡原子力発電所HP

[4] 小出裕章著 『原発はいらない』(幻冬舎 2011年) P28

[5] 小出裕章著 『原発はいらない』(幻冬舎 2011年) P111

[6] 小出裕章著 『原発はいらない』(幻冬舎 2011年) P131,178

[7] 小出裕章著 『原発はいらない』(幻冬舎 2011年) P75,141

[8] 脱原発世界会議 原発と核兵器―ヒバクから考える核エネルギー依存社会・展示

(NPO法人ピースデポ)

[9] データベース『世界と日本』 日本政治・国際関係データベース 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

 http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPSC/19680130.O2J.html

[10] 小出裕章著 『原発はいらない』(幻冬舎 2011年) P108,191,205

[11] 脱原発世界会議HP  脱原発世界会議の趣旨

 http://npfree.jp/about-conference/objectives.html