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知久 大輔「原発の今後」

                           

 311日東日本大震災が起こった。

これによる津波で多数の死者が出た。しかし、被害はそれだけにとどまらない。

原発の問題である。これにより多くの人が避難生活を強いられている。

原発の状態について書いていこうと思う。

 

1.原発の現状

・作戦は成功するのか?
現在対応している処置は、空からの放水、地上からの放水、電線を引くことにより冷却機能を回復させる、の3つである。
 放水については、水蒸気が上がっているので多少は冷えているだろうが放射線数値は下がっていない、十分効果があがるには100回以上くらい継続して行うことが必要である、ということを言っている。言わないことは成功の見込みである。客観的に見て、可能性が低いのは誰の目にも明らかである。しかし成功するかもしれない。
電線については、電線を引いて冷却機能が回復することを期待すると言っている。回復するか、どうかの予測については言っていない。これも客観的に見て厳しいのは明らかだろう。
 従って現在の作戦は失敗する可能性が高い。しかし成功するかもしれない。

 

・作戦が失敗したらどうなるのか?
これについても政府は何も言っていない。作戦が失敗したらメルトダウンする可能性が高い。ここで、原子炉内の燃料と、使用済燃料のことは分けて考える必要があるが、信頼できる情報が少なく、以後の予測はもっと大雑把になることを明記しておく。

 

・メルトダウンした場合の影響範囲は?
情報がやや旧く、使用済核燃料を考慮していないようだが、英国大使館の日本在住英国人に対する助言では、メルトダウンした場合の避難範囲は原発より半径50キロと予測されている。

また、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、カナダは80キロ避難を自国民に対して呼びかけている。

外国の場合、自国民に被害が絶対に及ばない範囲を多めに見積もっているはずであり、また日本人と違い外国人は人数が圧倒的に少ないので、一度にこの範囲からの避難が可能なので、最初から予想最大範囲を通達していると考えられ、これ以上に被害が広がる可能性はごく僅かであろう。風などの影響でほんの僅かな時間、量でも放射線量が通常より上回る可能性のある地域はもっと広いであろうが、とりあえず現時点では無視してよいだろう[1]。またメルトダウンの影響は急激に出るとは考えにくく、徐々に広がっていくと予想される。

メルトダウンにより水蒸気爆発の可能性もあり、一時的に影響範囲が大きく広がる可能性があるかもしれない。
 政府もメルトダウンと避難範囲拡大は考えているはずで、現時点では避難範囲を広げる予定はないと言っているが、将来的なことは言っていない。おそらく状況によって避難範囲を徐々に広げていくはずである。被害が急激に広がる可能性は低いのでそれで良いだろう。避難範囲は面積なので、距離の二乗になるので、急激に避難範囲を広げるのはより混乱を大きくする。外国人の場合、避難範囲を最初から広めに設定しておいた方が良いのに対し、対照的である。

原子力安全・保安院は、事故を「レベル6」と認定し、今後は気の遠くなるような長期にわたる後処理に専念すべき時期に来ているのではないだろうか。

 

 

2.原発の後処理

・汚染水をどう処理すべきか?

放水で冷却を続ける限り今後は放射性物質の外部拡散が徐々に減っていくことになる。しかし、放水などで冷却していては逆に汚染水があふれ出して周辺の生態系や海水を汚染し続けることになる。

 タービン建屋で高濃度の汚染水が見つかったことに基づいて、やがてこれは建屋の脇から海に流れ出す可能性が高い。これについては実際、その後42日になってトレンチとピット(立て坑)から海に漏れている、と報道されている。臨界の危険性が少なくなるにつれ、今後の対策は冷却と汚染のバランスに移ってくることを示唆している。

 冷却に関しては、タービン建屋に何らかの形で立ち入り、底にたまった汚染水を復水器から炉心に戻し、循環させることを優先的に模索するべきだ。緊急冷却系が使えるならそれでもいいだろう。今のように毎日800トンもの水をポンプで外部から注入すれば、その受け皿が必要になるが、敷地内のラド・ウエイスト(放射性廃棄物)貯蔵用プールはおそらく満杯だろう。仮に空っぽであったとしても1カ月程度で満杯となる。

 

・使用済み燃料を移す「中間貯蔵施設」の問題

繰り返しになるが、まずは放射性物質の飛散を防いだうえで、依然として発熱し続ける炉心の温度を下げるため、35年はホウ酸を混ぜた真水で冷却し続けなければならない。その間、現場は高濃度の放射能で危険であるから、限定的な作業しかできないと思われる。

そして冷却プールの燃料集合体を取り出した後、つまり5年くらい後になってはじめて、廃炉になった建屋全体をコンクリート壁で封じ込めるという対策がとれるようになる。米国のスリーマイル島原発事故でも数年後からロボットで作業をし、6年くらい経ってから人が入れるようになり、最終的にコンクリート漬けにされたのは10年以上経過してからである。

話は前後するが、35年後に炉心が十分に冷却された時期を見計らい、冷却プールにある使用済み燃料をキャスクと呼ぶ巨大な金属容器に10本ずつくらい入れて「中間貯蔵施設」に移す(炉心にある燃料は蓋を開ける装置が破壊されているのでおそらく取り出せないであろう)。

中間貯蔵施設は現在、青森県むつ市に建設中であるが、第一期工事で出来上がる800トンの容量はすでに予約で満杯だ。つまり、福島一号原発の使用済み燃料を移すときには第2期工事以降の中間貯蔵施設が完成していることが前提になる。いずれにしても5年以内ということはないであろう。

代案としては廃炉となり「永久立入禁止区域」となる福島第一原発内にある敷地(たとえば7号機、8号機用の用地)などに新たに設置するほうが現実的なのではないかと思われる。

 

・長期にわたって困難な作業が続く

その後、再処理により使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、残った燃料は通常、地下800900メートルの場所に永久貯蔵する。

ただし、ここでも問題があって、日本にこのような永久貯蔵施設はない。ロシアなど他国に協力を仰ぐか、同じく福島第一原発の敷地内に永久貯蔵施設を造るしかないだろう。

以上が今後のシナリオだが、順調に事が運んだとしても10年、20年という単位で考えていかなければならず、今回の原発事故はかりに最悪期を脱したとしても、今後かなり長期にわたって困難な作業が続くと見たほうがよい。

 

 

3.シーベルトに関する基礎知識
この後、原発施設外への影響予想を行うが、その時必要なシーベルトという単位について是非とも把握していただきたい。シーベルトは生体への被曝の大きさの単位であるが、1時間当たりの場合、1年間の累計の場合、被曝していた期間の累計の場合などがある。

主な目安としては、年間1ミリシーベルト、10ミリシーベルト、100ミリシーベルトという3つの桁を憶えておくと理解しやすい。

1ミリシーベルトは、自然放射以外に一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度(ICRPの勧告)。
10
ミリシーベルトは、地球上で最も自然放射線量が高い地域での1年間の自然放射線量であり、日本国原子力安全委員会の指針では一般人の「屋内退避」である。
100
ミリシーベルトは、今回引き上げられる前までの原発作業員の被曝規制値であり、これを超えると発癌のリスクが0.5%上がる[2]

引用



[1] nikkeiBTnet http://www.nikkeibp.co.jp/welcome/welcome.html?http%3A%2F%2Fwww.nikkeibp.co.jp%2Farticle%2Fcolumn%2F20110404%2F265766%2F%3FST%3Dbusiness%26P%3D2

 

[2] 知恵の海

http://cyberbaba.blog57.fc2.com/blog-entry-204.html