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米山憂「高速道路の無料化を考える」
現在、休日の高速道路において実施されている割引、いわゆる「休日千円高速」がある。賛否両論、数々のメリットとデメリットを内包した政策である。実際に得られたメリットとデメリットを調べ、この影響を考慮しつつ、次の段階である民主党の掲げる「高速道路原則無料化」についてのメリットとデメリットについて考えていきたい。
まず、ETC休日割引の導入までの流れと基礎知識を説明する。「休日千円高速」が実施されたのは麻生政権下の2009年3月28日。民主党の掲げる「高速道路原則無料化」に対抗する形で打ち出された。終了予定は2011年3月末まで。民主党に政権交代し、原則無料化を検討するも断念。しかし現在の予定期間を延長し、かつ、「平日上限二千円」を追加することで合意している。内容は、NEXCO3社の対象道路を走行する、料金車種区分が「軽自動車等」または「普通車」である自動車が料金をETC支払いすることによって、その料金の1000円を上限とする割引である。政府のはじき出した推定経済効果は7300億円。事前の利用者へのアンケートで、値下げによって日帰り旅行(一人一回平均出費6000円)の回数が年7.7回から10.6回に増えることや、宿泊旅行(一人一回2万3000円)も年2.8回から3.6回に延びるという資料を根拠とした額である。
では、実際に「休日千円高速」がどのようなメリットとデメリットを含んでいるのかを検証する。メリットとしてメインとなるものは、人の流れ活発化により地域経済の活性化が図れる可能性があることである。デメリットとしては公共交通機関(電車・バス・フェリーなど)の利用率の低下、「休日のみ」割引であるために利用日が集中し、渋滞を招く恐れがある、などが上げられる。
実際の影響について、財団法人運輸調査局「高速道路料金引き下げに関する研究会」報告書からまとめる。政策の実施された2009のGWについて実施されたアンケートによると、一人当たりの消費金額は施策なしの場合9,949円だが、実績は11,663円と+1,714円の経済効果が実証されている。しかし、全国各地の観光地がその恩恵を享受したわけではなく、地域的に偏りが見られる。観光客が増加した場所は高速道路からアクセスしやすい場所や道路料金割引のお得感が大きい場所に観光客が集中し、その逆の条件の観光地では観光客が減少した。また、観光客が増加した場所も多くは日帰りであり、宿泊消費には必ずしも結びついてはいない。また、客単価もあまり高くない。公共交通機関については利用客が全体平均でマイナス6,6%と大幅に低下しているのに対し、高速道路利用者数は+36,0%と大幅な増加である。このことにより、高速道路での交通事故発生件数は前年に比べ144%と多発し、また環境に与えた影響も年間CO2排出量+204万トン(推定)と大変悪い結果を招いた。経済効果は確かに認められるが当初想定されていたものほどの効果があったかは疑問である。この報告書からはデメリットが際立ったように感じられた。
以上の結果を考慮しつつ、「高速道路原則無料化」を考える。まず、一般利用客にとっては基本的に「休日千円高速」の延長にあるため、報告書の内容の一部はさらに極端になると予測される。都心からの近さで観光客を得ていた観光地は収益が減少し、利用客はさらに遠くの人気観光地に集中する。交通量の増加から休日平日問わず交通事故の発生率が増加し、CO2の排出量も増加する。平日においても公共交通機関の利用が減少し、経営が悪化する。次に、「休日千円高速」と違い一般車以外も無料であることに注目する。運送トラックも無料となれば運搬コストを抑えることができるため地方と都心部間の物流が活発となり、地方経済の活性化に繋がる。
ここで大きな問題として、「無料化した後も道路を整備し続けなければならない」ということが上げられる。料金収入が無いために道路を整備するためには国の税金によって賄うしかないのである。国の税金ということは、高速道路の利用者も非利用者も関係なく国民全体から道路の維持費を徴収するということになる。利用者にとってほとんどデメリットはないが、非利用者にとってはたまったものではない。しかし、高速は受益者負担であるべきというが、道路とは基礎インフラであり、直接高速道路を利用しなくても物流の恩恵を得ていない国民はいないだろう。受益者は全国民と言える。このために税金を投入することは当然では無いだろうか。
すでにアメリカやドイツではフリーウェイ・アウトバーンといった無料高速道路が整備されていることは有名である。無料になれば混雑するといわれているが、実のところ、無料であれば一般道と高速が同列になると考えることができるようになる。混むなら一般道に気軽に差し替えれられるのである。また、料金所がなくなることにより、スムーズな流れができて、かえって今のような混雑が少なくなると考えられる。高速道路を無料化すると排ガスで環境が悪化するといわれるが、それには賛否があると思う。だが、高速に乗り入れた方が信号待ちの多い一般道より燃費は上がると言われている。それに有料の場合料金所待ちがあって、それがアイドリングで燃料の無駄遣いと環境の悪化の要因となっている。
中途半端に割引をして首を絞めるよりも、さっさと無料化して人員削減するほうが国民にとっても運営にとっても最良ではないかと私は考えている。
富士通総研 http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/200907/2009-7-1.html
参詣ニュース http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090412/trd0904120801001-n1.htm