若林由美「外国人児童生徒教育支援の必要性と方策」
グーローバル化社会により「国境」という概念が崩れつつある。それは日本においても例外ではない。日本に滞在する外国人の長期的定住化数が毎年上昇している傾向があるのだ。日本の外国人数の増加におけるトラブルも日々多発している。例えば、地域においての就労、生活、経営、そして日本人とのトラブルなどがある。その中でも私は外国人児童たちの教育問題が一番大変重要な課題を抱えていると考えるのだ。中には不就学、不登校、そして進学の問題など、教育における様々な問題が生じているのだ。
我が国では外国人児童生徒の定義をはっきりと定めていない。今回このレポートの中で私が示す外国人児童生徒は単純労働者の子供とし、主に小中学生とする。日本では毎年外国人児童生徒が増え続けているが現状である。現在日本における日本語指導が必要とされる児童生徒数は文部科学省のホームページによると約3万人に達していると言われているのだ。それは2009年に比べられると12%も増加しているのだ。また文部科学省では「外国人の子弟には就学義務が課せられていないが、我が国の公立小中学校への就学を希望とする場合には、これらの者を受け入れることとしており、受け入れた後の取り扱いについては、授業料不徴収、教科書の無償給与など、日本児童生徒と同様に取り扱うこととする。」[1]と定めているのだ。だが、日本児童生徒と同様に扱うことになっているが現実的に難しいことがたくさんあるのだ。日本語能力の不足により授業の内容についていけないことや友達を作ることができず不登校になることなど、様々な問題がある。公立学校では授業内容についていけないので、親は外国人学校に通わせたいが学費が高すぎて通わせることができず、不就学になる子供もたくさん存在しているのだ。しかし、彼らがもし日本に定住し、ずっと日本で住むと決意した場合にはこれから日本の将来を背負うこととなる。また、高齢化社会により人口が減少している日本にとっては彼らの存在は不可欠である。つまり、これからの日本を背負うこととなる外国人児童生徒の教育は不可欠であり、必然であるのだ。彼らによりよい教育を受けさせることは国家としての義務であると考える。
日本では日本語指導等に対応した教員(義務教育諸学校に勤務する教員)の給与費の3分の1を国庫が負担しているのだ。そして平成21年度の予算額はおよそ58億にもかかわらず、教員の人数は1万4千にくらいしかいないのが現状である。1 このように政府と地方そして学校の協力が重要なことだと思う。そして、外国人児童生徒教育問題のなかでも不就学の問題が一番深刻であり、すぐに解決すべきものであると考えるのだ。【日本の公立の小中学校からのドロップアウトの理由として以下の4つの原因を導き出している。「経済的問題」「就学に関する情報不足」「家庭問題(家事手伝い)」「学習困難」である。このように外国人児童生徒を不就学に陥ることを防ぐためには、親の支援・理解のある先生・本人のやる気・社会での居場所が必要となる。つまり、教員の存在が保護者への情報提供につながり、子どもを就学に向かわせるためには必要不可欠である。】[2]つまり、より多くの日本語指導に対応できる教員が必要であるのだ。なかでも、やはりバイリンガル教員が一番よいであろう。群馬県太田市は自動車産業など製造業の工場が数多くあるのだ。そして工場で働くために多くの外国人労働者が居住しているのだ。同市は、2004年3月、「定住化に向けた外国人児童生徒・生徒の教育特区」の認定をうけた。この認定の特例措置により、外国での教員免許状取得者を市町村費用負担で教職員として採用する際、日本の教員免許状の授与にかかる手続きの迅速化・簡素化が可能となった。[3]「現在、群馬県太田市では7人のバイリンガル教員がいる。市内の小中学校の6つのブロックに分け、そのブロック内の日本語指導教室のある学校(集中校)で、日本語指導担当教員、バイリンガル指導助手とともに、教科・日本語の習熟度別取り出し指導を行っている。集中校には、ブロック内の他の学校の外国人児童生徒も移動し、指導を受けている。この特区認定から一年が経過し、公立学校に就学する外国人児童生徒数(2006年)は04年に比べ145人も増加している。」2
このデータのようにバイリンガル教員の存在が大きな役割を持っているには確かである。しかし、太田市認定の特例措置があったからこそできたものであるので、現実的には非常に困難であるのだ。中には経済的な問題も存在するのだ。バイリンガル教員のニーズは非常に高いのだが、その給与の負担はすべて都道府県が負い、一度採用したら外国人児童生徒がいなくなったとしてもずっと採用し続けなければならない。つまり、都道府県の負担が大きすぎるのだ。私はこのような制度と支援を国側で設ける必要性があると考える。そうすることにより、新たな雇用を生み出すことで外国人労働者の職業ともなりうるだろう。
学校側としては子どもたちを受け入れやすくすることもポイントとなると考える。バイリンガル教員を増やすのはもちろん学校内での体制の整備も大切となるのだ。また、日本語指導は外国人児童生徒だけではなく、その両親にも行うべきである。そして現実性・持続性のある就学支援を行う必要がある。一番重要なのはやはり多文化共生意識の改善であろう。それは教師、日本人生徒、保護者、そして自治体や政府にも当てはまることである。まず、教員の意識が薄い場合きちんと外国人児童生徒と向き合うことはできないのだ。そして親との話あいも進まないであろう。また、地域(企業やNGO) や政府の助けなしに自分たちだけで問題解決するには無謀すぎるのだ。つまり、学校・地域(企業やNGO)・政府の連携を重要視すべきである。そして、その連携を推進するコミュニケーション能力を養う必要があるのだ。あとはそれらを対応できる柔軟なシステムが必要となるだろう。
「最近の外国人児童生徒数の動向等をみると、今後、外国人児童生徒数は引き続き増加し、それに伴い、この問題が、大都市部や外国人集住地域といった一部の地域の問題にとどまらず、他の地域へと拡大・広域化していくものと考える。文部科学省としては、これらの提言を踏まえ、外国人児童生徒教育の支援施策を一層充実させるため、必要な財源の確保や制度、運用の改善などの取り組みを進めていきたいと考えている。」[4]この言葉のように外国人児童生徒の問題はどこかの地域限りの問題ではないのだ。なにより外国人児童生徒の現状況を把握した上で、その経緯や背景、根本的な原因を探ることが大切である。そして外国人児童生徒が日本においてよりよい教育サービスを受け、日本で安心して生活していけるようにするのがこれからの一番の課題となるだろう。そしてそれを改善し、よりよい社会を作りあげていくべきであろう。
【参考文献】