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高橋 由衣 「所在不明高齢者の最も問題視されている事と改善するために私達に出来ること」

 

今年の8月上旬に東京都足立区に生きていれば111歳とされる男性の白骨化した遺体が発見された「111歳男性遺体事件」。この事件で亡くなった男性は亡くなってから30年以上という時間が経った後民生委員の女性が役所や警察と協力して発見された。この事件をきっかけに市役所によって全国各地で高齢者の現状把握調査が行われた。調査が続くにつれて相継いで予想以上の所在不明高齢者がいる事が判明された。そして、最終的に[]法務省が2010910日付けで発表した結果によると、戸籍では、生存していても所在の確認が取れていない100歳以上の高齢者は234,000人以上。またこの中には120歳以上が77118人、そして150歳以上が884人が戸籍上生存していると報告した。

 

高齢者自らの判断で家を出て行く場合や自然災害などの予測不可能な出来事によって分かれたまま状態続き連絡が途絶えてしまった場合など様々なケースがあり全てが全て高齢者の周りの人々の責任ではない。だが、今から約20年ほど前、日本では今よりも多くの人々が長生きはとても素晴らしい事だと喜んでいるように思えた時代であった。しかしその様な時代から一転して最近では高齢者に関する問題が多く浮上した。その中でも、今回の様な事件が起きてしまった大きな原因として法律の適用範囲、地域・親族とのつながりの希薄化が問題視された。これから私達はこの問題を解決していくために求められるものは何なのだろうか。

 

市役所などによると今回の様な事件が発生してしまった原因としてはまず、法律の適用範囲に問題があると指摘した。所在の確認が出来ない住民に関しては住民基本台帳法(4章の24節−本人確認情報の保護)に基づき調査する事が可能だ。この法律によると、本人に直接会うことができなくともとも家族や親族などに限定して「○○さんは、そちらにいらっしゃいますか」などの口頭の質問のみで確認を取ることが認められる。そしてその「届け出」は住民の任意によって提出されることを前提となっている。この様な法律の内容ではあまりにも緩いため的確な調査が出来ないと考えられる。

 

もしも、自治体が高齢者の不在が確認できた場合は住民基本台帳法「職権削除」に基づいて住民票を削除する事が出来るがこれも所在確認同様に家族の同意がない限り実行する事ができない。つまり所在確認するためには家族の協力が求められる。突然高齢者が失踪してしまったケースなどである。このケースでは家族の「どこかで生きている」という思いから中々削除するまでにたどり着かないのだ。

 

[]秋田市では市内に100歳以上の高齢者が100人以上いるため「生存確認をするための職員を各家庭に派遣する余裕はない」と話す。他にも千葉県柏市でも以前は100歳以上の高齢者を対象に市の職員が直接祝い金を届けていたものの該当人数が増加したために振り込み制を導入した。この様に、以前よりも平均寿命が延び高齢者の存在が当たり前のようになったため全ての高齢者を訪問し本人一人ひとりの確認をとることが難しくなってきたのが現実だ。だからこそ家族や近所の人々の協力が必要となってくる。

 

だが、所在不明高齢者の家族からは、

「一度も会ったことがない」

「突然『出掛けてくる』と言ったきり戻ってこない」

「何年か前に失踪して以来どこに住んでいるのか分からない」

と説明されることが少なくい。この様な事実から家族関係の希薄化が指摘された。自治体は家族と同居している高齢者よりは一人暮らしの高齢者を気にかけるべきだといった考えから勝手に同居している高齢者は「大丈夫だ」といった解釈をしてしまったのだろう。[]ジャーナリスト斉藤貴男の話によると多くの高齢者が所在不明になってしまったのは、家族関係が浅くなっていること、高齢者の孤立する社会状況になった事が主な原因だと述べた。他にも、政治は家族間のコミュニケーションが深まるような社会を作る努力が必要だと指摘する。

 

時代の変化などに伴って、家族で共有できる時間が少なくなってしまったのは仕方がない事でもある。なによりも昔以上に女性の高学歴化に伴い女性の雇用が増加したことによって多くの女性が外で仕事をする事が当たり前の社会になったからこそ家族で協力して高齢者の介護をする事が今以前に求められてくるだろう。

 

一般的には子や孫に会って嬉しいと思う高齢者は多いはずだと考えられる。つまり、家族間で出来る対策の一つとしては、家族とのコミュニケーションを積極的にとっていくことが良いと考えられる。例えば、高齢者と同居している場合は週に何回か家族全員で食事する時間をつくるだとか、もしも、高齢者と別居している場合には週何回か電話をする。もしくは、近所に住んでいるならば訪問するなどという対策を積極的にとっていくことが大切である。家族の交流を深めていくことによって今回起きてしまった事件が予防できるはずだ。。

 

一方で、行政側が出来る対策としては、今は廃れつつあるもののやはり100歳を迎える高齢者を直接訪ねて祝う事が一番の策だと思う。個人的な意見になってしまうが、直接高齢者の長寿を祝いにたずねたほうが高齢者の方も生きていて良かったという実感と喜びを感じることができるのではないかと考える。また高齢者の世話をする家族に対する励ましにもなるだろう。他にも、介護をする人に対しての支援を強化したり、専門家を招いて、介護に関するセミナーや相談会を市が催したりするべきであると考える。この様な行政の対策も大切だがやはり家族、行政全体が協力し合うことによって今起きているような問題を防いでいくことが出来るのではないかと考えられる。

 

 

参考



[] 高齢者23万人が所在不明=150歳以上884人−戸籍を基に調査・法務省−時事通信(2010910日現在)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201009/2010091000265

[] 高齢者不明14人に−経緯把握戸惑う自治体−朝日新聞朝刊20108月4日付

[] 家族も「知らない」高齢者不明 縁薄れ調査難航−朝日新聞朝刊20108月6日付

 

自治体に法の壁−毎日新聞朝刊20108月4日付

「家族と同居」に盲点 読売新聞朝刊2010815日付*