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三浦達也 「大学新卒者の就職状況と対策

 

近年大学新卒者の就職内定率低下が続いている。都内の有名私立大の学生の内定取り消しの話なども記憶に新しい。そういった学生の中には卒業せずに、留年という選択をする人も少なくないようだ。大学新卒時での就職の失敗は、その人の一生を左右する。これまで続いてきた日本の雇用システムでは、中途採用があまり一般的ではない。つまり「再挑戦」の機会が十分に存在しない。今回自分が学部三年ということもあり、この問題は非常に深刻である。いったいあと何年経てば改善されるのか、どうしてここまで悪くなってしまったのか。今回のレポートではこの大学新卒者の就職状況の問題について詳しく調べていきたいと思う。

 

まず現在の就職内定率について、厚生労働省の調査によると、平成22年度大学卒業予定者の就職内定率は57.6%で前年同期を4.9ポイント下回る(平成22年10月1日現在)。男子は59.5%で前年同期を3.8ポイント下回り、女子は55.3%で前年同期を6.3ポイント下回る結果となった[i]。厚生労働省がこの調査を開始したのが平成八年からであり、この数字は過去最低の水準となっている。

 

少子高齢化の影響で世代人口は昔よりも確実に減少しているのに、では何故これほどまでに就職内定率が低下してしまったのだろうか。よくテレビなどで、景気が悪く、企業の業績が悪化したことなどが主な原因だと言われているが、それ以外にも原因はあるはずである。例えば、パナソニックが新規採用の八割を外国人としたように今後企業の中心となるべき人材を日本人に限定しなくなったことや、学生の中小企業よりも大企業安定志向派が増加したことなども考えられる。

 

また「学生の質の低下」というのも大きく関係していると思われる。新聞で、大学全入時代であるので大学生になること自体はそれほど難しくないが、あまり苦労せずに入学した学生が今就職活動で苦労しているという記事を見たことがある[ii]。これらのことから学生自身も就職活動に対する姿勢というものを見直さないといけないのかもしれない。

 

それではこの就職内定率低下問題に対して政府はどのような対策を考えているのだろうか。大学生の就職内定率の落ち込みなどを受けて、政府と企業、大学の関係者が一緒に対策を話し合う意見交換会「新卒者等の就職採用活動に関する懇談会」が、2010年11月22日に初めて開かれた。この会合には、文科省や厚生労働省などの担当者と、日本経団連などの経済団体、国立大学協会などの大学関係者らが参加した[iii]。会合では、早まっている採用活動の時期を見直すための具体的な方法などが話し合われた。政府は、今後も企業や大学と意見交換を続けて、過去最悪となっている大学生の就職の状況を改善したい考え。

 

商社の業界団体である日本貿易会は2010年11月17日、大学新卒者の採用活動の開始時期を現在より4ヶ月ほど遅らせる見直し案を正式に決めた[iv]。就職活動の早期化を是正し、学業に専念できる環境を作ることが狙い。三井物産や三菱商事など大手商社は2013年春に入社する大学新卒者から採用活動時期を遅らせる考えだ。

 

その他には、厚生労働省では「新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策」(平成22年9月10日閣議決定)に基づき新卒応援ハローワークを全国55ヶ所に設置するとともに、大卒ジョブサポーターの大幅な増員を行い、新規学卒者、大学等及び企業に対しよりきめ細かな支援を開始した。

 

だがこうした政府の支援があったとしても最終的に就職活動をするのは学生自身である。最後に、内定をもらえた学生、もらえなかった学生の違いについて調べてみる。

ある大学の就職課に、「就職内定をもらっている学生ともらえていない学生の差は、どこにあるのか」と質問した。すると「コミュニケーション能力、自主的な行動、自主的な考えを持つ」という返答があった。ほかの就職斡旋を手掛けているところでも、同じ答えを聞いた。もちろん、大学生が描く就職活動への「理想」が間違っているということではない。「理想」はあっても、その前提に「現実」があるということを認識できていないからではないか、とある[v]

就職活動をするうえで、誰しも必ず理想というものは持っていると思う。だが、その理想と現実のギャップが大きい場合は、少しでもそのギャップを埋めるよう努力する、それでも埋まらない場合は理想を少し落としてみる、ということが必要になってくるということであろう。

 

以上のことから自分なりの結論は、就職氷河期の時代を恨むのではなく、内定を勝ち取るために自分のできることを精一杯やることが大切だと思った。毎日新聞を読む、企業・業界の研究を怠らない、筆記試験・面接の対策を入念に行うなど基本的なことの積み重ねが非常に大事だと学んだ。日本だけでなく、海外の企業に目を向けることも有効だろう。自分が就職活動をする際には、理想と現実をしっかりと見極めて、日々危機感を持ちながら後悔のないよう活動していきたい。

その他では、政府の採用活動時期の遅らせ案には個人的に賛成である。理系は4年時から本格的な研究が始まるので、それ以前の就職活動では大学で何を学んだか、という質問にうまく答えることが出来ない。この案には、逆に就職活動が遅れるせいで卒業研究に支障が出るのではないかというデメリットもあるようだが、是非採用する企業が増えて欲しい。

今回のテーマは明確な原因と対策というものが見つからなかったので、その点では苦労した。

 

参考文献



[i]厚生労働省:平成22年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(平成22年10月1日現在)について〜大学卒業予定者の内定率は過去最低の水準〜

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000weq7.html

[ii]大卒就職内定率低下は景気が悪いから?理由は別にある

http://blog.infobuild.jp/e/?c=201011240954

[iii]就職内定率の悪化受け、初の意見交換会実施 | 日テレNEWS24

http://www.news24.jp/articles/2010/11/22/07171040.html

[iv]日本経済新聞(2010年11月18日)

[v] http://www.data-max.co.jp/2011/01/post_13199.html