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伊沢聡志「中国依存の日本経済から考えること」

 

1.   レポート作成における動機

 

現在、高い経済成長を続けている中国は日本にとって最大の貿易国となり、日本経済における中国の役割はかつて日本最大の貿易国であったアメリカをしのぐほどとなった。中国の対日輸出額は9786766万ドル(2009年)である。近年の日本の市場には多くの中国製品が流通しており、ほとんどの小売店で目にするほどの規模であり、さらに製品の種類によっては日本製品などの「非中国製品」の流通が珍しいくらいだ。このように日本と中国との経済関係はとても密接である。

 

しかし、201097日に起きた沖縄県石垣市の尖閣諸島沖漁船衝突事件で公務執行妨害容疑中国漁船の船長が逮捕されたことで日中関係が一気に悪化した。中国はさまざまな報復措置をとり、中にはハイブリッド車、電気自動車用の高性能モーターに必須の素材である「レアアース」の対日輸出を停止させた。中国からの外交圧力により、那覇地検は処分保留で船長を釈放した。日中関係を考慮したためだと主張しているが私たちから見ればただの弱腰としか考えられない。私はこの事件に対する日本の弱腰さのひとつには日本経済が中国にとても依存しているからだと思う。だから、中国依存の日本経済について考えて見たいと思って、本文を作成することにした。

 

 

2.   中国に依存している日本経済

   中国は1970年代末からケ小平らが中心となって「改革・開放」政策を行い、外国資本や技術の導入を目的に「経済特別区」を設置した。ここの特徴は100%外資企業の認可、輸出入関税の免除、所得税の3年間据え置きなどで、1984年には国内に対して閉ざされていない「経済開発区」が指定された。このようにして中国は発展していった。そして、新たな魅力的な経済国となって巨大なマーケットと化した中国に外国企業が多く進出して言った。日系企業もそれらの理由と豊富な労働力、人件費の安さで次々と進出していった。またこの当時の中国は途上国であったので、特恵関税制度が認められた。

 

   特恵関税制度とは輸入品にかける関税を引き下げて途上国の輸出を支援する制度で1971年に導入された。先進国側が品目を指定して関税を低くする。日本では関税をかけている5930品目のうち、3552品目が対象である。

これらのことが現在、日本の市場に多くの中国製品が流通していることにつながる。衣類業界の例で見るとユニクロは商品の9割以上を中国で生産している。衣類はユニクロに限らず、多くの会社が中国製品を販売している。衣類は中国製品が市場に多く流通しているモノの一つだ。

 

 

3.   中国依存の欠点

 

   中国は共産党による一党独裁国家であり、言論の自由、報道の自由などが認められていない。また、日本は軍国主義時代に盧溝橋事件、満州事変、大量虐殺、人体実験などといった残虐な行為を中国に行って、実効支配を繰り広げようとしていたという過去があったので多くの中国人は反日感情を抱いている。中国共産党は軍国主義日本と戦って中国国民を救って現在の中華人民共和国を建国して、反日・愛国教育を進めていったので中国人の反日感情がより高くなっている。

 

   また、日本とは沖縄県の尖閣諸島の領有権で対立している。尖閣諸島は日本の領土であることはかつての中国は容認していた。しかし、その周辺には石油などの海底資源が豊富であるという調査報告が出されたときから中国は尖閣諸島の領有権を主張してきた。これは一つの議論であるが筋道が通っている。なぜなら領土問題は資源が原因で生じるものだからだ。北方領土問題が解決しない理由もこのことだ。尖閣諸島問題が中国人の反日感情をより高めている。

  

   尖閣諸島以外でも南シナ海で周辺諸国と対立している。例えば、ベトナムと中国とで領土問題となっている島の周辺で漁業を営んでいたベトナム人漁師を中国が拘束して、「あそこは中国領だからその周辺で二度と漁業をしないことを約束する」と言わせるまで拷問にかけたという記事があった。南シナ海は中国の「核心的利益」という主張があり、中国による海洋進出が活発化している。このことが周辺国の脅威となり、中国に不信感を抱くこととなった。

  

   この海洋進出の要因の一つに経済成長に伴うエネルギー需要の拡大がある。つまり、中国は海洋資源を確保したいのだ。

 

また、中国は毎年、軍備を拡張しており、その要因はやはり、領土問題や排他的経済水域問題にあるのだ。現在、中国では国内の格差問題、共産党による言論統制、報道規制、チベット・ウイグル問題などで中国国民が共産党を批判することにつながっている。国民の不満を和らげるために中国は領土問題で後を引けない。軍備を拡張して、領土問題となっている場所を実効支配したいというのが中国の思惑だ。

 

その軍事費の財源は中国国民の税金からきている。経済成長に伴い、中国政府の税収も増加しているはずだ。

  

   日本企業は中国に多く進出しているが中国の経済成長に伴って、ストライキが起きている。それは経済成長すると国民所得が上昇し、インフレが進むからだ。だから、中国の就労者はより高い給料を求めるようになった。人件費を上げると企業の利益が減少してしまうため、企業側としては人件費が安いから中国に進出したこともあって苦渋の選択を強いられることとなった。しかし、中国国内の日系企業が給料をあげないと中国人の反日感情が高まり、日本のイメージがより悪くなってしまう。

 

  これらのことが中国に依存するとおきるリスクであると思う。

 

 

4.   今後の日本経済はどうあるべきか

 

   日本は現在、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の参加の是非が議論されている。TPPとは関税をほぼ例外なく撤廃する取り決めで、貿易自由化を目指す枠組みである。現在、シンガポール、チリ、ニュージーランド、ブルネイが協定を結び、オーストラリア、ペルー、ベトナム、アメリカ、マレーシアが参加を表明した。

  

   TPPは国内経済の中国依存を減らし、中国の「リスク」を分散させることとしても効果があると思う。また、日本の同盟国であるアメリカが参加表明していることにも注目して、アメリカとの経済関係を強化するチャンスでもある。

  

   日本は中国との領土問題をかかえる周辺国との関係を強化しなければならない。この中でも経済関係の強化は重要なことである。日本がTPPに参加する、またそれらの国とFTA(自由貿易協定)を結ぶことで中国に包囲網を作ることができる。

 

   しかし、TPPFTAは関税をほとんど撤廃しなければならないから安い外国産の農産物が多く日本に流通して、日本の農業に打撃を与えるので、農業政策を急がなければならない。また、中国もTPPに関心を持っていて、もし、日本が参加を表明して、かつ中国が参加を表明したら中国の「りすく」を分散させることに成功しなくなる恐れもあることは否定できない。

  

   中国依存を減らす有効な手段はその欠点を克服しながらもTPPFTAの交渉を進めること、また国内の法人税を引き下げるなどの産業空洞化対策をして、国内の雇用を増やすこと。つい先日、菅内閣は法人税の引き下げを決定した。また、レアアースなど日本にとって貴重な資源の調達の協力を中国以外の国とで強化することである。現在、日本はモンゴル、ベトナムなどでレアアース開発の協力を推進している。

  

   さらにレアアースの再利用の開発も進められている。これのみならず、他の資源の再利用開発を推進させて、実用化させることが今後の課題であり、世界各国の領土問題などの資源獲得競争を抑える手段としても有効となる。

  

   中国依存を減らして、他の国との経済関係の強化、国内産業の空洞化対策、貴重な資源の再利用が今の日本経済に必要なことである。 

  

  

  参考資料:岩波書店「世界」第811号(p116p123) 201012

       中央公論社「中央公論」201012月号(p64p75

       20101229日 読売新聞 第7

       環太平洋戦略的経済連携協定(TPP-Yahoo!ニュース#infoHeader1

          http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/tpp/#infoHeader1