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伊沢元貴「新卒採用の減少よるメリット・デメリットについて」

 

近年、就職状況は氷河期といわれている。2000年前半に大学卒の就職内定者数が50%台になったが景気回復もあり、内定者数は回復傾向にあった。しかし2008年のサブプライムローン問題によるリーマンショックの影響で日本経済は悪化し、それに伴って内定者数も大きく減少した。2010年度の内定者数は約60%程にとどまり、就職浪人や大学院に進学するなど自分の希望する進路に大きな変更を余儀なくされる学生が増加した。概卒では就職が厳しいため大学を留年する人まで現れた。今回、私は企業が新卒採用を減らす理由とそうすることにより起こりうる事を考察した。今現在、私も就職活動をしており、このレポートを書く事で就職活動に少しでも役に立てば良いと考えている。

まず企業が新卒を採用する理由としては

・潜在能力の高い人材を他社に先駆けて獲得できる可能性がある。

・その企業にあった人材を育成できる。

・退職により減った人手を補う。(中途採用より安い賃金で雇える)

などの理由があげられる。「大学時代に学んだことを活かし、さらにその企業が求める人材に仕上げることで企業にとって有益な人材として働いてもらう」ということだと考えられる。さらに日本では「能力=報酬」という考え方よりも「年齢=報酬」という考え方があり、中途採用では給与という面で割に合わないということで、新卒採用が主流であったのだろう。

 

 

それではなぜ、新卒採用が減ったのだろうか。その理由は、先に述べたようにリーマンショックによる経済の悪化により、企業はコストの削減と業績の回復が急務となった為だろう。そこで新卒採用を減らしたと考えられる。採用を減らす事によるメリットは

・人件費の削減。

絶対的人数を減らすことで社員に支払う給与を減らす事が出来る為である。さらに正社員を雇うより、非正規社員を雇った方が賃金が安く済む。

・新入社員教育の削減。

新入社員に対する教育を減らすことによりコスト削減ができ、社員も新入社員の教育より自分の仕事に専念できる。

・会社説明会や入社のための試験、手続きの量を減らす事が出来る。

新入社員を獲得する為には、説明会を開いたり、就活情報を発信したりするなど資金や人手が必要となる。採用1人当たり50万〜200万円の費用がかかるというデータもある。それを減らすことで、本業務に集中できる。

・社会全体で採用が減る事により、新入社員の早期退職が減る。

社会全体で採用が減る事により、会社を辞めたいと思っても思いとどまる人が増え、入社後3年以内にやめる人が減る。

 

などが考えられる。経済的面から考えたが、意識的面から考えると以前のように、新卒を一から育てるのではなく、他社で技術を身に付けた人をとるという考え方が少しずつ社会に浸透しているからではないだろうか。今までは、年功序列型で会社にいる年数で給与額が決まっていたが、近年は能力によって給与が決まるという考え方が当たり前になってきている。そうすると能力や技術を持つ人が新たに働く場所を求めて中途採用に応募する。企業にもそういう意識が生まれることで、能力の高い中途採用を少人数雇い、新入社員の数を大幅に減らせば、結果的に安く、しかも多くの利益を得ることができると考えたのではないだろうか。能力が未知数で技術もあまりない新人より、ある程度の実績を持つ社会人を雇った方のメリットが多いと企業は考えたのだろう。

 

 

しかし、新卒採用を減らす事で起こりうるデメリットもあるのではないだろうか。新卒採用を減らす事によるデメリットとして考えられることは、

・技術の伝承ができなくなる。

企業内に若い人が減る事で、技術を引き継ぐ人がいなくなり培ってきた技術が途切れてしまう。さらに、将来会社を背負っていく人材が減る。

・雇用が減り、経済が一層悪くなる。

国内の雇用環境が悪化する事により、消費が減り経済状況がより悪くなる。すると企業はより人を雇わなくなるという悪循環がおきる。

・新入社員のモチベーションが低下する。

自分の希望した企業や職種につく事が出来ず、務める企業が不本意であり、そのなかでやりがいが見つけられない場合、転職しようとしてもなかなか仕事に就く事ができない社会ではモチベーションを高く持って仕事をする事が難しい。

 

などの事が考えられる。人を雇わなければ、一時的なコスト削減になり業績を上げる事が出来るかもしれないが、長期的な目で見るとデメリットも多いように感じる。特に技術の伝承ができなくなるというのは、物づくりで成り立っている日本では大問題であろう。若い人が減る事で、技術の伝承が無くなり、新しく奇抜なアイデアも出難くなる。そうなれば日本の技術レベルは低下してしまうのではないだろうか。そうすると、他のアジアの国々やアメリカ、ヨーロッパなどに経済的にも劣ってしまう。将来、超高齢化社会という状況で、日本が生き残るには若い人がこの国を背負って行かなければならず、その為にも若い力を育て、使っていかなければならないと思う。

 

 

 今回この授業で就職活動のお話しを聞いたり、自分で調べてみたりすることで就活生としての考え方だけではなく、企業側がどんな事を考えて採用活動をしているのか少しだけだがイメージする事が出来た。学生である自分からすれば、新卒採用は減らすべきではないと考えていた。しかし、採用活動は企業側の負担も多く、不況により採用したくても採用できないという企業もあるのだろう。景気が回復し、雇用する余裕が企業側に出てくれば自ずと採用数は増えるだろう。

だが、私としては景気の善し悪しが雇用に大きく影響するというのはあまり良い事ではないと思う。安心して働けなければ、安心して生活する事が出来ない。安心して生活する事が出来なければ、その時の政治情勢や社会情勢を冷静に見る事がしづらくなり、社会が不安定なものになってしまう。これからの日本を支えていく若者が希望の持てない社会では日本の将来がとても危ういと思う。

私としては、雇用はその時の状況に左右されず、自分の力が思う存分発揮できる社会ができることを願いたい。

そして、就職活動が辛いものではなく、いろいろな企業や職種を見たり聞いたりして自分の知識を増やすとともに、自分の力を試す絶好の場であって欲しい。

 

 

<参考文献>

・産経msnニュース:http://stb.sankei.jp.msn.com/economy/business/110111/biz1101110307003-n1.htm

BeJust総研レポート :http://www.bejust.co.jp/report/0005/

・朝日新聞

・日本経済新聞