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林欣瑩「2009年台湾第二回三合一選挙」

 

1)台湾三合一選挙の仕組み及び成り立ち

2005年前に、台湾の地方自治体の選挙は憲法の公職人員選挙罷免法によると、選挙は省選挙委員会によって行われる。そして、郷鎮市長の選挙は県選挙委員会によって行われる。その二つの選挙委員会は中央選挙委員会に監視される。県市長と議員と郷鎮長の選挙は違う日程で行われる。ところが、200561、社会負担を軽減し、頻繁に台湾社会を引き裂く導火線になる選挙の数を減らし、選挙事務費用を節減するために、台湾で三合一選挙は正式立案した。2005123から4年ごとに、三合一選挙とは県市長、郷鎮長や県議会及び市議会の議員の全員などをまとめて選ぶ選挙のことである。

 

22009年台湾第二回統一地方選挙の結果

2009125、台湾は第二回の三合一選挙が行われた。中央政府である行政院直轄の直轄市の台北県市、高雄市及び2010年県と省轄市から昇格したばかりの台中県市、台南県市と高雄県を除き、基隆市や桃園県などを含む17県で約446万選民は投票した。今回選挙の結果は台湾の中央選管によると、首長選で国民党は系列の無所属を含む現有14ポストを維持できず、新竹県、台東県、桃園県や南投県など12の県・市で当選を確実にしたが、宜蘭、花蓮両県の2ポストを失った。野党民進党は宜蘭県のほか、雲林県、嘉義県、屏東県の現有3ポストも守った。[1]得票率は県市長の選挙で民進党が2005年の三合一選挙の38%に比べて、7%を成長し、45%を超える一方、国民党は2005年の50.96%から2%を減らし48%弱と5割を割り込んだ。僅かな2.5%の差である。ところが、国民党は郷鎮市長と議員の選挙での得票率は大幅民進党を超えている。投票率については中央選挙委員会の予測した通り、63.3%に達している。

両党主席は会見で選挙結果について次のように述べている。党主席を兼務する馬英九総統は125夜の会見で「議席も得票率も理想的ではなかった。国民からの警告と受け止め、徹底的に反省したい。その上、政府も改革をし続けている。」と発言した。そして、行政部門が徹底的に経済対策を検討し、国民の生活を改善することに取り組むと強調したが、選挙の敗北を一切認めなかった。[2]

谷底を脱し、民進党不振の傾向が一段落した三合一選挙の結果に対し、選挙結果発表した当日夜蔡英文主席は「選挙結果は確実に民意が馬英九政権への不満と反映した。国民党政権が発足した一年の間、国民が見たのは、経済対策の失敗し、国家尊厳を失い、政府が民意を無視したことだ」と指摘した。[3]

 

3)台湾第二回統一地方選挙結果分析及び影響

台湾の政治は2000年中華民国総統選挙で史上初めて政権交代が実現してから、総統辞職要求の市民運動「紅衫軍」、2008年総統選挙で再びの政権交代や陳水扁前総統の汚職治罪条例違反疑惑など様な事件を経て、国内政治は混乱期が続いている。台湾の政治状況を見抜くことは極めて難しい。そこで、民意を敏感に反映できる地方選挙から未来の政治情勢が予測を立てられると思われる。

数十年の台湾選挙歴史を遡ると、4年ごとに県市長選挙は政権指標として重要な位置を付けられる。1997年野党民進党は県市長選挙で粗全部のポストを勝ち取った。そして、その選挙結果は2000年史上初めて政権交代を予言した。それから、2005年の県市長選挙で国民党は野党として台湾北部、中部の全ポストを奪い取れ、選挙の結果も同じく2008年二度の政権交代を予測した。

さて、2009年台湾第二回統一地方選挙は台湾政局にどんな影響を与えるか。今回の選挙は党主席を兼任したばかりの馬英九と昨年5月に民進党主席に就任した蔡英文両主席にとっては初めての全国規模の大規模選挙であり、国民党、民進党の両党とも必死で選挙戦に取り組んでいる。単に選挙結果から見ると、国民党の敗北したようである。一方、民進党は勝利と位置付けている見方を示したが、今回の選挙について軽率に誰が勝者と判断できないと思われる。

私にしてみれば、国民党の得票率が大幅な後退した原因は三つ挙げられる。一つは、金融危機の影響を受け、世界経済が悪くなり、失業率が上っている一方で、実質所得が減りつつある。政府は様な経済政策に通じて、台湾の経済を救うとしても、これらの政策は直ちに効果が現れるわけではない。従って、国民は政権への不満が高まった。そして、もう一つは、政府は8月の台風被害への対応遅れとアメリカ産牛肉の輸入規制緩和になかなか結論が出られなかったため、国民と野党から広範な批判を浴びた。さらに、国民党の地方派閥と党中央の内部紛争を起こし、国民党が分裂され、花蓮県と新竹県が公認候補と非公認候補が出馬する事態となる。その結果、国民党は混乱に陥り、投票率も大幅引き下げた。

一方、選挙結果は民進党が大きく躍進しても、次期総統選で政権奪回を断定できるというわけではない。民進党は選挙戦で与党が中国と締結を目指す「中台経済協力枠組み協定」(ECFA)が農業に打撃を与えることや対中交渉が不透明などの問題点を取り上げたが、「中台経済協力枠組み協定」が台湾産業にとってのメリットが一切口にしなかった。もし、民進党はかつてのように盲目に中国との対立政策を取ったまま、次回の政権交替の見通し暗いに間違いない。さらに、「国民たち!選票で馬総統への失望を伝えよう!」と民進党が選挙戦でずっとアピールした言葉はまさに選挙の結果から見られる。従って、実に民進党の「勝利」は馬英九の人気に陰りが出たことのおかげだといっても過言ではない。

また、今回の三合一選挙は確かに台湾の人口の四割をカバーする多い農業立県の地区での選挙である。政党の勝敗が今後の政局に影響することは必然であると考えられているが、主に人口が多い6直轄市が加えていないから、馬英九政権の中間テストの意味を持つ選挙という見方は過度の解釈だと思われる。以上のことから、2010年の総統選指標としての意義が強く、本番の前哨戦となるのは来年の直轄市長選挙だと言える。ところが、今後台湾の政治情勢が手のひらを返したように豹変する可能性が高いから、引き続き観察する必要があると考えられる。

 

4)日本の統一地方選挙

台湾の三合一選挙は日本の統一地方選挙とはちょっと違うところがあるが、事実上、両者本質の差が多くない。その故、多くの日本メディアが台湾の三合一選挙を「統一地方選挙」と翻訳している理由は、多分日本の地方選挙である「統一地方選挙」からと思われる。

さて、日本の統一地方選挙とは、地方自治体である都道府県の知事、市町村の長及び地方議会の議員を選出する選挙である。1947年から住民の地方選挙に対する関心を高め、また選挙事務を円滑化し、選挙経費を減らすために、日本は統一地方選挙を4年に1度、4月に行って始まった。都道府県選挙と市町村選挙が同じ期日にそれぞれ一斉規模で行うことは、色な意味でメリットがあると言われているが、近年では統一地方選挙に参加する自治体数は全体の半分以下となったため、メリットも段少なくなると考えられる。

どうして統一率は年さがっているかという問題を分析すると、二つの原因が挙げられる。まず、議会の解散や省長が任期が異なることや首長の任期途中での辞任や死去などの特別な事情があったため、次第に選挙の時期がずれている。また、一番の要因は市町村合併と視される。「平成の大合併」によって市町村が合併ごとに新たに首長や議会の選挙は行われるようになり、任期のずれが始まった。選挙も「統一地方選挙」から離れ、回を重ねるごとに足並みが揃わなくなってきており、2007年に実施された統一地方選の統一率は29.72%(前回の2003年は36.26%)[4]と、過去最低を更新した。「全国一斉」という意義はかなり薄らいでいる。

また、最近の日本選挙で必ず問題になるのは「投票率の低下」である。統一地方選挙もこの現状を反映し、2007年の統一地方選挙で44道府県議選の平均は前回2003年の52.48%から微減し、52.27%になった。[5]ところで、投票率は低下する傾向があるが、2000年に公職選挙法などが改正されて、下旬の選挙日には衆議院議員および参議院議員の補欠選挙もあわせて実施されたため、統一地方選挙はこれから夏の参院選の前哨戦としての重要な意義を持っていると考えられる。

それでは、日本の統一地方選挙と台湾の三合一選挙の共通点と相違点は次のように整理し挙げられる。まずは、選挙制度はほぼ同じであることであり、国政選挙に対して大事な見通しである。相違点を語れると、一つは台湾の三合一選挙の統一率は毎度100%であるが、日本側は29.72%に止まっている。次は、台湾側の投票率はいつも60%以上であるが、日本では僅かな52.27%であり、先進国の中でも異例の低さとなった。日本にとって統一地方選挙の統一率と投票率の低迷がどう乗り切ることは今後の大きな課題と思われる。

 

5)結論

今回選挙から伝われることが一言で言えば、それは「一生懸命に国民のために尽くすものが勝つ」ということである。三合一選挙は総統選挙のような全国的な選挙ではないため、選挙の結果は必ず地方議題と民意に関わっている。歴代の地方選挙と比べると、今回の選挙は国民党と民進党両党が必死に激烈な攻防戦を続けていたが、政策が一切無しであることが明らかである。実質上、今回選挙は2008年総統選挙の後半戦及び2012年総統選挙に先立つ前哨戦と言ってもいい。

結果として国民党の党勢はまだまだ厳しい試練が待っている。一方、民進党は2008年選挙敗北のショックと陳水扁前総統汚職事件の最悪の状況からは脱却したようである。前述のように、民進党は数多くの農業県で驚くほど投票率が得られた。しかし、それは民進党が魅力を回復したという意味ではない。

そういう結果を導く原因として注目すべきなのは、明確な支持政党を持たない中間選民は三合一選挙が今後の県政と市政を委ねる方を決める大切な選挙だと十分に認識し、多くの人がわざわざ都市から地元の選挙区に帰って投票したことである。実は、2000年と2008年の二回の政権交替は無党派層の中間選民の台頭によるものだと思われる。台湾の民主主義は選挙の回に重ね、段成熟化になり、民主社会への大切な一歩を踏み切り始めた。国民党と民進党はしっかり急増している中間選民の動向を見抜かないと、やっと手に入れた政権がきっと長く維持できないに間違いない。

それでは、民進党は本気に過去の影から抜け出したいなら、昔ながらの選挙目当ての政略を優先する抵抗型野党という存在を国民の幸福を最優先する政党に変え、対中関係の外交対策と国政に責任を担う相応しい政策を作り上げていかなければならないという認識が必要だと思われる。一方、全世界の不況の下で、台湾の未来を握る国民党にとって、来年の直轄市選挙の立候補を急いで推薦するより、民意の把握や多種多様な国民の関心を理解し、それに対して的確な政策を打ち出すことが一番大事だと考えられる。国民からの警告をちゃんと受け止め、謙虚な態度で今までの政策問題を取り上げながら、改革にも積極的に取り組んでいくことが今後馬英九政権は着手すべきなところだと考えられる。国民が何を考え、何を求め、それに対して政治家がきちんとした対応が出来るかが勝者と敗者をわけることであると言えるだろう。

 

参考文献

福岡政行「政権選択角川」学芸出版、200812月。

堀内伸浩「図解*わかる!政治のしくみ」ダイヤモンド社、20017月。

島田文昭「教科書には載らない政治の歩き方」竹書房、20048月。

(台湾)中央選挙委員会 http://www.cec.gov.tw/?Menu_id=0

対戦2009県市長、県市議員や郷鎮市長選挙擂台http://www.ettv.com.tw/2009/12/06/11564-2542705.htm

総務省「選挙や政治資金」 http://www.soumu.go.jp/senkyo/index.html

ザ‧選挙 http://www.senkyo.janjan.jp/index.html



[1] 091206 Nownews(今日新聞)http://www.ettv.com.tw/2009/12/06/11564-2542705.htm

[2] 091206 対戦2009県市長、県市議員や郷鎮市長選挙擂台http://www.ettv.com.tw/2009/12/06/11564-2542705.htm

[3] 同上。

[4] 総務省報道資料 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2007/pdf/070406_3.pdf

[5] 統一地方選挙の投票率の推移 http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/tihoug.html