090119yanagis

 

柳里子「地域活性につながる政策―若者の流出と里山の荒廃―」

 

私がこのテーマを選んだ理由は、学科の教授の紹介で参加させてもらっている栃木県芳賀市茂木町須藤地区の地域活性化ディスカッションで、深刻な地区の高齢化と過疎、環境の荒廃を目の当たりにしたことが大きい。また、政府が派遣切りをされてしまった非正規雇用者の再就職先として地方の農林水産業を薦めているという報道も最近耳にする。これからますます活性化していくべき地方への政策について考えた。

 

まずは、地方の人口流出原因から探っていこうと思う。地方、特に農山漁村における人口流出、若者の現象が始まったのは高度経済成長期といわれる。つまり1960年代からだ。この頃の人口流出は農山漁村における主流産業であった第一次産業から第二次産業への経済の推移が主な原因で、人々は工業を主とする第二次産業への就職を求め、地方から地方都市へ移っていった。その後時代は変わり、経済は次にサービス業や観光業を主とする第三次産業へ移っていく。しかし、第三次産業においても、交通の便のよい都市部のほうが地方の農山漁村よりも発展したこと、人々の第一次産業離れが進んだことがあり地方の過疎は今でも進んでいる。このことから、地方からの人口流出は国民の生活や意識の変化によって起きてしまった問題だとも考えられる。また、現代の政治や経済、流行の中心地は日本の首都である東京だ。このことは東京一極集中と言われ、地方の発展の妨げにもなっている。それらを求めて、若者や優秀な人材が東京へと集中するからだ。

 

では、農山漁村地域での若者の流出・人口の減少が起こるとどういったことが問題になるのだろうか。はじめに述べた須藤地区では里山の荒廃が問題になっていた。里山とは人々の生活に密着した山や森のことだ。日本以外の国々ではあまり見られないもので、日本独自の文化だともいえるだろう。日本では昔はこの里山の恩恵をうけながら人々は生活してきた。現在ではそれほど密接な関係はほとんど無くなっているが、景観や自然保護の立場から保護する動きも出ている。しかし、里山は人の手が入らなければ荒れてしまう。人の手が入らないことで、森が荒廃してしまうというのは一見おかしなことかもしれない。しかし、人工林が人の手なしでは成り立たないように、里山も人による世代交代・管理がなければ、その機能を保つことが出来ない。そうは言っても、怠ることのできない里山の管理は重労働だ。本来なら若い世代がやるべきことであるが、若者の流出してしまった地域では高齢者がやるしかない。いつしか人の手に有り余った里山は管理されずに荒廃していく。これと同じようなことが全国の農林漁村で起こっている。荒れた田畑や使われなくなった漁船、深刻な後継者不足だ。就業者数を見ると、漁業でも農業でも林業でも65歳以上の就労者数が最も多く、そこから就労者数は若年層にいくにつれて減少している。産業の根底をなす第一次産業における後継者不足は国にとって大きな問題だ。もしかしたら、食料自給率の問題にも関わっているのかもしれない。また、後継者不足は産業の中の話だけではない。無形文化財を初めとする地方独自の文化、伝統についても後継者不足によって人知れず消えていくものがあるのは想像に難くないだろう。

 

これらの問題について、政府はどのように対応しているのか内閣府の地域活性化総合情報サイト[i]で調べてみた。政府が行っている政策の一つに山村再生総合対策事業というものがある。これは山村特有の優れた自然・文化などを活用し、新たな産業を作り出すとともに山村コミュニティを再生させることが目的で、対象とされた山村活性化に取り組もうとする様々な主体に補助金を交付するというものだ。この補助金の使い道は実に様々だが、特産物の生産や後継者の育成、子供への文化や自然についての教育活動などに使われている。また、他の施策で地域再生支援チームを発足し、再生を目指す住民の相談などにも応じている。その他にも農林業等就職促進支援事業による、ハローワークを通じた農林業への就職情報の集約や、緑の雇用担い手対策事業による林業初心者の為の技術指導など、新規に農林漁業に参入する人のためにその垣根を低くするような施策も数多く行われている。

また、今回の大不況がこれら第一産業へのよい意味での契機に成り得るかどうかも政府の政策次第だと私は考える。農林水産省のホームページ[ii]を見てみると、雇用情報の集約や強化など第一次産業での雇用の創出に力を入れていることが良くわかる。しかし、現実は甘くはない。第一産業へ就職するということは、一概には言えないがそれまで暮らしていた都市を離れ、地方の農山漁村へ移住することが必要になる。また、それに加えて人々が第一次産業敬遠する意識がなくなったわけではない。ただ、求人広告を載せるようなやり方では、農林漁村での第一産業従事者をこの機に増やすことはできないだろう。例えば今回の不況で仕事を失った人へ補助金制度を整備することや、地方での住居を用意するなど人々の目が地方での就職に向くような「何か」が必要だ。

 

しかし後世まで繋がる産業の創出や後継者の育成は大変困難な道のりだろう。なぜなら、援助による産業の創出や後継者育成は一時的なものになる危険を含んでいるからだ。このような援助を足掛かりや起爆剤として、そこからの定着・発展をしなければこれら事業の目的は達成されないだろう。その上、仕事があれば、農山漁村からの若者の流出の防止と若者の流入の促進に繋がるというのも、一理はあるがそれだけでは、今までと同じように都市部に魅力的な仕事があった場合、若者を引き付けておくことは出来ない。地方ならではの長所を存分に生かしたやりがいと魅力のある仕事と生活環境の創出が必要になってくる。また、地方の短所を補うような制度や仕組みも必要だ。

 

それでは、地方の短所とはなんだろうか。私は一番の問題は交通の便の悪さによる暮らしにくさだと思う。生活用の道路の整備がされていない、車がなければ買い物が出来ないなど様々な問題があるだろう。しかし、暮らしにくさを解消するために行政ができることはたくさんある。私が最初に思いつくのは公共交通機関の整備だ。利用者の減少により、バスの本数を減らすしかなくなっている会社も多いが、それでは本数が減ることで、さらに不便になり、若者の地方での就職の妨げになるという悪循環が起こるだけで、根本的な解決にはならない。農村漁村の周りの国道の整備などではなく、こういうところにこそ、行政の援助が必要ではないだろうか。住民の立場に立って、援助や整備を進めることが大事だ。また、今はインターネット社会だ。インターネットを利用することで地方において都市と同じような仕事をすることも可能であろう。この画期的な道具を上手く利用すれば、地方の短所も大きく解消されると考えられる。これに関しても、導入の手助けなど行政のできることはたくさんあるはずだ。

 

確かに、地方の山村漁村での過疎、若者不足はとても難しい問題だ。国民の意識改革が必要であるように根が深くて、解決までは長い年月がかかるだろう。しかし、知恵を絞れば、様々な解決策は浮かぶ。行政は国民がこれらの問題を考え、解決するための手助けをするという姿勢を忘れてはいけないと思う。これからも地方の過疎は進むだろうが、いつまでも都市の開発にだけ力を注いでいるわけにはいかない。それだけではこの国は発展していかないだろう。むしろ今、可能性を秘めているのは地方や、そこにある文化だと私は思う。地方の過疎を一刻も早く、少しでも防ぎ、そこに新たな価値を見出すことが急務だ。

 



[i] 内閣地域活性化情報サイト http://www.chiiki-info.go.jp/

[ii] 農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/