090119 junkiy

現代政治の理論と実際

 

 

国際学部 国際文化学科 山川隼希

国連改革 ―日本の安保理常任理事国入り―

 

 

近年、国際連合の改革の必要性が叫ばれている。我が国日本においても、たびたび耳にするようになり、その度に、安全保障理事会の改革、特に、日本やドイツ、ブラジルなどのいわゆる先進国や新興国と呼ばれる国々の常任理事国入りの話があげられる。そこで、私は日本が国際連合の安全保障理事会常任理事国入りする必要があるのか、そうすることが世界にとって果たして有益なものなのか、という疑問を抱いたため、このテーマに設定をした。

 そもそも、なぜ国際連合の改革が必要であるかというと、現在、国際社会の様々な問題に国際連合が対応できていない部分が多く見られるためである。その中には、資源・環境の保全の問題や、国内避難民への対処などのように国連発足当初には十分に予測できなかった問題もある。また、現在、世界中で広がりを見せている経済危機にも十分に対応できていないのが現状である。

 ここで、日本が安保理常任理事国入りすべきであると自ら主張する理由は何なのだろうか。

外務省が述べている理由として挙げられるのが、

@日本の国連分担金の分担率は全加盟国中第2位であることに加え、任意拠出を通じても国連の様々な活動を支えているから。

A平和の定着や国造り、人間の安全保障、軍縮、不拡散など様々な分野において国際社会への貢献を行ってきたから

B国際の平和と安全の維持に主要な役割を果たす意思と能力のある国が常任理事国となり、常に安保理の意思決定に参加する必要があるから。

(参考:外務省 なぜ日本が安保理常任理事国になるべきか

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/un_kaikaku/j_rijikoku/j_rijikoku.html

 一つ目に挙げられている分担金の割合や拠出金の額についてだが、国連に対して多額の金額を拠出すれば地位を確保することが可能であってよいのだろうか。私は地位をお金で買うような感覚に感じてしまう。

 また、日本は世界の平和に貢献を行ってきて、平和と安全の維持に主要な役割を果たす国であると自ら述べているが、果たして本当にそうなのだろうか。確かに、日本国憲法第9条は世界に誇るべきものであるし、その戦争放棄という内容を守ってきた。しかし、間接的に戦争の援助を行うこともあった。それに加えて、日本はアメリカの言いなりになっているだけではないだろうか。たとえば、世界の平和のために日本はアメリカのイラク侵攻を強く批判しただろうか。現在の日本のアメリカに対する状況では、たとえ日本が安保理常任理事国入りしたとしても、アメリカの言いなりになってしまい、アメリカの実質的な権力の増大につながってしまう危険性がある。

 国連改革とは先に述べたように、国際社会の様々な問題によりよく対処できるようにすることが目的である。安全保障の面でいうと、軍縮・軍備などの管理、紛争の予防、紛争の平和的解決、侵略等への対処などの機能的な面の問題があり、それら機能面を強化していくために、安全保障理事会の改革という制度的な面の手直しが必要となるわけである。他の分野における問題でも同様に、機能面の強化のために制度的な手直しが検討される。しかし、日本国内でよく耳にする報道などにおいては、機能面については触れず、安保理の常任理事国の改組という制度面だけが独り歩きしてしまっている。つまりは、目的が明らかにされないまま議論が行われているのである。

 現在、安保理の常任理事国の改組の問題で二つの方向性がある。

 一つが、日本やドイツ、ブラジル、インドなどの「新大国」が常任理事国入りすることである。もう一つが、アフリカ諸国などの開発途上国が常任理事国入りを求めることである。

 これらは、同じ常任理事国の改組の問題であっても、機能的な面、つまり、目的が全く異なっている。前者の場合、大国中心主義を肯定した上で、国連発足当初でなく今現在の「大国」の指定のやり直しを求めるものであり、さらにこれまで以上に大国中心主義を促進することにつながっていくものである。それとは違い、後者の場合、大国中心主義を否定して、「大国が根幹ポストを独占している」状態に異議を唱えるものである。私は後者の安保理常任理事国の改組は必要であると考えている。

 ここで、日本が常任理事国入りすることによる日本のメリットを整理しようと思う。

外務省がメリットとして挙げているのは、

@安保理において、日本の国益が得られること。

A国際社会に対する貢献に見合った地位が得られること。

B国際情勢に関する情報が集中する安保理で、日本の安全保障にかかわる情報を迅速に入手できること。

C国連の取り組みについての意思決定に参加することで国際の平和と安全の維持についてより建設的な役割を果たせるようになること。

の四点である。

(参考:外務省 なぜ日本が安保理常任理事国になるべきか

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/un_kaikaku/j_rijikoku/j_rijikoku.html

また、私なりに日本の国連安保理の常任理事国入りは世界に何をもたらすかを整理すると、

@分担金の割合などを理由に常任理事国入りをするとなると地位をお金で買えるような状況を現実化してしまう。

Aアメリカの言いなりになっているため、安保理でのアメリカの権力の増大につながってしまう危険性がある。

B大国中心主義を現在以上に促進する。

という点が挙げられる。

 私は、日本の安全保障理事会常任理事国入りは世界にとって、有益であるとは言えず、あまりよい結果をもたらすものではないと考える。国益の追求はもちろん重要なことではあるが、世界大の利益を最優先事項にすべきであり、それがより良い世界を創造していくことにつながるのではないだろうか。