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田宝 遼「この国はいつまでも土建国家でよいのだろうか?」

 

 2008年4月からガソリン代が1L当たり20円ほど値下がった。ガソリン税のうち道路特定財源の暫定税率による上乗せ分が野党の反対で失効した為だ。民主党は「ガソリン値下げ隊」などと姑息なパフォーマンスだと思ったが、国民に訴えていた。その結果2007年末から高騰を続けていたガソリン代が下がったのだから消費者は大歓迎だった。マスコミもガソリン代が下がったことを大きく伝えていた。「特定財源」というのは特定の税収を特定の歳出に固定化するものである。だから「道路特定財源」の使い道はもっぱら道路建設にということになる。1953年に法制化され、その後の経済発展の基礎をつくったといえる。1974年に第一次石油ショックに対して石油の消費を抑える大義名分で期間限定の上乗せ税率という増税が行われたが、それ以来延長延長で34年間も続きもはや暫定ではなく恒久税率となっていた。それが一時期とはいえ失効したのだ。その後与党は「暫定税率の復活」及び『道路特定財源制度の堅持』を主張し今後10年間延長されることになった。小泉、安部政権で進められていた一般財源化、道路中期整備計画の縮小への改革とは方向転換する形となった。現在では、原油市場に流れ込んでいた資金が世界金融危機を迎え、潮が引くようにオイルマネーが去り1L当たり180円だいにもなっていたガソリン代は100円を割り出した。消費者は安価であれば暫定税率の撤廃や道路特定財源の一般財源化のことなど忘れてしまっている。しかし、あの問題はなんだったのだろうか。少子高齢社会に突入したわが国にとって、特定の税金を全部道路作りに回してしまっていいのだろうか。年金制度や地方自治体の経済破綻、医療制度の小児科医や産科医不足や大都市部と地方との格差のひろがり、また非正規雇用労働者の大量リストラなど課題山積みの政治と経済状況を公共事業となおうって道路建設に頼る土建国家を続けていていいのだろうか。と疑問になり調べてみようと思った。

 暫定税率の撤廃は1種の減税であるが、それによる減収は26000億円にのぼる。国はもちろん地方自治では大いに困る問題で知事市町村長の99%が暫定税率の復活と新規道路建設を促進するように求め危機感をあらわにしていた。地方では暫定税率が廃止されると、税収減となり公共事業としての道路建築工事の減少による雇用の減少が地方の疲弊を促進させ、建設業界の連鎖倒産の恐れもぬぐいきれない。高速道路などインフラの充実もはたされていない県もあり、企業誘致や地域医療等でますます中央との格差が拡大することも懸念されていた。また、過去の道路建設による借金返済や新たな借入金の頭金として出せなくなるため、借金も滞るとし地方自治体の破綻にさえ追い込まれかねないとした。地方自治体は30年超の土建経済にひたりきりでもはや這い出せない状況にあることがわかった。しかし、日本の道路総延長はドイツの5倍にも達しており、道路面積でもOECD諸国内トップであり、必要なものなのかと疑問視される点もある。また、税を引き下げることが需要を増大し、温暖化防止に逆行するとの指摘もある。少子高齢化、年金問題、医療福祉など問題やま積みの時代にいつまでも土建業に景気対策をまわす政治でよいのだろうか。

つぎに、道路整備は本当に疲弊した地方の活性化につながるのだろうかということを考えてみたい。バブル崩壊後不況対策に公共事業として道路整備が推し進められ高速道路が開通し、ショッピングモールが各地にできたが、東京の大企業が恩恵を受けるだけで、地元の買い物客はショッピングモールに流れてしまい、もとからあった地元の大型店や商店街はさびれてしまうという現象がおきてしまっている。実際、1990年代宇都宮環状線ができた結果郊外に長崎屋など大型店が移動したり、新規参入の大型店ができてその影響で宇都宮市馬場町付近の中心部は次々にデパートが撤退し寂れてしまっている。現在では北関東自動車道などの開通で交通がもっと便利になり上三川のFKDや佐野や那須のアウトレットへも買い物客はでてしまうようになった。宇都宮中心地の地元商店街の活性化は図られているとはいえない状況である。

地方都市の活性化は、道路建設等、土建事業ではすでに計れない時代になっている、グローバリゼーションが到来し世界を相手にしなくては経済発展が見込めない時代となったが、公共事業に依存しきったため産業構造の転換がはかられていない。公共事業の借金づけの地方自治体と言っても、言い過ぎではないのではないか。

2008年、夏以降世界金融危機の様相を呈している。バイオエネルギーなどのエネルギー転換の波もおとずれ、世界同時不況といういまだかつて経験のない不況の波が襲い掛かってきている。

輸出依存型の経済で景気対策を行っていた日本は、世界同時不況ではひとたまりもない状況になっている。また、国は600兆円の赤字を抱え金利を上げることも不可能だ。県内でもISUZANISSANなどの自動車メーカの大量派遣切りが行われ問題になっている。

市場原理主義といわれた構造改革の痛みは日本経済を重体にしていったといえる。ゼロ金利政策を続け、円安を誘発し輸出を増やし景気回復を図る一方で労働市場の規制緩和で多くの非正社員を生み出して日本の以前からの終身雇用を破壊させてしまった結果だ。格差の広がった社会に不況が襲った。非正社員は年末の寒空に路頭に迷わされた。現在、雇用や年金医療などの社会保障の建て直しは必要な政治である。

ではどうこの日本の地方自治体を立て直していくのか考えていきたい。今回の石油高騰の経験をいかして、今後、中国、インド等の台頭、中東地域の政治不安、オイルマネーの暴走、埋蔵量の枯渇が予想されるなどでガソリン高騰に振り回されることのないように『脱石油』エネルギー革命を考えていかなければならないと思う。環境先進国であるヨーロッパをしらべてみると、ドイツでは環境税や自然再生エネルギーの固定買取制度を実施している。再生新エネルギーで雇用を生み出すことはできないかということを提案したい。アイルランドは地熱発電で水素ガスをつくる政策がある。地熱発電ならば日本も火山国なので実施できるはずだ。特に栃木県北部には良質の温泉場がある。不可能ではないはずだ。また、栃木県は首都圏にちかいため新鮮な牛乳を供給でき、肉牛の飼育もさかんな畜産県である。飼い方も放牧は少なく牛舎飼いなので純粋な糞だけを集められるのでそれを大量に収集してメタンガス発電を行う施設を作るのはどうか。山林では間伐材をチップにして自然再生のエネルギーとして活用する等は充分県内でできるローカル型のエネルギー改革だ。下刈り、除伐、蔓きり、枝打ち、間伐など森林育成林業は手間がかかる。林業は人手不足、後継者不足だ。木を使っていかなければ森林は死んでしまう。充分に雇用も見込める公共事業になると思う。食料自給率についても休耕田に牛や豚などの飼料を作るなど、輸入飼料に頼らない方法を見つける。都市部の退職した団塊の世代を地域に受け入れ、後継者のない農業に従事できるようにし、小規模な農家でも生産が上げられる流通構造改革を行うことも地方自治体の地域事業であると思う。食糧管理法がなくなり、各々で直売ができるようになったが、直売所イコール安売り所ではない。作り手の農家の栽培方法や農薬等の安全性を直接消費者につたえることのできる流通であることを農家にも消費者にも認識を徹底させ地産地消にすることが大切だ。農家が自立でき、合理的で環境に優しく安全な農業経済を考えていかなくてはならない。かつて石炭や薪の生活が石油に代わったように、新しいバイオエネルギーと新しい構造の流通が地方自治体の経済を支えていく時代が来ると思う。近く環境IT産業バブルがくるかもしれない。土建事業よりも環境を生かした地域に密着し人と人のつながりを深くする公共事業を目指すべきだ。そのために我々宇都宮大学生は今後地域経済活性化の新時代を担う礎になるため努力しなくてはならないと思う。

参考文献 

道路特定財源Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%93%E8%B7%AF%E7%89%B9%E5%AE%9A%E8%B2%A1%E6%BA%90%E5%88%B6%E5%BA%A6

毎日新聞