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佐山友香「もう一つの働き方―地域活性化に注目して―」
現在、米国の金融危機をきっかけとして、全世界が不景気に苦しんでいる。多くの会社が倒産して、何万という人が突然解雇をせまられているという現状があるのは事実だ。こういった問題を身近に感じることができるのは、地元であると思う。自分の住んでいる地域が現在どんな状況にあるのかを知ることによって、現在の世界の問題を理解するのに役に立つのではないだろうか。私は、正社員、派遣社員、パート、アルバイトなどの働き方に加えて、社会起業家という新しい選択肢があるということに着目したいと思う。それは、ある地域に密着して市民のニーズに合わせて起業することで、雇用対策ができるのではと考えているからだ。しかし、働き方の多くは良い面と悪い面の両面がある。だから、社会起業家について、どんな良い面や悪い面があるのか、現実的にもう一つの働き方として受け入れられるようになるのかについて地域活性化に注目して考えていきたい。
まず、栃木県の働き方の現状について述べる。栃木県も全国と同じように、倒産する会社は増加傾向にあることから、解雇された人数は増加していると考えられる。また、平成21年1月9日現在では、栃木県の有効求人倍率は0.95となっており、6か月連続で低下している。[i]つまり、求人数よりも求職者数が上回った状態にあるということなので、雇用先を見つけることも困難になっていることがわかる。また、今後雇用状況はさらに悪化していくという見解が出ている。このような現状を考慮した上で、私は社会起業家が新たに起こすビジネスが、雇用対策になるのではないかと考えている。
次に、社会起業家についての良い面と悪い面、すなわち地域に及ぼすメリットやデメリットについて考える。社会起業家というのは、社会において自分が変えていきたいと思ったこと、改善したいことについてのアイディアをそのまま仕事にしてしまう人のことだ。つまり、はじめから会社を立ち上げるということは、ボランティアと違ってビジネスとして成り立たせることが第一条件である。だから、資金の問題や人集めといった問題を一つ一つ解決していかなくてはいけない。そして、ある対策をビジネスにしたところで一生その仕事で生きていくことができるのかという大切な問題がある。また、安定性も保証もない。これらは、社会起業家になる不安要素であると思う。何よりも自分へのリスクが大きすぎるということが問題だと感じる。
ここで、私はこのような問題に対して社会起業家を支援する団体があるということを述べたいと思う。起業するということは簡単にできることではないが、それについて支援してくれる団体が2008年に設立された。それは、とちぎユースサポーターズネットワークという団体である。この団体は社会起業家がビジネスを立ち上げて、事業を実際に持続的、発展的に行うための支援を計画している。また、オフィスの貸出やインターンシップなど、地域で若者が活躍しやすい環境を作っている。現在、社会起業家になりたい若者(大学生を含む)を募集しているということだった。社会起業家について、どんな人がどんな分野で活躍しているかを説明するシンポジウムに参加してみたのだが、ニートの支援や国際問題や環境問題など、さまざまな分野があることが分かった。したがって、自分のしたいことをそのまま形にできるのが社会起業家の強みでもあると思う。
次に、社会起業家を支援する団体ができるほどの、社会起業家の良い面について考えると、一番は地域活性化ではないかと感じる。例として、社会起業家として活躍されている栃木県下野市国分寺産業の田村友輝さんという方にお話を伺い、実際に会社を見学させてもらったことを述べる。国分寺産業とは、ゴミの回収や廃棄物処理を行う会社である。ゴミの回収という仕事は全国にも数多くあるはずで、変わった点はないように思えるが、この会社は本当の意味で地域貢献をしている会社だった。まず、働いている人は年齢も、出身もさまざまだが、全員が挨拶と向上心を毎日持ち続けるための、朝礼を行っている。朝7時半に社員全員で外に出て、近所の人に全部聞こえるくらいの声の大きさで、挨拶や経営理念や夢や目標について話していた。見ていてとても元気になるような朝礼だった。珍しいと思ったのが、この会社は実際に朝礼を見学することを歓迎していて、誰でも見に行くことができるということだ。社会に対してとても開放的で、年下であり初めて訪れた私にでさえも躊躇することなく明るく挨拶をして受け入れてくれた。本当に目標とやりがいを持って仕事をしている大人という姿を知ることができたと思っている。こんなゴミ回収の人は私の地域では見かけない。普通は、ただゴミを回収し、無言で去っていくだけである。この会社が地域で広く受け入れられているのは、ゴミ回収のときの元気と挨拶によってだと話してくださった。とにかく明るく、元気であった。ゴミ回収に来てくれることが毎日の楽しみだというお年寄りの方々がいらっしゃるほどだと聞いて、私は納得した。そこで考えたことは、社会起業家ということばはあまり浸透していないし、まだ漠然としているところがあるため、例えば「お年寄りの介護サービス」などのように社会問題に対して、実際に行動することだけが社会貢献と考えがちだと思う。しかし、この国分寺産業の例のように、何をするかではなく、していることに対してどう関わっていくかによって地域を活性化できるのだと感じた。
これらをまとめると、社会起業家という働き方はリスクが大きく成功するまでは大変という点はあるものの、さまざまな人を雇うことができ、地域に貢献しやすい働き方であるということだ。そして、支援してくれる団体があるのだから誰でも始めることは可能であるという点で、社会を変えていきたい学生や若者、さらには社会人が今後一層社会起業家というものも就職の選択肢であると考えていける環境を作っていけたらいいのではないかと思う。全国には多くの社会起業家が、日本だけではなく世界で活躍している。それぞれの場所で、その地域のニーズに合った課題について取り組み、多くの雇用を促進しているのは事実である。私は、働くことと地域を活性化するのはイコールであってほしいと思う。
今の景気のままであるとすると、今後ますます解雇されて仕事を見つけられない人が増加してしまうだろう。そんな時代だからこそ、自分の地元で起業し目標を持って働くということが地域活性化にも、雇用対策にもつながる大切なことではないかと考えている。