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岩瀬涼「定額給付金における各地方自治体(栃木県を主とする)の反応について」

 

定額給付金とは

定額給付金とは、国が各市町村別にお金を交付し、それが私たちの手元に現金という形で入ることにより消費が拡大し、景気回復を図るというものである。その金額は1人当たり12,000円、加算は65歳以上及び18歳以下8,000[i] となっている。この給付金にかかる費用は総額2兆円[ii]に上ると予想される。しかし、この定額給付金が景気回復に与える影響は小さく、例え給付される2兆円全てが消費されたとしても、GDP(国内総生産)比でわずか0.4%しか上昇しないとの試算もでている。また、実際に全て消費されるのは難しいとのことから、経済効果としては0.2%前後の上昇しかない[iii]と言われている。全て消費されるのが難しい理由としては、この不景気の中、多くのお金が消費ではなく貯蓄に回るからであると考えられる。

この定額給付金は08年度2次補正予算案の目玉とされている中、具体性に乏しい、実施に関して各自治体に丸投げ、首相の発言に一貫性がない、などの批判的な声が後を絶たない。

自治体の負担について

 批判的な声が多い理由として、自治体の負担が大きいことも挙げられる。もし給付金を給付することが正式に決定したとしても、今のままでは広告活動などの職員の負担が増えてしまう。他にもお金を受け取った後を狙ったひったくりや、詐欺行為、更に銀行振り込みの場合には金融機関のパンクなども予想される。これらの予想される事件などを防止することはもちろん、予期せぬ出来事にも対応できるような状態にしなければならない。このように私たちのような給付金を受け取る側にとっては、指定された場所に行きお金を受け取るだけだが、自治体側にとっては多大な労力を要することになる。

各自治体の反応は

 各自治体の反応についてだが、和歌山県の各市では、「市町村の判断に任せることについては何か釈然としない。細部を詰めていく上で地方の実態や意見を十分踏まえてもらいたい」という意見や、「政府はスムーズに実施できる制度にしてほしい」、「各市町村内で意見交換や情報交換し調整していく必要があると思う。市町村間で違いが出てくると混乱も招きかねないので、回避していくようにしたい」[iv]などの声が挙がっている。やはり、各自治体に任されるということから、できるだけ自治体の負担にならないよう簡単に行えるようにする、共通の仕組みを作り混乱を防ぐようもっと盛んな意見交換をする機会が欲しい、などの負担を軽減するための対策を求める声が多い。

 次に私の地元である栃木県では、最近、定額給付金の撤回などを求め自民党を離党した渡辺喜美元行政改革担当相の話題で持ちきりとなっている。私と同じ栃木県地元という渡辺氏の定額給付金に対する意見が栃木県全体の意見とは限らないが、今回は渡辺氏の反応を栃木県の反応として取り上げたいと思う。

 渡辺氏は定額給付金の考え方に反対の立場をとっている(200915日現在)。記者団に対し、「市町村が自らの企画立案で生活防衛・弱者対策をやるとしたら、いろんなアイデアがある」[v]とも発言している。

私もこの意見に賛成である。確かに、全国各地で定額給付金という形でみんながある程度の足踏みを揃えたほうが、その効果にばらつきが生じにくく、自治体間の格差は生まれにくくなるだろう。しかし、地方分権が進んでいる現在、政策を自治体に委ねることに問題は少ないと考える。もちろん、お金だけ渡し、後は好きなように、という丸投げの形はあまり好ましくない。各自治体の地域性を活かした政策や、事情に合った政策に定額給付金の約2兆円というお金を使ったほうが、効果は大きいと思う。

渡辺氏は離党後、各市町村と協力し、国民運動を起こす[vi]、ということも強調している。このことから、栃木県が一緒に国民運動に参加するのか、ということに興味を抱く。現時点ではどのようになるか明らかになっていないが、いずれ渡辺氏個人ではなく、栃木県全体がどのような行動を取るか迫られる時が来るだろう。今後ともこのニュースと向き合って行きたい。

定額給付金の今後

 現在(2009115日)、与野党を問わず反対の声が多く、定額給付金は迷走状態となっている。この定額給付金は3年後に消費税の増税を[vii]、というものとほぼ同時期に提案されたものであるため、いくら給付金をもらったとしても、もらった側の税率に対する不安が消えることは無いだろう。今後は、税率引き上げなどの諸問題と平行しながら、不安を最小限に抑える仕組みが求められる。そのためにはきちんとした説明が必要となる。まず政府がそれぞれの説明をしっかりと行い、みんなが理解をし、情報を共有することが大切となってくるだろう。

まとめ

 ここまでは給付金の批判的な部分が目立ったが、産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が行った合同世論調査では、実際に給付金が決まれば、給付金を受け取ると答えた人が84.8%と大半を占めている[viii]との、給付金に対して前向きなニュースもある。私も恐らくこの84.8%の中の1人になるであろう。しかし、例えもらったとしても消費に回るかどうかは分からない。また、もしこの給付金が実施され、景気が回復されたとしたら、国民は不景気になると政府を頼るようになってしまうかもしれない。こうならないためにも、あくまで定額給付金は最後の手段と捉えなければならない。

今後も新聞やテレビでは定額給付金のニュースが頻繁に取り上げられるだろう。いまだに正式決定には至っていないが、今回、定額給付金について調べてみて、膨大な数の資料に驚いた。これはマスコミや政府だけでなく、国民もこの問題に関心を持っているからだと思う。できるだけ早く正式決定され、国民の不安が取り除かれれば良いとこのレポートを通して思った。



[i] 定額給付金 - Yahoo!ニュースより

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/cash_benefit/

[ii]YAHOO!ニュースより

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081211-00000734-reu-bus_all

[iii]定額給付金に関する質疑(要旨):ニュース|公明党よりhttp://www.komei.or.jp/news/2009/0109/13438.html

[iv] 「丸投げ」に不満 定額給付金の所得制限で首長(和歌山)(紀伊民報) - Yahoo!ニュースより

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081113-00000001-agara-l30

[v] 渡辺氏、離党の可能性に言及 県内会合で |下野新聞「SOON」ニュースより

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/politics/news/20090105/95069

[vi] 渡辺氏、週内に定額給付金「撤回」申し入れ(産経新聞) - Yahoo!ニュースより

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090104-00000554-san-pol

[vii] 定額給付金は不安がいっぱい! - All About focus on(オールアバウト フォーカスオン)より

http://focus.allabout.co.jp/contents/focus_closeup_c/jijiabc/CU20081114M/index/

[viii] 定額給付金 「受け取る」が85%:ニュース|公明党より

http://www.komei.or.jp/news/2009/0114/13475.html