090119akahorif

日米の政治情勢からみる国民の世論の形成の仕方

080101B赤堀文哉

 

1.    テーマ決定の目的

 僕がこの授業でこの課題を課されたとき、新聞やテレビのニュースでは頻繁にアメリカの大統領選に関する報道が繰り返されていた。そのニュースの内容を見てみると民主党のオバマ氏が米国内で今まで共和党の支持基盤であった地域で支持を広げている、とか若年層、黒人層といった新たな国民層の開拓まで行っているといったこと、オバマ氏の弁舌の巧みさなどが僕の目に入ってきた。オバマ氏はその主張が必ずしも明確ではないところも見受けられたが、その主張の中心には一貫して「変革・Change」の言葉が躍っていた。そのほかにもマケイン氏に関する報道も伝えられた。マケイン氏は民主党の一匹狼で共和党でも独自考えを持つ人物である、とかまたはオバマ氏の周辺や彼自身のミドルネーム・フセインに関してサダム・フセインと絡ませた中傷などが目についた。僕は選挙報道に目を通しながらマケイン氏はブッシュの考え方とは異なっていると主張しているし共和党でも独自な考えをもつ人物だけに、ある程度アメリカの方向性は人々に好感を持てるものになるだろうと思った。だが、僕の中ではオバマ氏がアメリカの大統領になるだろうという期待はマケイン氏以上のものがあった。なぜなら、オバマ氏の主張に前向きなエネルギーを感じ、今後のアメリカを国内外の人々の好感を得る方向に舵とりをしてくれるという期待がマケイン氏以上に高く、僕の中で確信に近いものであったからだ。テーマを決めた要素の一つとしてこれが挙げられる。

 さらに、アメリカ国民の注目を集めることができたこともこのテーマを取り上げた要素としてあげられる。今回のアメリカ大統領選の投票率は61.6%である。これは過去40年の中でも二番目の高さを誇っている。[1] つまりそれだけ国民の関心を集めることに成功した選挙なのである。

 これら二つの要素を組み合わせることでこのテーマを選んだ一つの目的が出来上がってくる。すなわちその目的とは、僕のようにアメリカ国民やアメリカ国外の関心や期待を集める選挙をするためにアメリカではどの様な手段が有効であるのか。また、その手段の中から政治への閉塞感が感じられる日本において共通していて、さらにその閉塞感を打破するために有効な手段を見出すことがこのテーマを選んだ目的となる。

2.論の展開

 まず、大統領選が始まる前のアメリカと日本の状況を比較する。次にアメリカ国民がアメリカの大統領選を通じ、新たな政治や新大統領に大きな期待を寄せていくようになった理由を分析していく。次に日本の国民が政治に寄せる期待について述べ、日本とアメリカの政治への期待と関心について比較・分析をする。さらに、日本とアメリカの政権側についての比較を行い、それらを総合して、国民が期待、関心を寄せる政治の在り方について示し、その結果に対し、僕の意見を述べていく形とする。

3.大統領選前のアメリカと現在の日本の比較

 まず、大統領選が始まる前のアメリカの状況について述べていこうと思う。まず述べておかなければならないことは、ブッシュ政権のアメリカの歴代でトップクラスの不人気ぶりであろう。ある調査では、「平均よりひどい」「お粗末」という歴史的評価をされる、と答えた人の割合が合計59%に上った[2]。これは過去40年間のアメリカ大統領の中で最も低い評価である。イラク戦争が長期間尾を引き続けていることを中心に理由が挙がるであろうが、ここで僕が押さえておきたいところは、ブッシュ政権の2期にわたる政治の結果アメリカ国内には閉塞感が満ちており、アメリカは国民もメディアもそれらを変える何かを欲する状態になった、ということである。

 次に、日本の状況について述べていこうと思う。現在の日本は、国民もメディアも麻生内閣にはほとんどといっていいほど支持をしていない。2008年に行われたある世論調査によると、麻生内閣の支持率は16.7%まで下がっている[3]。さらに、別の世論調査の結果をみると、より如実に、自民党を含めた現政権への不信感が示されている。その調査では「日本の政治家、政党を信頼していない」と答えた人の割合が68%にのぼり、さらに「これから日本の政治が良い方向に進む」に反対の意見が45%を数えた。一概に世論調査を信用してはいけないが、全体の流れとして今の日本の国民は政治に対し、悲観的であり、不信感を抱く方向にむかっているとみてよいだろう。この原因として最も取り上げられるのはやはり衆参のうち参議院の議席多数が民主党に握られていることによる「ねじれ国会」現象により、政策がなかなか決まらず、政治が安定しないことが考えられる。

 つまり、ここで僕が述べておきたいことは、日本とアメリカの社会は政治の影響によりともにネガティブな雰囲気の状態になり、政治に否定的な見方をしている、という共通の下地がある、ということである。

4.日本とアメリカの政治への期待、希望

 周知の通りアメリカでは昨年の大統領選でオバマ氏が次期大統領に当選し、将来に期待する風潮の世論を形成している。リーマン・ブラザーズの件に始まる100年に1度といわれる金融危機や、テロとの戦いなど、難題を山積させているにもかかわらず、だ。なぜか。

 それは僕が考えるに、とにかくオバマ氏が現状を「変革」できる存在である、という「雰囲気」をアメリカ国内外に作り出した結果であるだろうと思う。確かにオバマ氏はそれまでの政治とは対照的、または革新的な内容のスタイルがいくつも垣間見える。たとえば、外交のスタンスは武力より対話を重視する路線であるし、ブッシュ政権の間に孤立した国際社会において再び協調とリーダーシップを取り戻していく方向性である。また、インターネットの動画配信サイト・youtubeを利用し、これまでにはない形で国民との意見の双方向のやり取りを実現した。また、アメリカ初の黒人大統領であるなど、自身の身辺にも革新的な事柄が並ぶ。だが、当然ながら、すべてが革新で、オバマ氏の考えだけが独自なのではない。共和党候補のマケイン氏と似た政策もある。外交経験もなく、未知な点もあり、不安要素もある。しかし、ここでは深く考察しないが、彼が「変革」をもたらすイメージで自信を売り出し、世論に浸透させるいくつかの手段を取ったことで、従来通りの態度の部分は隠され、「変革者」として認識されたのだと僕は思う。これがブッシュ政権の間にできたものをとにかく変え、前に進みたいと思う大多数の国民の感情にフィットしたために(あるいはそれを見極め、合わせたために)大統領の地位と大きな期待を獲得できたのだと思う。

 では、日本の政治に対する期待とは何か。これもあるアンケート調査の結果であるのだが、中でも1位に挙げられたのは景気対策である[4]。やはり20089月からのアメリカ発の金融危機の影響を受け、景気を刺激することが何よりも優先されているようである。ところが、よく振り返ってみると9月末に発足した麻生内閣は、発足当初は選挙をにらんだ内閣といわれ、実際予想以上の支持率が得られなかったために政策をおこない始めたとはいえ、景気対策をしているのである。確かに付け焼刃の内閣ではあるし、経済対策の内容が完璧で、有効な策を打ち出し、実施までこぎつけたわけではないが、経済を、国民生活を持ち直させようと取り組んでいるのだ。それどころか、麻生内閣はほとんど経済対策しか取り組めていないくらいだ。ならば国民の希望通りのテーマに取り組んでいるのであるし、16,7%の支持率はあまりに厳しいのではないだろうか。

 僕はこの理由を、国民が政治に求めているのは経済対策ではなく潜在的に他の所にあるからなのだろうと思う。その潜在的な部分とは僕は「雰囲気」だと思う。上記のオバマ氏がアメリカに前向きな世論を促したのも「変革」によりアメリカを前に進めてくれる、というポジティブな雰囲気を作り出したからであると、述べた。日本の場合は確かに麻生内閣は世論調査の結果にあった政治の向きを向いているが、政権からは選挙のための布石、という評判が付きまといポジティブな「雰囲気」が、見いだせないから国民は支持をせず、政治への不信感や社会の行き詰まり感がぬぐえないのではないか。

 つまり、世論や国民は日本でもアメリカでも実際の政策よりもその政権や政治家自体が醸し出す雰囲気を読み取って政治に対する評価をし、社会の雰囲気を形成しているのであるのだ。

 以上の結論に対し、では僕たちに何ができるのかを考えると、当たり前のことであるがその政権が出す雰囲気が好感が持てるときはその雰囲気にのまれず、政権が掲げる政策に目を凝らし、またその政権の雰囲気が前向きでない場合でもその政策の中には非常に優れたものがあるだろう。そういった政策は見逃さずに支持できるような鋭い観察眼をふだんから磨くべきなのではないか。



[1] 2009.01.19ウィキペディアhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E9%81%B8%E6%8C%99#.E6.8A.95.E7.A5.A8.E6.95.B0

 

2009.01.19MNS産経ニュースhttp://sankei.jp.msn.com/world/america/081225/amr0812251153004-n1.htm

 

[2] 2009.0119ヤフーニュースhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090117-00000076-jij-int

[3] 2009.0119毎日JP

http://mainichi.jp/photo/archive/news/2008/12/19/20081220k0000m010098000c.html

 

[4] 2009.0119ニコ割アンケート インターネット調査http://www.nicovideo.jp/static/enquete/o/20080910.html#