081110gen

 

(*首相は1030日に)事業総額269,000億円の追加経済対策(生活対策)を発表、社会保障の安定財源確保などのため「経済状況を見た上で、3年後に消費税率の引き上げをお願いしたい」と表明した。・・・年末に税制改革の全体像を示し、2010年代半ばまでに段階的に実行するとしているが・・・・▽対策の財源は、主に特別会計の積立金など「霞が関の埋蔵金」で捻出、赤字国債は増発しない」

081031神奈川「解散見送り表明 首相、景気対策を優先」)

 

 

<追加経済対策の主な内容>

―生活者の暮らしの安心―

家計緊急支援

     生活支援定額給付金(4人家族で6万円程度)

     雇用保険料引き下げ(1.2%0.8%)

     経済界に賃上げ要請

雇用の安全網強化

     年長フリーターらの正社員雇用に助成

     地域の雇用を創出する「ふるさと雇用再生特別交付金」創設

生活安心の確保

     介護報酬改定(2万円アップ)による介護従事者の処遇改善と10万人増強

     「安心こども基金」創設による子育てサービス緊急整備

―金融・経済の安定強化―

金融資本市場安定

     市場安定に向けた国際協調、日本の経験発信、アジア地域金融協力

     空売り規制強化、企業に自社株買い要請

     金融機能強化法の改善・復活、資本注入枠の拡大検討

     生命保険の安全網への政府出資制度を3年間延長

     銀行の自己資本比率規制の一部弾力化

     証券優遇税制の3年間延長、少額投資優遇制度創設

中小企業への支援

     中小企業向け融資や保証枠(前回対策と合わせ30兆円)

     日本企業の海外事業に対する貸し付けの拡充

     中小企業への軽減税率の時限的引き下げ

成長力強化

     省エネ、新エネ設備投資促進減税

     海外子会社の利益の国内環流に対する非課税措置

―地方活性化―

地域活性化

     高速道路料金の大幅引き下げ

     地域バスの利便性向上など交通ネットワーク整備

     コメの減反に参加する農家への協力金

     地域企業再生、商店街・林業・水産業の活性化

     国産原料を活用する農商工連携の支援

住宅投資、防災強化

     住宅ローン減税を過去最大規模に拡充して延長、住宅リフォーム減税

     学校など公共施設の耐震化、防災対策

地方自治体支援

     道路特定財源から1兆円を地方の実情に応じ使う仕組みに

     自治体に6,000億円の臨時交付金を支給

081031神奈川「追加経済対策 道路財源から1兆円 国交省、族議員から反発も」)

 

 

「今回決まった追加経済対策は、金融危機で混乱する市場の安定、国内需要のてこ入れ、雇用や地域間の格差是正といった日本経済が直面する課題に対応するメニューが網羅的に並んだ。衆院選を視野に、国民各層にまんべんなく配慮を示す政府、与党の政治的意図が前面に出ている」

081031神奈川「追加経済対策 選挙視野 幅広く配慮 内需中心への転換不可欠」)

 

 

「今の臨時国会で2次補正を成立させるためには、11月末までの国会会期を大幅に延長する必要があり、年をまたいだ「越年国会」になる可能性が高い。民主党との対立が抜き差しならない局面に入れば、首相が景気対策の是非をめぐって衆院を解散し、国民の信を問う可能性もあり、年末年始は解散含みの展開も予想される」

081031朝日「裏目続き 解散見送り」)

 

 

「少子高齢化で年金や医療などの費用は膨らみ続け、それを支える現役世代の負担は重くなる一方だ。幅広い世代が負担する消費税は社会保障財源の本命とみられている。▽09年度に実施する基礎年金の国庫負担引き上げには、1%弱の税率引き上げが必要な計算。社会保障国民会議は今月、今の介護・医療サービスの水準を維持するには、25年までに3%分の上積みが必要との試算を公表した。こうしたデータをもとに消費税論議を進める構えだ。▽首相が消費増税を打ち出した背景には、こうした社会保障に必要な財源にも取り組む姿勢を示し、次の総選挙では消費税率引き上げを避ける民主党との違いを強調する狙いがある。政府・与党が年内にまとめる税制改革の「中期プログラム」に、税率引き上げの幅や時期を盛り込めるかが焦点だ」

30日の記者会見では「今回の対策の財源は赤字国債は出さない。将来世代に負担のツケを回さない」と胸を張ったが、対策には財政悪化の要因がひそむ。▽定額給付金などの財源は、財政投融資特別会計の準備金のうち今年度の国債償還に充てるはずだった分を使う。借金返済を遅らせれば国債の発行残高は変わらず、実態は「隠れ借金」だ。中小企業の資金繰り支援や公共事業の積み増し分は、赤字国債と同じ国の借金である建設国債でまかなう。追加発行額は7千億円〜1兆円弱になる見通しだ。・・・・▽新総合経済対策が功を奏せず景気回復が遅れれば、国の借金は増え、増税の環境は整わないという悪循環に迫る危険をはらむ」

「目玉は、最大2兆円の「生活支援定額給付金」。食料品や日用品の値上げラッシュに苦しむ人たちには朗報だが、高額所得者まで対象になる「バラマキ」の側面もある。・・・▽だが、景気の押し上げ効果には疑問符がつく。専門家の間では、給付金が実際に消費に回る分は35割程度で、実質国内総生産(GDP)の押し上げ効果は0102%程度との見方が目立つ」

081031朝日「効果に限界、財政悪化も」)

 

「焦点の衆院解散については当面見送るとした。米金融危機による日本への悪影響をいかに抑えるかを重視する首相の判断は妥当だ。党派を超えて危機を回避する枠組みが必要な時期を迎えている」

081031産経「主張 追加経済対策 市場安定へ全力挙げよ」)

 

「読売新聞などの世論調査では、景気対策を優先する立場からの解散先送り論が強まっている。首相の判断は、これらを総合的に勘案した結果といえよう。▽首相が記者会見で、大型の追加景気対策を打ち出したのは、日本経済の失速に歯止めをかけるために、当然のことだ」

081031読売「社説 衆院解散先送り 一段と厳しさを増す政権運営」)

 

「未曾有の金融危機で世界の株式、為替相場が混乱し、経済の先行きに不透明感が強まっているなかで、首相が解散を先送りしたのはやむを得ない判断だったといえる。本紙の直近の世論調査でも、解散・総選挙よりも景気対策を優先すべきだとの回答が63%に達し、解散・総選挙の29%を大きく上回った」

081031日経「社説 与野党は追加対策の早期実現へ全力を」)

 

 

「施策にはメリハリを付け、ばらまきではないとも自賛した。▽本当にそうなのか。言葉とは裏腹に、「究極のばらまき」である。▽与党の顔を見えにくい減税より、現金給付やクーポン券配布の方が、実績を印象付けやすい。総選挙や来年夏の東京都議選に向け「票をカネで買う」手法とみられてもやむを得ない。・・・・政治色の濃い大衆迎合やばらまきでは経済社会は強くならない」

081031毎日「社説 これは究極のばらまきだ」)

 

「世界金融危機に対応するためにも首相は速やかに衆院解散を行い、国民の信を得た本格政権が経済対策のかじを取るべきだ。それだけに見送りの判断は大いに疑問である。▽今国会で2次補正予算案の審議が行われた場合、与野党攻防の激化が予想される。首相はいらずらに解散を先延ばししてはならない。同時に民主党など各党は論戦を通じ、争点の明確化に努めるべきである。・・・・「これでもか」とばかりの選挙を意識した追加経済対策を見る限り、政治空白の回避が真の見送りの理由だったのか、疑問がつきまとう。内閣支持率が下落する中、与党の選挙情勢を危ぶんだのが実態ではないか。衆院選が先送りされ、金融危機の対策は選挙対策に急速にその姿を変えつつある。・・・・衆院選が与野党の際限なきばらまき合戦に堕す懸念は強い」

081031毎日「社説 解散先送りでは乗り切れない」)

 

「この緊急時に総選挙で1カ月もの空白をつくるわけにはいかない、という見方もあるかもしれない。だが、政治の混迷と指導力に欠ける政権が続く方がはるかに「空白」なのではあるまいか。今のままでは国際的な発信力も地に落ちてしまいかねない」

081031朝日「衆院解散・総選挙 危機克服にこそ決断を」)