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上野藤丸「道路特定財源のゆくえ」

 

 現在、レギュラーガソリン価格が150/lを超えるという状況にあり、自動車利用者は頭を抱える日々を送っている。数年前までは120/lくらいであったのになぜこんなにもガソリン価格は高騰したのだろうか。

 

その原因は原油高の高騰と投資家の投機ということで知られている。しかしこの150/l,の内訳をみると、国への税金として

・道路特定財源・・・53.8/l

・消費税   ・・・7.1/l

・石油石炭税 ・・・2.0/l      の合計62.9/lも実は払っていることがわかった。[1]

さらに、道路特定財源の内訳として

・揮発油税  (暫定的に)48.6/l ・・・(本則)24.3/l

  ・地方道路税 (暫定的に)5.2/l  ・・・(本則) 4.4/l    となっている。[2]

 

 今回この道路特定財源の暫定的に上がっている税金が来年20083月末で期限がきれる。つまり、もしこのままいけば来年4月からはガソリン代が暫定税率分が減り、25/lほど安くなる可能性がある。国会では、この暫定税率を延長するか否かを議論していて、今後どうなるか非常に気になるところである。私は、この暫定税率の行方がどうあるべきか、どうあれば理想的なのかを考えてみた。

 

 道路特定財源の歴史として、まず1954年に導入される。そのころ、日本は高度経済成長で道路網の早急な整備が求められており、その財源確保が急務になっていた。そこで、1953年に後に首相になる田中角栄衆議院らの発案で揮発油税を確立させ、その後自動車重量税などを加えたほか、19731977年度の道路整備計画で必要な財源の不足分を補おうと、揮発油税などの対象となる税金の大半の税率を暫定的に引き上げた。暫定税率はその後期限後も期間の延長を繰り返して暫定税率そのまま続き、今現在へと至る。これまで、何十年にもわたって延長を続けてきた。「暫定」と言ってはいるが、「道路建設が必要だから」とう理由で恒久的に「暫定」税率が維持されてきた。しかし、本当に道路建設はこれ以上必要なのか。ここをよく考える必要がありそうだ。

 

 国会では暫定税率をめぐる議論が日々交わされている。現段階では2つの意見がある。自民党(主に道路族)主張の暫定税率を維持するという意見。民主党主張の暫定税率廃止という意見。どちらが理想的なのか。

 民主党主張の暫定税率廃止はとても魅力的な案だ。ガソリン代が25円/Lほど安くなるので私たちはその恩恵を直接感じることができる。ぜひとも廃止してもらいたい。しかし、本当に暫定税率を廃止してもいいのだろうか。

 暫定税率を廃止した場合、2兆7000億円分の税源が失われる。こうなれば予定していた道路建設は進まなくなる。また、暫定税率を本則に戻した場合、自治体によって減収額に差がでてくる。11月29日の朝日新聞に「道路特定財源上乗せ税率無くなると、地方最大384億円減収との見出しがあった。主に地方での損失が大きいようだ。地方はクルマ社会。一家にクルマは2〜3台は当たり前。地方税である自動車取引税の減額などは自治体税収に大きく響く。こうなると、地域格差が出てくるのが予測できる。民主党の暫定税率廃止案はどうやらうれしいことばかりではなさそうだ。

 

自民党(道路族)の考えている暫定税率維持の考えは、また何事もなかったかのようにガソリン代は変わらず、私たちから税金をたくさんとって「私たちに必要な道路」を造ってくれる。確かにまだ道路建設の必要な地域はたくさんあるだろう。けれど、もう建設する必要のないような発達地域もあるはずだ。そんな地域にさらに道路を私たちの税金で造るのはいいとはいえない。暫定税率維持が通れば、おそらくムダな道路造りが進んでいくだろう。

 

 自民党、民主党の意見の中間にあたるような意見もある。道路特定財源を一般財源に移す、という意見だ。道路特定財源は道路を造ることだけに使われる目的税。一般財源は道路以外の目的でつかうことのできる財源である。一般財源化すれば、必要な道路だけを建設することができ、また他にも例えば環境税などに充てることができる。日本の国債返済にも充てることができる。しかし、問題は納税者の意思を無視するということだ。ここのところをよく考えなくてはいけないのだろう。

 

民主党は暫定税率を廃止にすることを強みに、衆議院を解散させ政権を獲得しようとしている。「ガソリン値下げ実働部隊」という部隊をつくり自民党を脅威にさらしている。「ガソリン代25円値下げ」を大書したビラも作製していて、国民の理解と指示を得ようとしている。[3] もし、衆議院が解散して再選挙することになったら、我々は目先の利益にとらわれずしっかりと後先のことを考えて、投票することだ大切だろう。

 

 

暫定税率の行方の形として3つあったが、その中で私は3つ目の財源一般化が一番いいのではないかと思う。必要最低限の道路を造り、余った一般財源を有効に活用してもらいたい。

たとえどの政策になっても税金の無駄遣いは絶対にしてほしくない。必要な道路だけを造ってほしい。そんななかで、もしお金が余ったりなどしたら、納税者に返金もしくはそれに見合った何かを与えてくれたらいいなと思う。原油高高騰のせいで、一段とガソリン価格が高く感じられる今日。そのせいで消費者の財布のひもは固くなり購買意欲は減っているのではないだろうか。ガソリン価格の高さゆえに日本経済が落ちこんでいってしまう可能性がありそうだ。今回の暫定税率の行方は今後の日本経済に大きく影響を与えるのではないか。今後の暫定税率の行方に目が離せない。

 

 

 

<参考文献>

[1]日本経済新聞朝刊(H19 12/5

[2]国土交通省道路局 http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-funds/sp-funds/sp-funds00.html

[3]産経ニュース「民主、ガソリン値下げ部隊創設 自民は協力要請 白熱するガソリン税論議」

  http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080113/stt0801131926004-n1.html