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田中芽衣子 「ODAのこれまでとこれから―対中国ODAに焦点をあて―」

 

私たちの税金が使われているODAOfficial Development Assistance政府開発援助)、日本は1990年を除く19892000年までODA援助額が世界第1位であり、多額の資金を拠出してきたわけだが、よくニュースなどで取り上げられる割に、大まかな制度は知っていても、その歴史や問題点や今後の動向など、疑問な点が多々あるのでそこを解明して自分の意見を導こうと思う。

 

そもそも、日本は敗戦後の19461951年の間にアメリカから約50億ドルの資金援助や他の多くの国からも物資の援助を受ける側で、この援助が日本経済の早期復興に役立ったことは言うまでもない。それを踏まえた上で、日本のODAによる開発援助は1954年にコロンボ・プラン(開発途上国援助のための国際機関のひとつ)への加盟を機に始まる。日本の初期のODAは戦後賠償の意味合いが強く、今日でも日本のODAがアジア諸国を重視しているのはそのためである。援助とは名ばかりで、戦争での自国の悲惨な行為をお金で鎮めよう、押さえつけようとしているように思えた。

 

日本がまずODAを拠出したのは、ビルマとの間に「日本・ビルマ平和条約及び賠償・経済協力協定」を結び、賠償供与をしたのが初めで、フィリピン、インドネシア、ベトナムと続き、戦後処理の一環としてカンボジア、ラオス、マレーシア、シンガポール、韓国、モンゴル、ミクロネシアに対して無償援助などが行われた。

 

1960年代、日本が高度成長期に入ってからは徐々に現在の体系に近づき、ODA供与額も拡大する。62年にOECF(海外経済協力基金)設立、63年には開発援助委員会(DACDevelopment Assistance committeeOECDの主要な委員会の一、援助供与国の間で援助政策について意見調整を行う国際フォーラム)に参加し、64年にはOECDOrganization for Economic Cooperation and Development経済協力開発機構、 経済成長・発展途上国援助・通商拡大の三つを主要目的とする)に加盟。74年にJICAJapan International Cooperation Agency国際協力事業団※現在は国際協力機構、主に技術協力を担う)の設立など、援助体制が確立されてくる。

 

ODAが量的に拡大を進める一方で、有償資金協力に加え、一般無償協力や食糧援助が始まるなど形態が多様化し始める。有償資金がタイド(tied:いわゆるひもつき援助のことで、開発において必要となる物資や役務を援助供与国から調達することを限定する援助のこと)で供与され、それが日本の輸出を促し、日本の高度経済成長に大いに貢献した。日本はこのときも、自国の利益しか考えていなかったように思う。お金は出しても、それが最後には自分のところに返ってくるわけだから。日本は物価なども高いほうだから、適切な援助を最優先に考えるなら、物価の安いところからの輸入や、その途上国に合う技術を持っている国からの技術援助が最も有効的だと思う。しかし、無理に強制しないのであるならば、とても賢いやり方だと感じた。

 

1980年代になると内外の批判を受け、資金援助をアンタイド化へ推し進める。またBHNBasic Human Needs衣食住・初等教育・医療衛生など生活基盤分野のこと)関係の援助を拡大する。89年にはアメリカを抜いてODA援助額第1位となり、ODAは日本にとって重要な国際貢献の柱となっていった。92年には「ODA大綱」(政府開発援助に関する基本理念や重点事項などを集大成したもの)が閣議決定され、ODAの理念が定まった。90年を除く2000年までの約10年間、日本は援助額のトップを走り、量だけでなく更なる質の向上が期待された。2001年にアメリカに1位の座を譲り、これ以上もはや量的な拡大が望めない中で、いかに無駄を無くし適切な援助を行うか、また、援助の質を高めることや開発途上国のニーズにいかに答えていくかが課題となるだろう。

 

ここで、私が特に注目したのは日本の中国に対するODAである。対中ODAは日中平和友好条約が締結された翌年の1979年に開始され、20055月までに有償資金協力(円借款)を約31331億円、無償資金協力を1457億円、技術協力を1446億円拠出し、その総額は約3兆円以上となっている。

 

現在の中国経済は日本をしのぐほどの勢いがあり、有人宇宙飛行に成功するなど、国際的にも中国への多額の援助はもう必要ないのではという声が多く出ていた。そんな中で、日本政府は北京五輪が開催される2008年をめどに対中ODAを停止する。このODAを打ち切る理由としては、先に述べたように中国経済が自立できるまでに成長したことが第一に挙げられるが、他に日本の財政赤字が深刻化し、もはや財政的余裕がないということや、中国の政策のいくつかが「ODA大綱」に違反すること、反日感情が横行して友好的でなく、日本のODAに対する謝意があまりないことなどが挙げられるだろう。

 

中国の「ODA大綱」違反とは中国が年々、軍事費を大幅に増加させていること―これは中国がODA資金で近代兵器を買い集めていることや、ODAによって建設された高速道路が結局は軍事機能をも備えていること―や、鉄道が民営化されること―これは原則の「個別企業には供与しない」に反し、民営化されることでそれが軍事転用されても日本側が口出しできなくなる可能性がある―また、中国政府に対する批判や民主化を進める活動家、宗教家の弾圧などの人権侵害が行われていることなどである。

 

しかし多額の援助をし、中国経済の振興に大いに貢献したはずの日本に対して反日感情が起こったり、それへの謝意がないというのはどういうことなのだろう。中国の2005年版対日感情調査(中国に特化したビジネスリサーチを展開する株式会社サーチナによる消費者モニターを利用したインターネット調査)によると日本の対中ODAについて、そのもの自体を「知らない」と答えた一般消費者は32.55%と約3割にも達し、「聞いたことはある」が20.90%、「提供額は知らないがODAそのものは知っている」が38.50%、「大体の提供額まで知っている」という、かなり熟知した人は8.05%となったが、確実に低減してきている。また、日本の対中ODAを「知らない」と答えた人以外に対中ODAの評価を聞いたところ「非常に役立っている」が6.67%、「まずまず役立っている」が47.29%となり「役立っている」の合計が初めて5割を超えた。「あまり役立ってない」「まったく役立ってない」と答えた人はあまり増減がなかった。私も友人の中国人留学生2人に話を聞いたのだが、中国にいたころは対中ODAについては聞いたことがある程度で、具体的な金額などは知らなかったと口をそろえた。彼女らは留学の試験のために勉強していく中で分かってきたが、タイドなどで結果的に日本企業が利益を得ているのではないかと言い、またODAに関心を持っていなければ情報を得ることは難しいと教えてくれた。受身ではODAの情報は入ってこないのが現状だから、これで反日感情が軽減されないことや、謝意があまりないこともつじつまが合う。でも、中国政府が故意に対中ODAの情報を流さず、反日感情を煽っているなら私としては、納得がいかないし、腹が立つ。それに、これまで3兆円を超える援助をしてきたのに、いざODA打ち切りとなると歴史問題を取り出してきて、戦後賠償はまだ終わってないなんて言い出す。そもそも、日本のODAの始まりが戦後賠償で、今でも開発援助と戦後賠償に明確な区別がないのが問題ではないだろうか。開発援助のためにお金を出すのか、戦後賠償のためにお金を出すのかで使い道は変わるだろうし、受け取る人間も変わってくるだろう。現在ほとんど同一視されてしまっているこの2つを、ある一線で区切って、この先援助をしていく必要があると思う。また、ODAを打ち切る際のきちんとした基準を設けるべきだと強く思う。この基準があやふやなままだと、打ち切りのとき中国のように混乱や問題が多く発生するし、打ち切られたことに対しての反感や摩擦も増大すると思う。

 

これからのODAの課題としては開発援助と戦後賠償の区別をし、ODA打ち切りの際の明確な基準を設けること。また、税金によって行われるODAの評価や成果などの情報をもっと納税者である国民に伝えて関心を仰ぐことや、援助の受け手である開発途上国の国民にも援助の内容や成果などの事実を伝え、知ってもらうことが重要になると思う。これからも日本の国際貢献の柱として、ODAは日本の国民にも援助を受ける側の国民にも親しまれる、顔の見える援助であるべきであると考える。

 

 

≪参考≫

政府開発援助 http://ja.wikipedia.org/wiki/ODA

対中ODA(詳細) http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kunibetsu/china/main.html

ODA大綱 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kunibetsu/china.html

日本のODAの歴史 http://www.jca.apc.org/unicefclub/research/97_oda/oda_1_2.htm

ODA認知度・貢献度

 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=1220&f=research_1220_001.shtml

対中ODAの7不思議 http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog146.html        

中国 鉄道民営化 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051120-00000001-san-int&kz=int

現役雑誌記者によるブログhttp://officematsunaga.livedoor.biz/archives/19367356.html

幕引きが課題の対中ODA  http://www.jica.go.jp/jicapark/odajournalist/105.html

切れ味が残っていた対中ODA  http://www.jica.go.jp/jicapark/odajournalist/106.html