miura060123
三浦晃毅「世界貿易機構(WTO)の多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の香港閣僚会議における農業分野の新たな貿易自由化ルールづくりと日本農業のあり方について…」
*日本の農業交渉のあり方
@ 市場アクセス
A 国内支持
B 輸出規律のあり方
C 国家貿易
D 開発途上国への配慮
E 消費者・市民社会の関心への対応
→日本の農業交渉に対する考え方は基本的に国内農業の保護
http://www.maff.go.jp/wto/wto_nihon_teian.htm#chp-8
「農業交渉の進め方」農水省HPより
*香港閣僚会議前の状況(時系列による)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)にてWTOのラミー事務局長が出席し難航するドーハ・ラウンドについての合意形成に向けて協力を訴える。(11/16)
2010年までに輸出補助金はAPEC域内先進国では撤廃することで合意。日米首脳会談でブッシュ大統領が、「農産物の取り扱いは難しいがドーハ・ラウンドを何とか前進させることが大切」輸出補助金撤廃という米国の譲歩案に見合う譲歩を他国に促し、農業保護にこだわる日本に方向転換を求める(11/17)
APECにて、WTOの加盟国すべてに2010年までに農業の輸出補助金を撤廃することや、06年までの行程表の作成を呼びかけることで合意(11/18)
輸出補助金の撤廃を米国は10年までに撤廃する方針を表明済みだが、輸出信用についてはEUの3倍以上の39億ドルだがそのうちどれだけ撤廃するか表明はしていないEUは輸出信用を厳しく支出を厳しく制限すべきであると批判する一方、輸出補助金の撤廃時期は明記できておらず、突出している55億ドルの撤廃には慎重。米国や豪州が導入を主張する農産物の関税を一定以下(75〜100%)にする「上限関税」や上限関税の対象外となる「重要品目」の数(1〜15%)は、日本や韓国が強く反対。日本は出していない輸出補助金の撤廃は「輸出国を揺さぶる切り札」だったが、関税引き下げ問題でEUと歩調をあわせるため声を大にして批判できない。(11/20)
米国、EU、ブラジル、インドの「G4」に輸入国を代表して日本とWTOのラミー事務局長が加わった「少数国会合」がドーハ・ラウンドを主導(11/27)
EUは「上限関税」の扱いで、日本のコメなど「重要品目」にも適応を認める考え。(11/30)
EUが、農業保護に固執している日本と距離を置き始めている。(12/3)
政府は後発途上国の貿易支援策として3年間で100億ドル(1兆2千億円)規模の政府の途上国支援(ODA)資金を支出する方針を固める。(12/8)
*WTO香港閣僚会議の農業における主な課題
・ 関税の削減方法、上限関税の是非
・ 輸出補助金の撤廃時期
・ 国内補助金の見直し
・ 貿易自由化ルールの決定時期
・ 関税率表案の提出期限
*香港閣僚会議における状況
日本は後発途上国への100億ドルの資金協力を柱とする支援策を表明。後発国からの輸入品は関税や輸入数量枠を原則撤廃する方針を示したが、具体的な品目や国の数は示さなかった。コメなどの高関税を維持している「重要品目」も無関税対象にすることには、農業団体が反発。今後農業団体や農林関係議員との調整は難航しそう。(12/15)
後発国からの輸入品のうち関税や輸入数量枠を撤廃する品目の割合を、現在の約93%からコメや水産物など約150品目を除く98.1%まで引き上げる方向で最終調整に入った。支援対象とする国の範囲については軍事政権国を含めることには慎重な意見があったが、最終的にはすべての後発国を対象とする。(12/16)
農業交渉で日本がEUとの連携を強化している。二転三転する日本の態度に批判。(12/17)
関税の引き下げの難しい「重要品目」について、引き下げ幅を小さくする代わりに低関税での輸入義務を拡大する方針が明記された閣僚宣言案を表明。重要品目の関税引き下げ幅が一般の農産物の半分にしようとすれば引き下げ幅が三分の二の場合に比べて低い関税での輸入量を増やさなくてはならない。これによって、日本はコメの輸入量が拡大する方向性になった。(12/18)
採択された閣僚宣言でEUが多用する輸入補助金の撤廃期限が、米国などは2010年を主張していたがEUが抵抗し2013年に決着した。このことが今回の閣僚会議では争点となったため、日本が争点としていた重要品目についての項は先送りされた。(12/19)
*香港閣僚宣言の農業分野での格子
・ 2006年4月末までに貿易自由化ルールを合意
・ 農産物の輸出補助金を2013年までに全廃
・ 農産物の重要品目の扱いは合意に至らず
*今後の展望
日本としては重要品目についての上限関税の導入についての言及が宣言に含まれなかったことは成果だとしているが、輸入補助金について決着したことによって、06年4月に再開される交渉では、議論の矛先が日本に向けられることは必至である。
以上朝日新聞を参照とする
*結果概要(農業分野)
1.日時・場所:平成17年12月13日(火)〜18日(日) 於:香港
2.参加国:WTO加盟149か国
3.結果概要:
(1)2006年中のドーハ・ラウンド終結に向け、2004年8月の枠組み合意以降これまでに収れんの見られた事項を中心に交渉の現状をとりまとめる形で、閣僚宣言が採択された。
(2)農業に関しては、すべての形態の輸出補助金の2013年までの撤廃、総合AMS(国内支持)及び貿易歪曲的国内支持全体の削減の、3階層による定率削減(我が国はいずれも中位階層)、関税削減の4階層の階層方式等に合意。また、関連するすべての要素を考慮に入れて重要品目の扱いに合意する必要性を認識。
今後の交渉スケジュールに関し、2006年4月30日までのモダリティ確立、7月31日までの譲許表案提出に合意。
(3)綿花に関しては、先進国の輸出補助金の2006年までの撤廃、LDC(Least Developed Countries)無税無枠の供与、一般品目よりも野心的な貿易歪曲的国内支持の削減に合意。
(4)LDC無税無枠に関しては、すべてのLDCの原産であるすべての産品について、2008年までに又は遅くとも実施期間の始まりまでに無税無枠を供与することに合意。それが困難な国は、2008年までに又は遅くとも実施期間の始まりまでにタリフラインの97%以上について無税無枠を供与。
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20051220press_10.html
「プレスリリース」農水省HP