Katabami050113

方波見律子「北京オリンピックー三つのスローガンに関わる現状―」

 

200888日〜824日に北京オリンピックが開催される予定です。8は中国で縁起の良い数字とされており開会の時刻も午後88分と予定されています。今回のオリンピックでは「ハイテクオリンピック」「ピープルズオリンピック」「グリーンオリンピック」といった三つのスローガンが掲げられています。私はそれぞれのスローガンについて調べていき、なかでも「グリーンオリンピック」について注目して調べました。

「ハイテクオリンピック」

科学技術を利用してより利便性が効いたオリンピックにしようという活動が行われています。例えば交通整備です。交通インフラ建設として公共交通整備に60億元投入され、新たに24億元が北京市に投入され高速道路や地下鉄が作られています。例として北京と天津間に第二高速道路が作られました。また交通整備以外に、北京オリンピック、上海万博と国際的なビッグイベントが続く0610年の5年間で中国のTV新規販売に占める薄型TVの比率が60%と、ブラウン管(CRTTVを逆転する見通しです。ちいなみに日本国内の薄型TV出荷は、液晶で04年と05年比で61.8%増の310万台、プラズマが26.5%増の31万台で、既にブラウン管(331万台)を逆転しています。

「ピープルズオリンピック」

 東西文化の交流を目的として、中国文化を多方面からアピールしようとする活動が行われています。例えば食の文化です。外食小売額200億元底上げを目的とした「2008年北京オリンピック外食フォーラム」という広場をつくる企画があります。中国料理には、北京、広東、四川、郷土料理など様々な種類があります。北京市ではそのような中華だけでなく、民族、西洋レストランを0506年にかけて100店舗ずつ出店予定です。一流、特級外食店400店舗揃え、一流ブランドの料理人300人集め、店舗の40歳以下の人に英会話普及率を90%にさせるといった意気込みです。

「グリーンオリンピック」

 環境に優しく人々の健康にも配慮したオリンピックにしようとする活動が行われています。例えば首都鉄鋼集団が2010年までに製錬部門をすべて北京から移転することが決定されました。その他に、「中秋節」の有名伝統菓子「月餅」の過剰包装禁止に引き続き、08年までの三年間で化粧品や健康食品など商品の包装の簡素化を進められることが決定しました。また、注目したいのがトロリーバスの普及です。トロリーバスは、道路上の架線から棹上の集電装置(トロリーポール)を用いて集電してモーターを回すので、動力源は電車に近いです。このトロリーポールの先端には架線に接して電気を伝えるための滑車が付いています。この滑車をトロリー(trolley)と言い、このトロリーが付いているので「トロリーバス」と呼ばれています。タイヤは普通の自動車と同じゴムで、外観もトロリーポール以外は普通のバスとほぼ同じです。路面電車と違い、ある程度の障害物は避けることができるが、それでもトロリーポールが届かない場所にはいくことができないため運行上の制約が大きいです。しかしこの制約は蓄電池を搭載したことにより緩和することができたようです。電気を動力とするため排気ガスやエンジン騒音がなく、環境に与える負荷が非常に小さいので、環境負荷の少ない公共交通ネットワークを築く上で重要な役割を果たすと思います。現在保有台数563台。08年までに800台目標。

 

 このように調べていき、始めのうちは中国が世界へ飛び立とうとしている活動が目立ち、オリンピックに対して期待と希望に満ち溢れている様を感じました。しかし調べるにつれてスローガンにある裏側の現状やその他開催が危ぶまれるといったいろいろな問題が浮かび上がってきました。実際問題中国の環境問題は大変日本を始めアジアに影響を与えています。例えば大気汚染や海洋汚染、黄砂などです。中国はこの10年で平均実質成長率10%という高成長を遂げ、人口も13億人を突破しました。この急速な経済発展により、主要な環境汚染が工業分野だけでなく都市地域の個人の生活にまで拡大移行しつつあります。2005216日に京都議定書が発行され、日本と同時に中国も2008年〜2010年の間に1990年比で温暖化ガスを6%削減するという制約を批准しました。しかしCO2排出量は2000年には世界全体の12%を占めるなど他国を凌駕しており、さらに最近は石炭の燃焼による硫黄酸化物が原因とされる酸性雨が広く観測されています。その背景はやはり経済発展にあり、電力不足を起こし特に沿海地域を中心に停電となり、不足の分の電気をつくろうと火力発電をフル活動させるために石炭を燃焼させるというものです。豊かな暮らしを望むがそれに比例して環境が破壊され続いています。このままでは豊かも何も人が生きることができない状況になると思います。このような現状で前に述べたような経済発展を目標としたスローガンに向けてたくさんの活動を行うことは非常に危険だと思います。実際、北京オリンピック開催に反対する市民の会というサイトが日本にありました。そのサイトは現在の中国の環境について論述し、日本や世界への影響やこれからどのようにしたらよいかなどが書かれています。短文の中に多くの情報が入っているのでよく考えなくてはいけないことがたくさんあることを改めて感じました。経済発展が原因と理解しても、地方では環境問題よりも優先されてしまい、地域格差が顕著で都市対農村、沿海部対内陸部という構図などにより、対策が行われにくい状況となっています。ここでまた問題となるのが、都市対農村という構図です。地方政治の腐敗により、民衆の不満が著しくあります。北京オリンピックで世界中のメディアを通して不満を訴える可能性があります。暴動は今でもありますが、行動がエスカレートしてしまうように思われます。この他に観客暴動も心配されます。先日のアジアカップの例やなど多々中国人サポーターの態度の悪さが問題となっています。このように北京オリンピックは様々な面で開催をする上で高いリスクが生ずる可能性を抱いています。

 

 北京オリンピックへの反対派が増えていく中、結局は開催されてしまうと私は思います。世界的な行事で一度決定されたことはなかなか変えてはもらえないと思います。開催する側の中国にとっては国を世界へ示せる最高の機会であるのだから断念するはずがありません。それではどうすればよいのだろうか。スローガン通り完璧な「グリーンオリンピック」を目指すしかありません。地方の人々にも配慮するためにも交通整備も欠かせないことであります。しかし国民はただ自分の利益、利便を求めるだけではなく、環境問題についての知識や自覚をもっと持たなければいけないと思います。これは世界中の国民に言えることです。世界の過去の事例を教訓として、外国からの環境対策ノウハウの導入・対応のあり方を参考にして行動に移すことが求められます。環境汚染と生態破壊は住民の健康にも危害を加えることを、例えば日本の四日市病や水俣病などの事例を紹介して中国国民に周知させ、環境問題を政府だけの問題にせず国民一人ひとりの問題として協力しなくてはならないと思います。そのためにはまず、政府が国民に対して環境情報の提供を進め、国民の理解と関心を高めることが必要とされます。08年北京オリンピックまでにさらなる経済発展を目指すのなら、環境への取り組みも同時進行で活動してほしいと思います。そして、運営の面でもしっかりとスタッフに学ばせ、試合への対応だけでなく観客への指導など正当な行為をするというあたりまえなことをしてほしいと願います。せっかく開催するのなら最高に盛り上げて、経済発展だけでなく環境問題についても中国を例に世界中に呼びかけてほしいと思います。北京オリンピックが世界中の人々にスポーツを通じて他の面においても何か良い影響を与え、今生きていることの喜びを伝えることができるものになれば最高だと思います。