寺方優「日本で減らない温室効果ガス」
1997年に京都議定書が取り決められた。細かな事は知らなくても各国が目標数値の温室効果ガスを減らすという事が決められたことは有名だ。日本は2008年から2012年の間までに1990年を基準として温室効果ガスの量を6%削減しなくてはならない。これを数字で分りやすくすると1990年度(日本では年度ごとにしか資料がないので)より約61.2百万トン削減することとなる。ちなみに1990年度の排出量は約1223.8百万トンなので排出量を年間で約1162.6百万トンに抑えるのが日本に課せられた目標だ。最新の統計では2001年度までしかなかったがそれによると1299百万トンになっている。明らかに排出量は増えている。2001年度は前年よりは減少しているようだがたいした量ではない。イギリスやドイツなどでは既に基準値よりも12〜18%も削減している。
日本で温室効果ガスが減らない理由は、まず石油ショックによる省エネルギー化にともない世界でトップクラスのエネルギー効率社会になっているという事があげられる。しかしだからと言って日本でこれ以上温室効果ガス、特に二酸化炭素を減らす事が出来ないわけではない。更なる技術開発や環境税によって二酸化炭素の排出を抑える事が出来る。環境税は政府の政策案に含まれているようだがはっきりしていない。また、政策は3段階ステップになっており政策の進展状況・排出状況をみながら施策を強化していく方法をとっているので将来に期待しているだけである。
そんな日本が目を付けたのは「温室効果ガス排出権」である。これは京都議定書に日本などが持ち込んだ考え方で、目標以上に温室効果ガスなどを削減できた国や企業から余分な温室効果ガスの排出量を買い取ることができるという仕組みである。2002年に日本政府はカザフスタン政府からこの権利を買った。内容はカザフスタンの火力発電所を改修するかわりに削減されるカザフスタンの二酸化炭素、年6万トンの排出権を、2008年から12年まで日本が譲り受けるというものである。日本がなぜ自国において温室効果ガス削減の努力をしないかというと、新しい機械の導入などでコストが高くつくからだという。それともう一つ日本などが持ち込んだ考え方で「森林の二酸化炭素吸収量も削減のうちである」というのがある。今、日本企業でオーストラリアなどでの植林が盛んになったにはこのせいかもしれない。これも排出権として他国から買い取れるからだ。
このように日本は排出権を買って2008年〜2012年の間だけの数字合わせをしようとしている。これでは本質的な地球温暖化の防止や抑制は防げないのではないだろうか。過去に大量にエネルギーを使い経済を発展させてきたツケに責任を持たないという姿勢には残念で仕方ない。日本も経済発展重視だけではなく環境に気を配る政策にしていくべきだ。
参考資料
http://andrena.hept.himeji-tech.ac.jp/GradSchool/Admin/Info/Data/5.pdf
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-07-14/20020714faq.html
朝日新聞 2004年1月16日 日刊