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高藤梨沙「日本のイラク派遣がもたらすテロの可能性と日本人の危機意識」
2003年12月9日、小泉内閣はイラクへの自衛隊派遣基本計画を閣議決定した。
そして12月26日、航空自衛隊の先遣隊(計四十数人)の第一陣がクウェートに向け成田空港を出発。つづいて航空自衛隊先遣隊の第二陣が28日、クウェートに到着した。また、石破茂防衛庁長官は9日、陸上自衛隊の先遣隊約30人と航空自衛隊本隊約150人に派遣を命令し、陸自先遣隊は16日に民間航空機で出発、クウェートを経由してイラク南部のサマワに入った。さらに17日朝にもクウェート国際空港に到着。18日には軽装甲車が到着と、こういった報道は連日なされている。空自本隊は下旬にC130輸送機で小牧基地(愛知県小牧市)からクウェートに向かうこととなる。
イラク派遣のその目的はおもに、今年の春に成立した「イラク特別措置法」によると、医薬品や食糧など人道支援物資の空輸業務など、イラク復興作業や難民支援などを行うためということである。
ついに日本の自衛隊派遣が現実のものとなった。賛否両論様々な意思が飛び交い、小泉内閣の支持率も日々変動、世論は流動している。
それによって危惧されるのは当然日本に対するテロ攻撃の可能性だ。イラクで日本大使館員二人がテロの銃撃により殺されたことや、翌日にはその現場から遠くない場所で韓国の電気技師が同じような銃撃を受け死傷者を出した例からも分かるように、テロリスト達からすれば、これまでもアメリカのイラク攻撃を支持した国は全て攻撃対象であった訳だが、日本の自衛隊派遣によって一層それが助長されるのではないかと懸念される。
自衛隊はイラク南部に派遣されることになっている。比較的安全と言われるその地域でも、サマワの近く、ナシリアでイタリア軍警察本部前で大規模な自爆テロが起こってしまい、20人以上のイタリア軍警察官が亡くなってしまったという事態が起こっている。旧フセイン派の攻撃とみられている。
日本に対するテロのその裏付けとして、2003年11月16日、国際テロ組織アルカイダを名乗る組織から英国で発行するアラビア語の週刊誌と新聞に日本への攻撃を警告する声明が相次いで届いた。声明の一部には、イラクに自衛隊を派遣すれば、東京を攻撃すると書かれていた。アルカイダとされる声明が日本を名指しして警告するのは、10月にアラブのテレビが放送したオサマ・ビンラディン氏の音声テープに次ぐものだが、本当にアルカイダの声明かどうか真偽は不明だ。AFP通信によると、ロンドン発行の週刊誌アルマジャラに、アルカイダの指導者でアブムハンマド・アルアブラジと名乗る人物が電子メールで送ってきた。その一部には「(日本人が)経済力を破壊し、アラー(神)の軍隊に踏みつぶされたいのであれば、イラクに(自衛隊を)送ればよい。我々の攻撃は東京の中心部に達しよう」との文面があるという。11月21日、アルカイダの幹部を名乗るアブムハンマド・アルアブラジという人物がアラビア語の雑誌「アルマジャラ」に「日本の兵士がイラクに足を踏み入れた瞬間、アルカイダは東京の中心を攻撃する」という趣旨の声明を寄せている。この人物が日本に警告する声明を出したのは16日に続いて2度目になる。
日本に対するテロ攻撃の可能性は否定できない。
しかしながらテロ攻撃に対する日本の危機意識は極めて薄いとされる。平和ボケと揶揄される日本人の「個人主義精神」は異常であるとさえ言えるほどだと思う。イラク派遣を行ってしまった日本は既に中立国ではないため、様々なテロ攻撃に対する対策がなされるべきである。そしてそれには、世論全体での危機意識の強化が必須である。
テロ攻撃の対策として、その動向を事前にキャッチして動きをつぶしていくには、欧米の情報組織との連携が不可欠となる。日本も応分の負担や責任を負って国際的なテロ包囲網の確立を急ぐことが肝要だ。
米中枢同時テロ以降、核物質や毒ガス、細菌兵器などを使った化学テロの脅威も現実味を帯びてきた。それらが、東京の地下鉄や、中枢にばら撒かれるのではないかという報道は日々なされている。また、東京中枢に限らず、原子力発電や新幹線などの交通機関も攻撃の対象として考えられる。
日本人は、テロに遭遇してからでは既に手遅れであることを改めて認識しなければならない。それが今身近に感じられないことであっても、自衛隊は確実にイラクへと派遣された訳で、その攻撃対象は日本人という枠組みの「無差別対象」であることに危惧すべきだ。イラク戦争の先行きはまだ不透明感がある。自由と民主主義について日本人の意識を高め、断固とした態度でテロと向かい合うことが必要となってくる。そして着実にその対策を進めていかなくてはならないと考える。